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思い出(4)

 近くの公園になんとなく入る。


 前にこの公園でミホと話したっけ、本当に他愛もないことだけど楽しかった。夜風でブランコが優しく揺れる。  

 そう、ミホがブランコを漕ぎ俺は近くのベンチに座って夜遅くまで、時の経つのも忘れて……


 でももうあの時間は帰ってこない、仲間も帰る場所も……


ーーこれからどうしようか


 もういっそのこと人生を終わりにしてみようか。俺、霧山ヒラクとしての人生を終わりにして他の人の人生を送っていく。それでもいいかもしれない。俺に残されたのはCfのみ……


 変身するとしたら誰に変身する? イケメン? 金持ち? 美少女? 外人? なんでもいいや、なんでもいいから新しい自分を見つけてもう今の俺は終わらせてしまおう。


ーーその方が、ずっと楽だったから……


 霧山ヒラクとしての人生は失敗した。今までロクなことがなかったし、なんか全てがどうでもいい感じ


 ふらりふらりと歩く、何もどこにもあてもなくただ無心に……


「……ヒラクくん?」


ーー唐突


 唐突に俺の名を呼ぶ声それは、ヒラクくんとそう呼ぶ声それは、どこか懐かしくて、俺を安心させる。でもどこか力なくそれは聞こえて、ボサボサの髪の毛、それでも隙間から見える目は美しかった。


 なんでここにいるのか、奇跡だと思った。


「ーー……ミホ?」


 ちょうど道の端っこの方、街灯の灯りで照らされたミホの姿。ミホは学生服を着ていた。


 ぼーっと見ていた自分に気づき慌てて駆け寄る。


「……ミホ……ミホなのか?」


「うん……」


 なんだ? ヤケに元気がない。


「そいえば……ヨシオ、ヨシオはどうなった?」


 ミホは何も言わなかった。言わないでふっと俺に身を任せた。


ーーミホ?


 瞬間ーー俺は察した、ヨシオの変身じゃないか?! 


 バッとミホから離れる。そこに立つソイツをジッと見つめる、身構える俺。

 嫌な緊張感、


「……お前、ヨシオだろ?」


ーー沈黙


 いつもとは違う空気がした。彼女は顔を上げる、寂しい顔をしていた、悲しい顔をしていた。目が潤んで、そして涙をホロリと流す。


 確信する。ミホだからこそ泣き出した、そう確信する。悪いことをしてしまった、一瞬疑ってしまった自分を反省する。


ーー……ごめん


 その言葉しか言えなかった。言って、ミホの肩をそっと抱いた。これぐらいしか出来なかったから。気づけば俺も泣きそうになっていた。


ーーだって、ミホが生きてたから……


 見られたくなくて、泣きそうなぶん強く強く抱き締めた。






 ミホの家は10時になると明かりを消すんだとか、真っ暗な家を2階へ上がる。ミホの親を起こさないように……


 2階に上がり、パチッと明かりを点けると前に入ったことのあるミホの部屋が姿を現わす。ミホの言う通り俺はクマの座布団の上に座る。ミホは相変わらずまだちょっと暗い。


「……ミホ、生きてたんだな、良かった」


 しかしミホが生きていたとはいえなぜ今ここにいるんだ? 監禁されてたはずでは……


「……私、知らないところに監禁されててね、すごい恐かった。明かりがなくてね今が昼なのか夜なのか分からない、すごい恐かった。でもね、つい4〜5時間前にヨシオくんが現れて私を解放したの」


ーーヨシオが? 


「そして私にこう言ったの、『今すぐ帰りヒラクくんと接触しろ。そしてヒラクくんから決して離れるんじゃないよ?』って……」


ーー? 何のつもりだヨシオ……ヨシオが大した理由もなしにミホを解放するとは思えないが


「それで一先ず家に帰ってから……と思ってたらヒラクくんと会ったの」


「警察には行かなかったのか?」


「ヨシオくんは私を見てるって言った、もし変な真似したらヒラクくんや私の家族の命はないって念を押された」


ーー卑怯な、だがヨシオの言いそうなことだ


「……だとしたらミホの周りにヨシオが隠れてるかもしれない」


 だが何のために? 直接俺を殺しにくればいいのに……

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