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思い出

 もう日はすっかり暮れていて夜の虫達がリーリーと鳴る。


 家へは帰れずにいた、ヨシオが恐いから。結局ヨシオはまだ逃げている。俺の家に来るかもしれない、もう来てるかもしれない。


 疲れ果てた俺は家に帰った、しかしなんとヨシオが俺のベッドに横たわっているではないか! なんて展開、ヨシオの考えそうなことじゃないか。


ーーミホ


 本当に殺されたのか? 嘘であって欲しい、あのリモコンは偽物であって欲しい。でも確証はない。


 せめてミホが無事だと言う証拠が欲しい、生きてるってそれだけ分かればもう少し頑張れるのに。でも生きてるって確証はない。生きてるかもしれない、死んでるかもしれない。爆弾は爆破したけど奇跡的に生きてるかもしれない。それとももっと前にミホは殺されていたかもしれない。分からない、そんなの分かるはずがない。俺はヨシオじゃないから、俺はミホじゃないから、何も分からなかった。


 今はどうしても、何もやる気が起きなかった。


ーーあの日、ミホはなぜ俺なんかに話しかけたんだ


 気づけばミホの家の前にいた。ミホのいないミホの家。もう監禁されて4日近く経った。きっと捜索願いでも出されたに違いない。窓の隙間から漏れる明かりが寂しく光っていた。


ーーミホ……


 心にポッカリと穴が空いてしまったようだった。俺を見つめる、あの優しいミホという人間はもういない。


 なぜこんなにミホのことを思っているのか、そうそれは二年前、中学生の時のある昼休みのこと……






「ちょっと、アタシの財布がないんだけど!」


「え? アミちゃん冗談?」


「私もない!」


「僕も!」


「オレのもだぞ?!」


「おいおいどぉーしたぁ?」


 ある時クラスの中で計8人の財布が盗まれた。ざわざわと騒ぎ出す。


「盗ったやつ誰だし」


「マジ最悪」


「害悪」


「犯人誰?」


「出てくる訳ないし」


「先生に言う?」


「言ったって何もしてくんないじゃん。持ち物検査してくれる訳でもなく、このクラスで盗みがあることは大変残念なことです……って言うだけじゃん」


「じゃあ警察呼ぶ?」


「呼んだってまともに取り合ってくれないでしょ」


「どうする?」


「おれ達で犯人を見つけ出すしか……」


「本気?」


「面白そう、なんか探偵みたい」


「中村、遊びじゃねーんだぞ?」


「でも真面目にオレ達で犯人探すしかないんじゃね?」


「だな」


 クラスの中で犯人をつきとめようという風潮が流れた。


 最後に財布を確認したのは10時50分、被害者の岡本がリュックの中で財布を確認したらしい。それから昼休みになるまで被害者は誰も自分の財布を見てないそう。つまりなくなったのは3校時から4校時の間だということになる。3校時は理科の授業で理科室に移動した、4校時は体育の授業でグラウンドでサッカーをやっていた。つまり事件が起きた時間帯は教室にみんないなかった訳だ。その時を犯人は狙った。誰がーー

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