監視(5)
来たのはSPみたいな格好の男が5人、ユウタは直接は来てないようで、恐らく俺達が仕掛けた罠の可能性もあることも考えての対処法だろう。
「この部屋の中にヨシオ達はいます。奴らを捉えて下さい」
「了解」
あの後ずっと2504号室のドアの前にいたがヨシオ達は出てこなかった。窓から逃げるにもここの窓は開かないようになっている。だから、間違いなくこの部屋の中にいるんだ。
男の一人が合図をすると一斉に中へと突入した。こういう時仲間がいることは頼もしいと感じる。
俺は男達の後ろから部屋の中へ入った。
ヨシオ達はやはり中にいた。あの後なぜ外へ出ようとしなかったのか気になるが捕まえてしまえばこっちのもの。
「奴らを捕らえろ、そしてスマホを奪うんだ!」
何はともあれCfを奪ってしまえばこっちのもの。
「女性の方からスマホ押収出来ました」
マリナちゃんのスマホを確認する。ホーム画面にはしっかりとCfのアイコンが確認出来た。あとはヨシオだ……
一方で、ヨシオはカッターナイフを手にしていて男達は中々近づけずにいた。誰もヨシオから目が離せない状況。
「見苦しいぞヨシオ、無駄なことはヤメろ」
しかしヨシオは何も言わない。その時、男達が意を決して捕獲に入った。素早く三方向に分かれ一人がカッターナイフを取る手をつかみ捻り、それを合図に一斉に飛びかかり、倒した。
「よし、奴が所持しているスマホを奪うんだ」
ーーやった、ついにヨシオを倒した
そう思っていた。
ヨシオにばかり気を取られていてすっかり油断していた。何かの気配がし、ふと目線をやると飛び込んできたのは拳。バシッと鈍い音がして俺は倒れた。星がチカチカと光る。意識が飛びそうになる。
ーー誰だ
確かめようとする気持ちはあるものの体が言うこと聞かなくて、なんだか視界が真っ白に染まって、そのまま意識が飛んだ……
誰かの声がする。気のせい? いや確かに聞こえた。
「……ちゃん、起きて、ヒラクちゃん」
ほら、やっぱり聞こえた。なんだ? 天使か? 本当にいるのか天使って。
「ヒラクちゃん、ヒラクちゃん、ヒラクちゃん!」
次第にハッキリと聞こえるようになるその声。なんか聞き覚えのある声。なんか、こんな風なの前に経験があるような……
「ヒラクちゃん?!」
ハッと目が覚める。そこにはユウタの姿。
ホテルの一室、テーブルの上にはヨシオが飲んでたコーラのコップ。どうやら2504号室のようだ。
ボーッとする意識の中、これまでに起こった状況を思い返してみる。
「そうだ、ヨシオ達は……」
そこには腕を鎖で繋がれたヨシオが捕らえられていた。
「ヨシオ……無様だな、今まで馬鹿にしてた俺に捕まるなんて」
ヨシオは俯いている。今までのように人を馬鹿にするような発言はなく、ただ俯いていた。正直こんなヨシオを見るのは初めて。
「どうだ、捕まった気分は……そういえばマリナちゃん、もう一人いた女の子の方はどうなった? 姿が見当たらないが」
「彼女ならここにいる」
そうユウタは話す。
ーーは?
よく意味がわからない。ここにはヨシオしかいないではないか。