監視
夜11時、俺は指定されたホテルへ着く。前とは違うホテルだが雰囲気は似ていた。エレベーターに乗り2504号室を目指す。
2504号室のドアをガチャッと開けるとヨシオ達の声が聞こえてきた。
「どうですか?」
「……あ、いいね……でももうちょっと激しく」
ーー激しく?
声だけだから何をしているのかよく分からないが『激しく』ってなんだ『激しく』って……
全神経を研ぎ澄まして2人の会話を聞いてみる。
「分かりました。こうですか?」
「あ、あぁ〜いい!」
「気持ちいですか? よかったです」
「しかしマリナちゃん上手だね」
「褒めてもらえて嬉しいです」
「今まででヤったことはあるの?」
「今回が初めてです」
「イイじゃん、センスあるよ? 将来その道で働くのもいいかもね」
「冗談だって分かっていても照れます〜」
「……ようし、じゃあ交代だ」
「え?」
「マリナちゃんもヤろうか」
「……でも」
「いいからいいから」
ゴソゴソと音が聞こえる。何をしてるのか、想像するだけでドキドキする。
ーー……って、いやいやいやいや人それぞれ色々あるお年頃とはいえ昨日会ったばかりの女の子をヤるなんて、それはさすがにマズイんじゃないの?
「でもわたし、こんなことするの初めてですから……優しくして下さいね?」
ーーマリナちゃん?!
「分かった」
ーーヨシオッ!!
「いくよ?」
「ーー……ッッッダメだッ!」
気づいたら部屋に飛び込んでいた。
ーーそんな不純な行為など、この俺が許さない……
ベッドに座る2人の男女。
「2人とも、エッチなんて駄目だ! まだ出会ったばかりだろう」
訴える俺。
「何言ってんの?」
「ヨシオ様の肩モミモミしてるだけです。夜の営みなんてしてませんよ」
ーー肩モミモミ……
マリナちゃんが正座をしてヨシオがその後ろから肩をモミモミ。それは俺の考えていた男女のソレとは近いようで遠い行為、肩揉みをしていた。
ーー俺の勘違い?
急に恥ずかしくなる。
「あれ? まさかヒラクくん、ただの肩揉みをエロいことと勘違いしてた?」
「してない」
「正直に言いなよ、嘘ついたらミホちゃん殺すよ? エロいこと想像したでしょ」
「した」
「ヒラク様はエッちぃのですね」
はははと笑う2人。
ーーなぜだろう、馬鹿にされてる気がする
俺は側にあるソファに腰掛け、ふぅっとため息を一つ。
「ーーで、ヒラクくん。4人目の所有者はどうなった?」
ーー来た
絶対来ると思ってた質問、当然俺は会えなかったと伝えるつもりだが、正直に4人目の所有者と手を組んだと言ってもいい。むしろヨシオからスマホを奪うため手を組んだなんて言葉を口にしなけりゃ何を言ったっていいだろう。ヨシオはユウタとの会話を見ていなかったのだから。
俺が言葉を口に出そうとした時、ヨシオは布団で横になっていた。
「ごめん、今日はもう寝るよ。疲れたから。話は明日聞く……」
ーーなんて勝手な……
「ですって。今日はもう休みましょう」
マリナちゃんも同じベッドに横になった。どんだけヨシオが好きなんだか、ただの一回キスしただけで……理解出来ない。
ヨシオのどこに魅力があるというんだ。