計画(3)
『こんばんは、7月19日火曜日のnews the everyです。今日はゲストとして評論家の武仲さんに来ていただきました。本日はよろしくお願いします』
『よろしくお願いします。私はこうしてテレビ出演しています。ただテレビ出演している訳じゃありません、私はHEKAKINの動画を見てこの番組に出演しています』
『え? ちょ、武仲さん。どこ行くんです?』
ニュースキャスターが止めに入ったが武仲はその手を振り払う。のしのし歩きカメラの真ん前まで行くと、
『私はCfを持っています。その証拠をお見せします』
そう言うと同時にグニャッと評論家である武仲の体が変化して、やがて現れたのは貧相な格好のおじさんだった。ザワザワと騒ぎ出すスタジオ。
『HEKAKINは所有者に自分から出てきて欲しいと言いました。だがしかし、私も馬鹿じゃありません。罠だという可能性だってあります。
アナタHEKAKINじゃないでしょ? アナタはHEKAKINに変身して嘘の動画を流し……そこまでして私達と会いたいのはただ単に協力するためですか? いや違うでしょ。Colorful Faceを持つ者がアナタにとって邪魔なんでしょ? そうなんでしょ? 私はそう感じました。それでもアナタが私に会いたいと言うのならば、今すぐこのテレビ局に来て下さ……』
ザーッと砂嵐が流れたかと思うと『しばらくお待ち下さい』という画面が出た。
これは多分間違いない、4人目のCf所有者だ。しかし、
ーー……コイツ馬鹿か?!
わざわざテレビ出演してCfの能力を一般市民にバラして、何やってんだ?!
いや、でもよく考えてみればおかしなところがある。
Cfを使うには写真を撮る必要がある、だがコイツは写真を撮ってなかった。ならば逆に、あらかじめ変身しておいてあの瞬間変身を解いたかもしれない。そうすれば変身したようにも見える。でもそれには撮った写真をタップで消す必要がある。だがアイツはそれもしていないようだった。第一スマホを持ってなかった。触れてさえもなかった。
ニュースに出てたアイツは所有者じゃない? だとしたら本物の所有者がいて遠隔操作でアイツの変身を解いたということになる。つまり所有者は他にいるということだ。
アイツは放送が止まる直前『テレビ局に来い』と言っていた。ということは4人目の所有者がまだテレビ局にいるということだ。
……ヨシオはニュースを見ただろうか? 恐らくまだ見てないだろう。見ていたら今頃電話で『今すぐテレビ局に行け!』ぐらい言いそうだから。
まあわざわざテレビ局に一人で行くような馬鹿な真似はしない。
ーーそんな危険な真似なんてする訳が……
その時、俺に一つの考えが浮かんだ。
ーー1人じゃ駄目でも2人でならスマホを奪えるんじゃないだろうか?
そう、2人でならスマホを奪うくらいなんでもないはずなんだ。
4人目の所有者に協力してもらいヨシオ達のスマホを奪う、それが俺の考えた策だ。俺はヨシオを倒すチャンスだと考えた。
でも相手はテレビ局に乗り込んでCfの能力バラす程の奴だ。逆にヨシオ以上に危険かもしれない。
ーーどうしようか
これから先何があるか分からない。
これからどんな危険があるか、奇跡と呼べるものがあるか、そんなのは分からない。分からないからこそ、自分の選んだ道を後悔したくなかった。
ーーだから……
俺はミホを助けたい、ミホの笑顔が見たい、それが俺の思いだ。正直言うと『ミホを弄んだヨシオをギャフンと言わせたかった』が本音なのだが。
だが決意は固まった。夏休みがヨシオによって潰されるのなら、今の内にケリをつけたほうが良いと考えた。どんな奴か確認するだけでもいい、とにかく4人目の所有者とコンタクトを取る。
ーー行こう
と思った時にはもう外に出ていた。駅に向かって真っ直ぐに、その先には希望があるような気がしたから。