天然(2)
「もう何百件も電話あったぞ、しかも全部いたずら電話……ってか動画作成、電話対応全部俺一人でやってんだけど、馬鹿らしい、少しは手伝えよ」
「いいのかな、あんまり生意気言うとミホちゃん殺しちゃうよ? ヒラク君が何かしたら被害に合うのはミホちゃんなんだから」
俺が必死に電話対応をする中、ヨシオは呑気にコンビニ弁当なんか食べている。少しは手伝えよ。
ーー……というかこんなことしたって引っかかる所有者いないと思うのだが
「大体こんなことして何になるんだ? Cf所有者が動画を見てないかもしれない、見てても警戒して連絡して来ないかもしれない」
「そんなの分かってるさ、所有者が連絡して来ないのは計画の内」
「は? だったら何で」
「何も知らない人がこの動画を見ても『何この動画、アプリCfとか何?』って話になるだろう。でもそれでいいのさHEKAKINが変な動画出したってネット上で噂になりやがては所有者の耳にも届く。ここでカオモジの正体がHEKAKINだと言ったことで嘘だと分かっていても無視出来ない存在になった。それでいい。彼達の目をHEKAKINに集中させるんだ。後は何かインパクトを与えることが出来れば……」
ヨシオは不敵な笑みを浮かべた。でもそう上手くいくだろうか。
「で、そのインパクトを与えることって……」
「それはこれから考えるのさ」
HEKAKINの家を占領して6時間が経った。電話のし過ぎでさすがにくたびれている俺、霧山ヒラク。
「おい、これいつまでやる気だ? 怠いんだけど」
「ところでもうすぐ夏休みだけどヒラク君は予定とかあるのかい?」
お菓子をぽりぽりと食べながら質問するヨシオ。
ーー何でそんなこと教えなきゃいけない
俺は無視して電話がかかって来るのを待つ。
「ねぇーヒラク君ヒラク君ヒラク君ヒラク君ヒラク君ヒラク君……」
「……うるせぇ」
「あれ? 酷いな。ミホちゃん殺しちゃうよ?」
ーー何でだよ
「夏休みはバイト」
「バイト? 馬鹿だなぁ、バイトなんてしなくてもCfがあるんだから金なんか簡単に手に入るじゃないか」
いや、暇だなんて言ったら夏休みはヨシオと一緒に過ごす羽目になりそう。だからここで忙しいアピールをしとくのだ。
しかし何かとミホを殺すとか脅してきやがる、卑怯な奴め。
タンタンタン タンタンタ タタタン♪
またスマホの着信音が鳴った。もう聴きすぎてトラウマになりそうな勢い。
ーーはい来ましたよ、はいはいはいはい出ますよ出ます
「……もしもし、Cfの正式名称そして何のアプリかを答えて下さい」
スマホをスピーカーにして要件だけをぶっきらぼうに話す。
『Cfの正式名称はColorful Faceです。他人に変身出来るアプリです』
女性だった。覇気のない暗い声、それでも彼女が答えたことは正解だった。
ーー!
あまりにも淡々と話すから、正直てんぱってしまった。ヨシオが横から割り込み話し始める。
「アナタは所有者ですね?」
『はい』
「アナタはカオモジに選ばれた」
『はい』
「これからする質問に答える気はありますか?」
『はい』
「それでは始めます」