天然
HEKAKIN TV every day ♪
軽快な音楽と共にその動画は始まる。
『べんべんハローyootube、どうもHEKAKINです。
さてみなさん今日は大事なお知らせがあります。実は私はあるプロジェクトを立ち上げたいと思っております。まだ何のプロジェクトかは秘密ですがいずれみなさんにお話する日が来るでしょう。そんな中で私はある企業にお願いしてあるアプリを作ってもらいました。それは魔法のアプリでCfと呼ばれています。普通には手に入りません、魔法のアプリですから。このアプリは特殊なアプリでこちらから遠隔操作でみなさんのスマホにインストールさせることが出来ます。ちなみにCfとは何のアプリなの? と気になる方がいると思いますが今この場でアプリの説明をするわけには行きません。そんなことしたら世界は大混乱の嵐でしょう。だから言いません。
私はこれまでに5人のスマホにCfをインストールさせていただきました。この5人はCfが何のアプリか既に分かっているはずです。何故この5人に渡したのか、それはこの5人には是非ともこれから行うプロジェクトに協力してもらいたいからです。勝手ながらアナタ方の情報は調査させていただきました。更にアプリのGPS機能で居場所はもう分かっています。5人の所有者にはこちらから出向くのではなく是非ともご自分の足でこちらに出向いてもらいたい。私はアナタを信用しています。なのでアナタも私をを信用して欲しいのです。信頼関係があってこそのプロジェクトです。
概要欄のリンクに私の電話番号を載せておきます。Cfを持った方はまずこの連絡先へ電話して下さい。ご連絡お待ちしております。
チャンネル登録、高評価よろしくお願いします。じゃんけんターイム、行きますよ? 最初はべんべんじゃんけんぺイ……』
お決まりのじゃんけんをして動画は終わる。
動画サイト『yootube』知ってるよね、あらゆる人が簡単に動画を投稿して世界中の人がその動画を共有出来るサイト。その中でも断トツの再生回数を誇る男、HEKAKINは知ってるよね? 有名だもん。一つの動画で何十万何百万の人が視聴する。いいよね凄いよね、そこで僕は考えた。この影響力を利用出来ないかって、
ーーって言ってもさ
「HEKAKINに変身して嘘の動画撮れなんてやっぱ無理があるだろ。大体どーすんだよ、そのHEKAKIN本人は今隣の部屋に閉じ込めてるけど……」
HEKAKIN姿の俺が言う。
そう、俺達は宅配便のお兄さんに変身してHEKAKIN宅を襲い、アカウントを乗っ取り動画の投稿をしてしまったのだ。
「これって犯罪だよな?」
「大丈夫だって、疑われるのは宅急便のお兄さん」
……。
こうしてる間にも動画の視聴回数はどんどん増えていく。
「ヒラク君、スマホの準備はOK? もうすぐ動画を見た人からの連絡がかかってくるはずだよ」
「分かってるよ」
タンタンタン タンタンタ タタタン♪
スマホの着信音が鳴った。ついに来たかとばかりに俺は電話に出る。
「……べんべんハローこんにちは。どうもHEKAKINです」
緊張して声が若干裏返ってしまったが冷静を保とうとする。大丈夫、今はHEKAKINになってるんだ、HEKAKINに成りきるんだ。
電話に出たのは若そうな男。
『うわっマジで?! HEKAKINじゃんマジで?!』
わははわははと複数の男の声が聞こえる。声的に……学生か? 分かんないけどヨシオに教えられたマニュアル通りに話をする。
「あなたはCfを持っていますか?」
『はいはいはいはーいCf持ってまーす』
馬鹿にするような声、電話の向こうでクスクス笑うエキストラ。
「じゃあCfの正式名称は? Cfは何のアプリ?」
『正式名称とかあんの?』『おれ知ってるよ、Cfって元素記号でしょ! カリホルニウム』『何ソレ、知らねー』『出ましたタカシの勉強出来ますアピール』『ギャハハハハハ』『で、何のアプリかだっけ? 魔法のアプリなんでしょ? ちちんぷいぷいのぷいで空を飛ぶ〜とか!』