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プロローグ

 廊下の影からそっとあの子を覗き見る。愛しのあの子を覗き見る。

 七野ミホ、俺の片想いの相手。


 バッと取り出したのは一台のスマホ。あるアプリを起動させる。


ーー魔法のアプリ『Colorful face』の使い方は簡単、アプリのカメラ機能を使ってパシャッと相手の写真を一枚撮る。写真が撮れたら画面下部のアイコンをタップする、そしたら……

 

 瞬間、体が軟体動物のようにクニャッとなった。


ーーなんだこれはッ!


 俺は崩れてクニャクニャ混ざって俺は俺じゃなくなった。


 クニャクニャクニャ……


 そして俺だった物はすぐに新たな形を形成していく。骨格、耳、目、鼻、口、皮膚、髪の毛、体。一から全て形成される。ものの5秒の出来事。


 クニャクニャクニャクニャクニャクニャクニャ、クニャ……


 そしてやがて出来上がる、新しい俺の姿。


ーー!


 スカートを履いていた。俺はスカートを履いていた。今までスカートなんて履いたことないから照れてしまう。下がスースーしてこの裏がパンツなんだと思うと余計に恥ずかしい。


 まさか本当に変身したのか?!

 急いで確認しようと、男子トイレに駆け込む俺。


 鏡の向こうにいたのはミホだった。ミホが俺を見つめていた。


ーー!! コレ、ガチじゃん


 思わず固まる。驚きを隠せない。

 こんな、こんな簡単に……


 試しに胸を触ると、ちゃんとある。

 試しに股を触ると、キレイにない。

 思考が停止する。頭がフリーズする。その場に佇む俺。


 こんなことがあって良いのだろうか。こんな常識外れなことが起きて良いのだろうか。なんだ? なんだろう。男の俺としてはものすごい嬉しいけど同時に人間としてやってはならないことをしたような衝動に駆られる。

ましてや好きな人の体にこんなことしてよいのだろうか。


 ……良いのだろう良いのだろう。だってこれは俺の体なのだから。だからあんなことやこんなことをしても、全て俺の責任。

 興奮する心を抑えながら、制服のボタンを外しワイシャツの襟からチラッと……


ーー!! やった、やったやったやってしまった


 俺の胸にはぷにぷにして芳醇でふっくらとした乳房が……


ーーまだ発育途中なJKの体が俺の心を落ち着かせる。いい、マジでいいよコレ!!


 男はみんな変態だと言うが、その通りだと俺は実感した。


 俺は更に体の奥深くを見ようとシャツのボタンを外し始めた。高鳴る鼓動。ドキドキの緊張感。


 ガチャッ

 その時トイレのドアが開いた。






 クニャクニャクニャクニャクニャ……


 なるほど、元の姿に戻るには写真をタップして消せばいいのか。


 しかし、女子になって男子トイレはまずかったかな? ……気をつけないと。


 でも、これがあれば本当に誰でも何にでも変身出来る。いや、考えようによっては何でも出来る! 


 例えば芸能人、街を歩けば女子からキャーキャー言われて優越感に浸れる。例えば飲食店の店長、その店の好きな料理食べ放題。例えば小説雑誌の編集長、嫌いな小説を終わらせたりど素人が書いた小説に賞を付けたり出来る。例えば国の首相、国ごと動かすことだって出来る。全部が全部そうなるか分からないけどそれでも、このネックレスがあれば無敵だ……。


 武者震い。何者にも代えがたいこの高揚感、ドキドキ感。


 そう『Colorful Face』は他人に変身出来るアプリだった。


ーー奴はとんでもない物を俺にプレゼントしてくれたんじゃないか?


 






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