天使
三人称です。
その日、王宮に天使が舞い降りた。
彼女の姿を見たものがいれば、そう言っただろう。
少なくとも、彼女が本来の姿を見せた時側に居たものはそう思ったのだから。
彼女がかけていた丸眼鏡は姿を消し、ボサボサだった髪は流れるように美しく、肌は潤っていた。
その姿は、本来の姿を見せる前の彼女の姿とは正反対のものだった。
一言で言い表すとすれば、それは『天使』。
彼女の周りだけ薄く光輝いるように思え、それがまた幻想的だった。
「やはり、君は美しい」
彼女が本来の姿を見せてから一番はじめに声を出したのは、彼女の新しい婚約者だった。
「な、なんだその姿は」
次に声を挙げたのは前の婚約者、ジークだった。
「なんだと言われましても、この姿が、私本来の姿です」
ステファは、素っ気なく返した。
「では、あの不細工な姿は、一体なんなのだ」
ジークは取り乱しながら言った。
「あ、あの姿ですか。あの姿は、私が魔法を使って偽装した姿です」
「嘘よ。そんなことはありえないわ。あなたは、魔法を使えないはずなのだから」
ラホリアは、ステファの言葉に反論した。
「その理由は?」
「え!?」
しかしラホリアは、ステファから返ってきた言葉が意外過ぎた。
「ラホリア嬢、あなたは私が魔力を持たないから魔法を使えない。そう思っているのでしょ」
「そうよ。実際そうじゃない。魔力を持って生まれなければ魔法は使えない。だけど、あなたは魔力を持って生まれなかった」
確かにラホリアの言っていることは合っている。魔法を使うには、必ず魔力が必要なのだから。しかし、
「そこが違うのよ」
ステファは言った。