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茶師のポーション~日常編  作者: 神無 乃愛
妊婦のお茶と子供の珈琲

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妊婦のお茶と子供の珈琲 その二

 やってきたのは、未就学児と思える少女だった。

「あの、ここに、ママがのんでもだいじょうぶな、おちゃはありますか」

 何かしらの制限で茶が飲めないのなら、マスターとて茶を出しにくい。

「ママはどうしたのですか、白岡(しらおか)家のお嬢様」

 やってきた少女が誰なのか、気づいたのは朔だった。

「あなたは?」

「申し遅れました。私は鷹司(たかつかさ)家の使用人頭をやっております、朔と申します」

「さく、さん」

「朔。とお呼びください、お嬢様」

 片膝をつけてしゃがみ込み、少女と視線を合わせながら、朔が言う。子供を安心させるためなのか、はたまた他に理由があるのか謎だが。

「朔君、お知り合いですか?」

「えぇ。旦那様がたと家族ぐるみでお付き合いのあるお家です」

 そのお嬢様と話をしつつ、片手は別の動きをしている。間違いなく、どこかと連絡を取っているはずだ。


莉奈(りな)お嬢様!!」

「莉奈ッ!!」

 慌てて店に入ってきた黒服集団とうら若き女性を見たマスターはため息をついた。数人()同業者がいる。だったらどうして子供一人見ていられない。そう言いたくなるのを堪えた。

「マスター、失礼しやした!」

「その言葉遣い!!」

 マスターに頭を下げた()同業者に、少女の名前を呼んだ男がすぐさま注意していた。男が正しいので、マスターは苦笑するだけである。

「君の仕事は、護衛かな? それとも?」

「護衛っす。と言っても、車運転の方っすけど」

 富士樹海迷宮の大暴走で後遺症を残した、元同業者。車の運転に差し支えはないらしい。

「だから、その言葉遣い!!」

「私には差し支えありませんよ。()同業者ですので。それよりも、彼女に付けていた護衛に問題はないのですか?」

「大ありです。お嬢様を見失った挙句、私どもに連絡を入れないというのは」

 そちらを再教育するのは、マスターの仕事ではない。そして、どうしてこの少女が、この店に入ってきたのか。

「閑古鳥も鳴いております時間ですので、一息入れていかれては? お茶専門店ですが」

「でも……」

「フレッシュジュースと炭酸飲料ならご用意が出来ますよ」

 その言葉で、莉奈があっさりと陥落した。



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