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侯爵様

<<ハウバッセン侯爵視点>>


私の名は、アーノルド・ウェスタン・ハウバッセン。このガゼット王国建国時から続く歴史あるハウバッセン家の当主だ。ハウバッセン侯爵領は国の財政の屋台骨で、我が領地から採れる銀を国外へ輸出することで、利益を得ている。むしろ、銀だけしか利益になるものが無いのは、不安だ。


そして、その不安は、的中した。なんと、300年以上も絶えること無く産出されていた大量の銀が採れなくなったのだ。最初は直ぐに新たな鉱脈や鉱山が見つかると楽観的だったのだが、1年も同じ状況だと流石に対策をとらないわけにはいかない。直ぐに鉱山で採れるものは何でも採るように命令する。


しかし、それも長続きはしなかった。直ぐに他の鉱物は採れなくなり、次々と鉱山は閉山へ追い込まれていった。そして、鉱山が閉山になる度、人口は減少して、税収は減っていった。


私は、鉱山の調査をさせつつ、政策で人口減少対策や商会の破産防止のため、減税や税金免除を行った。お陰で、人口の急激な流失は止まったが、早く手を打たねば、不味いと思った。


それから10年経ち、我が家の私財をなげうってでも町の治安維持のために予算を確保した。そして、その傍ら、少しずつ貯めた予算で、未だに採掘を何とか続けてる鉱山へ調査隊を送ることにした。


「侯爵様!一大事でございます!」


私が幼い頃からの専属執事であるセバスチャンが血相を変えてノックもせずに入ってきた。いつもならそんな礼儀のなってないことをしない、冷静な男なのだが、どうしたのだ。


「どうした。落ち着け。深呼吸して、ゆっくり話せ。」


「は、はっ!失礼しました!すーはー...すみません。落ち着きました。」


「よし。で、どうしたのだ?何かあったのか?」


「ご、ご長男のカルド様が向かわれた鉱山で落盤事故が起きました。カルド様のものと思われる指輪が土砂の中に.....」


セバスチャンが渡してきたそれは、泥で汚れ、押し潰されたのかひしゃげていたが、確かにカルドの婚約指輪だ...まさか、巻き込まれたのか?いや、カルドは冷静だ。無駄な危険は犯さない。きっと、これは坑道で落としたのだ。無事の筈.....


「侯爵様!何処に!!!」


セバスチャンの呼ぶ声が聞こえてくるが、足を止めるわけにはいかない。私は、カルドが無事なところを見ないといけないのだ!じっと待ってなどおれぬ!!!






「カルド!」


坑道の入り口前に着き、まず、捜索隊と埋もれた坑道の入口が目にはいった。そして、次に、坑道の横で人が集りシンとしている、場所に胸騒ぎがして、近づく、私に気付いた者達は道を開け、私は中心にたどり着いた。そこに居たのは、いたの上で寝かされ、泥だらけでピクリとも動かず、腕が潰れたカルドの遺体だった。

力が抜け、膝から崩れ落ち、唖然とカルドの顔を見るしか出来なかった。その顔は、穏やかな何か満足げな顔をしていた。


それから私は、何とか立ち直り、現場の救出活動の指揮を行った。そうでもしないと、押し潰されそうだったからだ。しかし、見つかった探索隊は全員、息を引き取っており、誰も救えなかった。


息子の葬式を満足にしてやれる金もなく、静かな小さな葬式しかしてやれなかった。


こうなったら、私はどうなってもいい。責任を取ろう。しかし、妻だけは何とかして暮らせるようにしてやらねば!

そう思い、いくつもの貴族の家に掛け合ったのだが、色好い返事は貰えなかった。

そんなある日、ギルドマスターがやって来た。ギルドマスターとは幼い頃からの悪友だ、よく屋敷を抜け出して市場を練り歩いたものだ。


「どうしたポワン。ああ、この間の葬式、援助してくれて済まなかったな。」


「うむ。気にするな。じゃが、ガイドの事は残念じゃった。良い子じゃったのにのぉ...」


「そう言ってもらえるだけで助かる。」


「うむ。でじゃな、話は変わるが、採掘できる坑道を発見したかもしれん。」


「何!?本当か!?」


「うむ。第5鉱山145番坑道の最奥じゃ。黒龍岩の岩盤の先に質が悪いのかそれとも屑鉄かハッキリとはわからんが、鉱脈が出た。」


おー、これで何とかなるな!先ずは人員を...ん?黒龍岩?


「おい。黒龍岩の岩盤の先って、掘ったのか?と言うより、掘れたのか?」


「少し強力な助っ人が出来たのだ。この鉱山は国と侯爵殿に使ってもらいたいが、次にもし発見すれば、今回の助っ人に売ろうと思っておる。」


なんと...これは女神様の救いだな!


「よし、分かった。では、先ずはその助っ人に礼を言わねばな。連れてきてくれぬか?」


「そう言うじゃろうと思って、連れてきたわい。」






ーーーーーーーーーーーーーーー

<<ソラ視点>>


「初めまして侯爵閣下、ソラと言います。」


貴族式の胸に右手を添えてお辞儀をする。因みに、礼儀作法のスキルをレベル100にした。


「ハウバッセン侯爵だ。そなたが、鉱脈を発見したのか。まだ幼いと言うのに、素晴らしい力だ。」


ここまでの評判で悪い人では無いとはわかってたから良いけど、何か貴族様相手だと緊張するな~、見た目は白髪に白いカイゼル髭、瞳の色は赤色のホッソリとした感じだ。ただ、やっぱり鉱山の問題のせいか、やつれてる感じがする。


「いえ、全ては女神様のお力です。」


「女神様のか...まあ、良い。発見したのはお主だからな。今回の発見は結果によるが、褒美をやろう。」


「そんな、畏れ多いです!」


「気にするでない。お主はこの町。延いてはこの国の財政をも救うかもしれんのだからな!」


「は、はあ.....」


気の抜けた返事が出てしまったが、本当に追い詰められてたんだなぁ...さっきから侯爵様が鉱脈は金か?銀か?銅か?鉄か?とギルドマスターに攻めよっている。

これで、何の役にも立たないものなら、気まずいなぁ~

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