鉱山都市の現状
一部内容を変更いたしました。
真っ暗な世界から意識を浮上させると、目の前には青く澄んだ綺麗な空が広がっていた。起き上がって周りを見回すと、青々とした草原が広がり、爽やかな風が草原の植物を揺らし、波模様を作り、爽やかな風と共に草花の匂いが運ばれてくる。
これが、異世界に来て、最初に見た景色だった。
一通り、自分と周りを確認すると、南と北と東は草原が続き、西には街道らしき道があった。そして、自分自身は17歳から12歳に若返っており、何故なのかと疑問に思うと、ウィンドウが何もない空中に現れ、メッセージが表示された。
『この世界では15歳で成人となります。子供だと失敗しても責任を負わされないので、その方が都合がよいかなと思ったので、若返らさせちゃいました。P.S.決して、私の趣味ではありません!by女神より』
うん。まあ、若いことは良いことだと思うよ?
女神様の事はさておき、どうやら疑問に思うと、ウィンドウが現れ、回答してくれるらしい。なんて便利な!因みに、判断を仰ぐような疑問には答えてくれないようだ。
そりゃそうか。
そして、無限インベントリのスキルもあるのか、荷物とかなにか無いのかな?と思ったら、目の前の空間が裂け、手を突っ込むと何が入ってるのか頭に情報が流れ込んできた。そして、取り出したいものを頭に浮かべると、手元にやって来て、取り出せるようになってるようだ。
便利なこって。
無限インベントリの中には、お金と武器が数種類と、身分証明書関係が入っていた。
発行場所とか発行者名が女神となってるが、これでよいのか?
『問題ありません。』
さいですか。
何とかなりそうなので、今度は全能力のユニークスキルを試してみる。全能力を使うように念じると、ウィンドウが現れ、スキルが一覧となり出てきた。左側にスキル名が書かれ、右側にレベルの+-ボタンがある。スキル名をタッチするように念じると、スキルの詳細がわかる。
「あ~これは全部確認してたら日が暮れるな~とりあえず必要最低限の分だけ.....」
必要最低限のスキルだけとり、ウィンドウを閉じて、今度はとったばかりのマップスキルを使用する。
すると、目の前にマップが現れ、自分を中心に、西には街道があり、『白銀騎士団街道』と表示され、東は草原が続き、北に『セシリカ市』と書かれた町、南は街道が続き、『地竜山脈』と書かれた山脈がある。
それぞれ気になるが、先ずは目的地として『セシリカ市』をヘルプ機能で説明を開く。
『セシリカ市。人口2500人。ハウバッセン侯爵領領都。古くから銀の産出地として栄え、銀の埋蔵量は世界一と言われていた。ここ10年で銀の産出量が急に減り、急速に衰退している。また、国がセシリカ市の銀を国外へ輸出して儲けていたため、国の経済も傾きつつある。』
うん。鉱山都市の末路としてはよくあるパターンだね。でも、世界一と言われるほどの埋蔵量なら、銀はまだあるんじゃ?
『総埋蔵量の残り90.2%の銀が地中深くに埋まっていますが、現時点での技術では採掘が不可能なため、産出量の低下が起きていると考えられます。』
なるほど。今まで産出された銀の9倍が地中に眠ってるのか。そして、それを掘り出す技術が無いと。う~ん、町について宿とって食事してから考えよ。
セシリカ市を囲むように建てられた石の城壁にある南側の門に着くと、身分証の提示を要求されたので、門番の兵士に身分証を渡すと、血相を変えて詰所の奥へ向かい、しばらくしてから戻ってくると、身分証を返却され、中にはいることができた。
絶対、女神様のせいだ。門番の人が意識を失いそうなほど慌ててたよ。
そんな事を思いつつ宿を探すと、やはり町のなかは情報通り、空家や潰れた商店が多く、人通りも疎らで、すれ違う人達にも元気が無かった。そして、元は客が多かったからか分からないが、5階建ての大きな宿を見つけ、中に入る。
「すみません。部屋を借りれますか?」
「お、お客さんですか!?」
「は、はい。そうですよ?」
とんでもない勢いでカウンターから転げ出してきたおじさんは、やつれて、目の下に隈が出来ていた。
「やったぁ!!!これで明日も食い繋いだ!!!」
「お、おめでとうございます?」
何だか分からないが、嬉しいことは分かった。だから、落ち着いて!!!
「ああ、すみません。私としたことが...」
「いえいえ、それで、部屋の値段なんですが、いくらですか?」
「えっとですね。夕食つきで一部屋銅貨10枚です。」
銅貨1枚で100円相等だから、1000円?食事つきで?普通なのかな?安すぎない?
『相場は一泊一部屋夕食つきで銀貨1枚です。セシリカ市では人が減り、宿屋同士で生き残りのために値下げ競争をしてるため、相場より安くなってます。』
え~、銅貨100枚で銀貨1枚だから、約10分の1の値段か。
「そ、それは安すぎますよ...銀貨1枚にしてください。」
「そ、そんな!銅貨10枚でよろしいので、泊まってください!」
「と、泊まります!泊まりますから!あと、銀貨1枚払いますから、情報を下さい!!!!」
その後、落ち着いた宿屋の店主から聞いた所、セシリカ市では10年前から銀がほとんど採れなくなり、それからは鉄や銅を代わりに採ってたが、すぐに採れなくなり、ここ3年でほとんどの鉱山が閉山となり、職を失った人は他の町へと出ていき、3万人いた人口が2500人ほどへと減ったそうだ。ハウバッセン侯爵はこれまでに新たな鉱山の探索や数々の政策を実施したが、失敗し、ハウバッセン侯爵の財政も火の車のようらしい。さらに、数日前に最後の鉱山で落盤事故があり、ギリギリの資金で鉱山を採掘してた商会が破産。それが完全な決定打となり、セシリカ市はほぼ財政破綻したらしい。今も侯爵自ら金策に走り、何とか門番などの治安維持関係の資金を確保してるが、そろそろ限界が見えてるそうだ。
「じゃあ、侯爵様が破産すれば、セシリカ市は国の直轄に?」
「いえ、直轄にはなりませんが、貴族としては厳しい状況になりますね。」
だろうね。破産した侯爵家と仲良くしても何の特もないからね。
その後、夕食をもらい、食べ終えると、部屋に入り、ベッドへとダイブして眠りについた。
因みに、夕食は固い黒パンとウサギ肉のシチューだった。美味しかったよ?