フクロウの会
「では、これより【フクロウの会】を開催する。今日は新会員としてミカドイン子爵も迎えることができた。記念すべきことだ。今後のミカドイン子爵の活躍を願って乾杯!」
「乾杯!」
侯爵邸で開かれた【フクロウの会】は、派閥に関係なく政治に関する知識を高め合うことを目的としており、上は公爵。下は士爵と身分もかなりバラバラだ。そして、この会に参加するものは銀色のフクロウのバッチを着けている。フクロウは賢さを象徴して、銀はガゼット王国の特産品として、国の繁栄を表している。
因みに、年齢や性別も問わないため、小さな子供や令嬢もいるため、12歳の子爵がいても不思議は無いのだが、何故か多くの貴族に囲まれて質問攻めにあっていた。
「ミカドイン子爵殿!共産主義とはどのようなしそうなのだ!?」
「子爵殿!民主主義の場合、どう政治を行うのか詳しく!」
「子爵様。是非、子爵様の政治に関する知識を教えてくださいませ。」
「子爵様!子爵様!」
どうしてこうなった...まあ、十中八九、侯爵様が言いふらしたんだろうなぁ。向こうで民主主義と王政の違いを嬉々として論じてるし。
「あ、あの、順番にお答えさせていただきますので、落ち着いてください。」
「「「「はい!ありがとうございます!」」」」
ほんとに政治の話好きだなあんたら。
「まず、共産主義は国が何もかも所有し、個人で所有することを認めず、国が管理し、国がどう使うのか決める考えです。要するに、この1本のペンですら、所有することが出来ませんし、国から貸してもらえないと、使うことも出来ないのです。計画的に政治を行えるので、確実な発展が出来ますが、人は思うようには動きませんから、大抵は失敗して崩壊します。」
「民主主義では国民の中から議員を投票で選び、議員の中から内閣総理大臣という最高権力者を投票で選び、内閣総理大臣が各大臣を選出して政治を行います。」
やばい。日本の政治形態の知識がうろ覚えだ。
「あと、国同士で集まり政策を共通で行うような国もありますね。ただ、国の経済状況や国同士の関係が深くないと政策の共通化は難しいみたいですが。」
「「「「おお~!」」」」
こんな適当な説明でいいのだろうか?かなりうろ覚えで適当に言ったよ。まあ、女神様も概念だけ伝えれば良いって言ってたから良いのかな?
「では、子爵様は王政についてどう思われますか?」
「王政ですか?私自身が王政の国に住んだのがこのガゼット王国が初めてなので、なんとも言えませんが、私は民主主義であろうと、共産主義であろうと、王政であろうと、判断する者の判断次第で良し悪しは変わってしまうと思っています。ですから、王政がどうかと問われると答えられません。」
「そうですか。ですが、民主主義の場合、国民全員に責任があることになります。それでは、いざというとき、責任の所在が不明瞭になりませんか?」
「そうですね。そう言うときはよく、責任の擦り付けあいで無駄なことをしてますね。」
「では、王政であれば、王一人が責任を全て負えば簡単ですね。」
「そうですね。ですが、私はそれは酷いと思います。確かに、王族は優遇されますから、責任は大きいでしょう。ですが、その責任を一人で負うのは酷なことです。ましてや、それで命を散らすこともあるのですから。」
「...変わってますね。王族の責任はそういうものですのに。」
「そうですね。王政を知らないからこその感覚かもしれないです。ですが、それでも一人で責任を負う必要は無いと私は思います。」
「そうですか。話していただいてありがとうございます。」
そう言って令嬢は人波の中へ消えていった。その後も貴族たちに囲まれて質問攻めにされ、解放されたのは夜も更けてしばらくしてからのことだった。
「あ~疲れた。」
「旦那様、お疲れ様でした。」
「疲れたよ。質問攻めにされて解放してもらえなくて、喉ががらがらだし、侯爵様に相談も出来なかったし。」
「そうでしたか、では、後で喉によいものをお持ちいたします。」
「ありがとう。」
それにしても、凄かった。あんなに政治の話で盛り上がるとは思わなかった。特に、ウェストランド公爵とイーストランド公爵の論争が凄かった。ウェストランド公爵は民主主義の方が優れてると言うし、イーストランド公爵は共産主義も上手く舵取りをすれば民主主義より優れてると言うし、最後には俺に「「どっちが優れてる!子爵殿!」」と声を重ねて聞いてくるし。あの人達、あんなこと国王様の前で言ったら国家転覆とか反逆を疑われるよ。
そう言えば、熱心だったな、あのご令嬢も。俺と王政について話してからも他の人たちと意見を交換してたようだし、王宮で働くつもりなのかな?それとも、女伯とかみたいに女性でも爵位を持てるのだろうか?
まあ、とりあえず無事に終えることが出来たし、今日はもう寝よう。侯爵様に相談するのも明日以降でいいし。ユリアが喉にいいもの持ってきたらそれ食べて寝よ。