ユリアに知識を披露してみた
子爵になり貴族議会副議長補佐となったが、貴族議会は4月から7月の間しか開催されないため、9月の今はやることがないのだ。因みに、1年間は12ヶ月あり、1ヶ月は30日あり、年末に5日の祝日がプラスされることで1年は365日となっている。なので、貴族議会が開かれる4月まで7ヶ月ほどあり、明日の【フクロウの会】を除けば予定は何もないのだ。
まあ、別になにもしなくても良いのだが。
「と言うことで、ユリア、何をすればいい?」
と言うことで、物知りユリアさんに貴族なら何をすればいいのか聞いてみた。
「そうでございますね。普通の貴族の方で12歳となれば、勉学に励んだり礼儀作法の練習をなされますが、旦那様には不要のようでございますから、これは当てはまりません。ですと、子爵家の当主の方々であれば派閥争いのために情報収集のためのパーティーを開かれたり、収入を増やすために商売をなされたりしますが、旦那様はまだ派閥として動く状況ではありませんし、お金は鉱山で収入が確保されてます。なので、旦那様は何か趣味を見つけられてはいかがでしょうか?」
「趣味?例えばどんなのがあるかな?」
「そうですね。乗馬、狩り、剣術、劇や音楽の観賞、美術品の鑑賞並びに収集、奴隷を痛め付けて楽しむなどがございます。」
「ふ~ん...え?ユリア、最後のは空耳かな?」
「空耳でございますよ?ふふ」
遊ばれてる...何か、ユリアの再教育でいい気がしてきた。
「勿論、私をいたぶって頂いても構いませんよ?ふふふ」
やばい。妖艶な笑みでそう言われると、こっちがいたぶられる未来しか見えないし、絶対にこっちが喰われる!
「さて、冗談は置いておきまして、旦那様はたくさんの知識をお持ちと聞いております。その知識を生かすというのもよいと思います。」
知識って言うと女神様が言ってたあれか。経済とか金融とか政治の。本当に自分のにわか知識で大丈夫なの?
「正直、侯爵様にも十分な知識があると言われてるけど、個人的にはかなり未熟な知識だと思ってるんだよね。勿論、文明の発展に差があるのはわかってるけど、今一つ自信がないな。」
「私も旦那様の知識を直接お聞きしたことは無いので、判断いたしかねます。」
「じゃあ、今から知識を使って質問するからそれで判断して。」
「畏まりました。」
「じゃあ、元の世界には紙幣という紙で出来たお金があったけど、こっちの世界には無い。何でかな?」
「紙ですか?それでは誰でも作れてしまいますし、正直、紙のお金だと信用できません。」
「紙幣には利点があるんだ。例えば、白金貨100枚を支払う必要があるとして、手元には様々な硬貨がある。これを数えて白金貨100枚分を支払うには時間がかかりすぎる。でも、白金貨100枚分の価値を認めた紙幣で支払えば、荷物も少ないし、支払いは簡単に行えてスムーズになる。」
「なるほど。確かにそれなら便利です。ですが、偽造の防止や信用の問題はいかがなされますか?」
「元の世界では偽造出来ないように特殊なインクを使ったり、真似できないような最高の印刷技術で細かな文字や模様を印刷してたかな。複雑で真似もしにくい紙幣なら信用も高かったよ。
後は、紙幣を銀行っていうところに持っていけば紙幣の価値と対等の金と交換してくれるって制度があった国もあったよ。まあ、金が足りなくて交換できなくなったようだけど。」
「なるほどです。では、紙幣は硬貨と対等な価値で交換でき、特殊な製法で偽造を困難にすることで信用を得ていたわけでございますね?」
「うん。そうなるのかな?知ってる知識の中だとそれくらいしか言えないよ。元々、紙幣はお金として疑問も持たずに使ってたから。」
「なるほどでございます。あと、先程の『ギンコウ』とは何でございましょうか?」
「銀行はお金を預けたり、借りたりすることができる場所ってのが一般的な認識なのかな?銀行にも種類があるから、一概にそうだとは言えないけど、紙幣を発行する国が運営する銀行もあったけど、その銀行は政府専用だったから使えなかったよ。」
「お金を借りることが出来るのは助かりますが、預けるメリットはなんなのでございましょうか?」
「お金を預けたら家に強盗が来ても盗まれなくて安心なのと、銀行にお金を預けるとたまにお金が少しだけもらえるんだ。これは、銀行にお金を預ける=銀行がお金を借りたと考えれるから、銀行にお金を預けるとお金がもらえるんだ。」
「なるほど。それはいいですね。ですが、それでは銀行は損してしまいます。」
「うん。だから、銀行はお金を他の人に貸して、その人から利子を得て、その利子からお金を預けてる人へ還元するんだ。」
「よく考えられていますね。延々とお金が循環しています。」
「まあ、景気が悪くなると、お金を借りた人が返せなくなったり、銀行が貸すのを渋って、預けた人にお金が還元されなかったりと色々だけどね。」
「そう言う面もあるのですね。旦那様、お見それいたしました。この世界では考えられない高度な知識だと言えます。」
「まあ、そうかもしれないね。」
「そこでご提案なのですが、銀行を作られてはいかがでございましょうか?」
「銀行を?」
「はい。きっと注目を浴びると思います。それに、貴族議会で提案できれば間違いなく、貴族の方たちは食いつきます。」
銀行をか...なんか怖いな。銀行って運営を間違えたら影響する範囲が半端ないんだよね。
「う~ん、少し考えさせてね。銀行運営するには知識が乏しいから。」
「そんなこと無いとは思うのですが...一度、侯爵様にご相談されてはいかがでしょうか?」
あ~、それがいいかな。うん。そうしよう。
「わかった。【フクロウの会】の時にでも聞いてみるよ。」
「畏まりました。では、旦那様、期待させて頂きますね?私、玉の輿を狙っていますので。ふふふ」
「う、うーん。」
玉の輿って...やっぱり狙われてるよ。こらなら、パーティーの貴族相手の方がまし!あ、でも、ユリアさん美人だからもうユリアさんと結婚でもいい気がする.....