王都にやって来た
屋敷をもらってから数日が経ち、屋敷での生活も慣れ始めた頃、侯爵様から政治について考える集まり通称【フクロウの会】への招待状を貰った。
【フクロウの会】の名前の由来は、ガゼット王国でフクロウは賢さの象徴とされてるため、『知識を持つ者の集まりに相応しい』と、このような名前がついたそうだ。
そして、会の開催場所は王都のハウバッセン侯爵邸で行われるそうで、我が家には馬車が無いため、侯爵様の馬車に便乗させてもらって王都へ向かい、王都での滞在中は侯爵邸の客間を使わせてもらうことになってる。
と言うことで、今、侯爵夫妻と同じ馬車の中です。
「ソラ殿、王都は初めてなのか?」
「はい。セシリカ市しかこの世界ではまだ見ていません。」
「そうか。では、早いうちに王都を観光すると良いだろう。おそらく、私がソラ殿の事を国王陛下に話すと忙しくなると思うからな。」
「そうですか。報告はどの様なことを?」
「そうだな、まず、異世界人のことだな。それから、鉱山に関する活躍と、名誉男爵の爵位を与えたことだな。恐らく、早いうちに国王陛下との謁見の機会ができると思う。そこで子爵に叙爵されるだろうな。後は金銭の褒美も貰えるだろう。」
何か緊張してきたなぁ。国王様と謁見...
「まあ、そう緊張するでない。国王様は穏やかな優しい方だ。周りの貴族がうるさくても気にするな。どうこうはならん。」
そっか。そらなら大丈夫かなぁ。
「わかりました。」
そんな会話をしてるうちに王都へと着き、王都の門をくぐるとセシリカ市では感じれなかった活気が感じられた。
「王都は活気がありますね。」
「うむ。セシリカ市も早くこれくらい活気を呼び込まねばな。」
そう言えば、王都の人口はどれくらいかな?
『王都の人口は10万人を越えています。世界で5番目に大きな都市です。』
へ~10万で5番目なのか。
馬車はそのまま道を進み、宿屋や商店が並ぶ地区を過ぎ、商会や何かしらの機関の事務所などが立ち並ぶオフィス街へと入った。
「この辺は商会や行政の事務所が多いな。買い物はさっきのところが良いが、商談や申請などはこの辺りでするんだ。」
なるほど。オフィス街と官庁街のような感じかな?
さらに、奥へ進むと大きな屋敷が現れ初めて、奥へ進むごとに大きく立派になっていく。
「この辺りは貴族の屋敷が立ち並んでおる。城に近いほど爵位が高くなる、子爵であればこの辺りだ。」
外を見ると、かなり大きな屋敷が立ち並んでいて、どの屋敷もお金をかけてるように見える。
「かなり豪華ですね。私の国ではこんな豪邸、滅多にありませんでした。」
「そうか。ならば、公爵邸なんかは驚くだろうな。」
マジですか。公爵邸とかどうなるの?小さなお城くらいあるの?
「ほれ、そこがウェストランド公爵の屋敷だ。」
え?これって屋敷なの?ほぼ城なんですが。
「もう、言葉も出ません。」
「そうかそうか。で、あそこがガゼット王国の王城だ。」
「え?!」
王城はもっとすごかった。公爵邸の何倍も大きく、天高くそびえる白く美しい居城だった。
「で、ここが我がハウバッセン侯爵邸だ。」
着いたハウバッセン侯爵邸は先程のウェストランド公爵の屋敷よりも大きく、庭もかなりの広さがあるようだ。ほとんど宮殿だなこりゃ。
馬車を降りるとメイドさんの案内で客間へと案内され、ソファーに座ると、ユリアさんが紅茶を淹れてくれた。
「旦那様、紅茶でございます。」
「うん。ありがとう。」
紅茶はどちらかと言うと苦手なのだが、こちらに来てから何でか飲めるようになった。こっちの紅茶の味が俺にあってるのかな?
「そう言えば、ユリアさん。」
「ユリアでいいですよ?」
「えっと、じゃあ、ユリア。王都に屋敷ってあった方が良いのかな?」
「そうですね。今後、旦那様が子爵になられたり、役職に着くことがあれば必須ですね。特に、子爵になった場合は、お客様を招いて、ご挨拶しないといけませんし、貴族議会の開催期間は王都に居ることも多いでしょうから。」
「じゃあ、もし、必要になったら買わないといけないか。その場合、どれくらいお金がかかるかな?」
「子爵位であれば白金貨1枚ほどでしょうか。」
白金貨1枚ってどれくらいかな?むっちゃ高いんじゃない?
『金貨100枚で白金貨1枚になります。なので、10億円になります。』
うわ、やばすぎ。土地だけでも結構するのか。そこにあれだけの屋敷だもんね。そりゃ10億円するか。
「今の予算だと足らないから、国王様からの褒賞次第かな。」
「そうでございますね。その時はお任せください。」
本当に頼りになるメイドさんだわ。出来ないこととかあるのかな?いや、無さそうだ。
「それと旦那様、【フクロウの会】へ着ていくお召し物はいかがなさいますか?」
あ~、国王様への謁見は侯爵様から服を借りれるけど、【フクロウの会】は日数に余裕があるから作った方がいいかな。今後も必要になりそうだし。
「服は買うことにするよ。今後、他の場所でも必要そうだし。」
「畏まりました。では、仕立屋をお呼びいたします。」
仕立屋を呼ぶためにユリアは部屋を出ていき、屋敷の他の者に仕立屋を呼ぶように伝えたのか、直ぐに戻ってきた。
そして、しばらくすると仕立屋がやって来たため、服を作るために体の隅々までサイズを図られた。
あ~、オーダーメイドって面倒臭い。