00 \ うちのこ
名前は【くてゅうあ】とかそんな感じでクーちゃんって呼んでた。
悪性、異常、良く無いモノ、悪いモノ。そうしたモノの塊であり、そうしたモノを好んで取り込み糧とする。
黒くていくつもの目や口がある。見た者の正気を飲み込んでしまうようなそんな見た目。
見るからに悪いモノそのものであり、そうした性質を持ってはいるものの、相対する者によってそのあり方を変えるモノ。
食ったモノを糧としそしてそれを自身のものとして扱える。多くの者にとって毒と言える存在で、しかし僕にとっては薬も同然の存在。
そんな存在を考えている時期もありました。実在はしない妄想の中の住人。
けれどそんな考えも改めなくてはいけないようで。
ハロー、ニューワールド。ハロー、くてゅあ。
異世界で前世の記憶を持って生まれ、そして得た【この世ならざる者を視るチカラ】で見た世界にその子はいた。
とても小さくなってしまってはいるが、僕の妄想していた存在が、その存在の生まれたばかりの頃のイメージのままの黒い球状の体に大きな一つ目と口、そこからちょこんと生える四本の小さな三角コーンの足。
くーちゃんがいた。
◆◆◆
そんなくーちゃんと共にすくすく育ち5年ほど。
わかったことと推測。
この世界は魔法の存在するファンタジーな世界。
僕の生まれた所は山奥の深い緑に囲まれた村で隠れ里のような所。
外の世界との交流は行商人が2、3ヶ月に一度来る程度。
この世ならざるモノ。ここでは精霊とか妖精とか呼んでいて見える人と言うのは珍しいらしい。
そして【そうしたモノ】をみることができるというのはとても光栄な事らしく両親や長老は、僕がそうしたものをみれるとわかると大喜びした。
村にあった本や長老たちの話でわかったこと。
精霊を視ることができると言うのは精霊を使役する為に必須であり、精霊を使役できるというのはより効率の良い魔法使用を可能としまた上位の魔法を使うために必要らしい。
いわば世界的に見て凄まじいチカラをもった者なわけで、大喜びもするのだろう。
この村には少なくともわかっている範囲で見えているものは他にいないようだ。
80くらいだという長老も彼が子供の頃に一人いた程度だったらしく「死ぬまでに精霊の眼を持つ者に会えるとは」なんて泣いていた。
だいぶはぐらかされ濁されてはいたが、戦争なくても政治的な事に利用される可能性は高いらしいなと思った。
なにせ過去の精霊の眼持ちの事を良く言わんとするお話の内容の大半が戦争でこれだけの成果を出したとか王族を救ったお話だとかそうしたお話ばかりなわけで。
まぁとくに何かしたいわけでもないのでそうした利用のされ方も仕方ないのかなとは思う。
そしてこの辺は推測。
おそらく、くーちゃんは前世の時からいたのでは無いかと思っている。
ただ霊感だとかそうしたものがなかった為にみることも感じることもできなかった。
いや感じてはいたのかもしれない。そうした部分が妄想に影響していたのなら、だけれど。それとも妄想にくーちゃんが沿っていったのか。まぁそこは今はどうでもいいか。
まぁ僕が転生するって時に以前の世界で持っていたチカラ、妄想通りの力を持っていたのだとしたら、そのチカラを使って僕にその存在を感じられるようにしてくれたのではないかと。
そうそう、前世から繋がりがあると言う部分は推測だけでなく、くーちゃんは僕の精神?魂?まぁそうした内側に繋がりがあるらしく、僕の体の中に引っ込んだりもできるのでそこからの考え。
そして僕にそんなチカラを持たせた事で弱体化したのでは?と思っている。
その辺りを漂っている精霊を食わせてたのだけれど徐々に力を増していって記憶の中の形に近づいていっているような感覚もあるって言うのも理由。
ちなみに普段は僕の中にいてもらっている。
みれる者はいないらしいけど万一いたとしたらまぁこの子の見た目は嫌悪されかねないので。
僕自身、普通の人の感覚なら無理だろうなとは思いつつ、ただ前の記憶があるからか愛らしさのようなものも感じてしまう。
見た目がアレではあるのだけれど中身は小動物じみた可愛さがあるので偏見なく触れてくれればわかるとは思うんだけれど、まぁ無理か。
あぁそれと他にも二種類ほどクーちゃんと一緒に僕の中で過ごす子ができた。
一人目はローパーのようなコで、ローちゃんと呼んでる。
元々は石から細い触手がわんさか生えた、触手がかなり細いモ○ジャ○のようなモノだったのだけれど、細すぎる触手がいくつもあるっていうのが若干苦手に感じてそれを知るとある程度の太さでまとめてくれて、今のローパースタイルへと変わってくれた。
増えるときは核となっている石が二つに割れて増える。
二人目はソーセージにうねうねとしたヒダのようなものがついた、スカイフィッシュのようなコ。
トンボみたいな飛び方をしていて時たま高速で飛翔しては何かにぶつかって砕けている。
砕けた後はすぐに集まって同じ形に戻ってまた空中を飛び回る。
これはぶつかる際に対象の霊体?精神力?をいくらか削り取って一定量に達すると砕けだあと2匹分に再生する。
クーちゃんの餌には基本的には良くないとされるモノを中心としてはいたのだけれど、二人の同種も近くで鬱陶しくしているモノを捕食させていたのだけれど。
そんな中二人は一定の距離、くーちゃんに捕食されない距離を保ってついてくるようになったので興味が湧いてお友達になった。
ちなみにそれぞれ元より同種で食い合っているような場面に出くわすこともあったが二人の場合率先して近づいてくる同種を食べている。
そのためか他の同種にできないレベルの事を最近できるようになってきている。
◆◆◆
そして外からやってきた精霊使いから精霊の使い方を教わる日がやってきた。