不死身
屋敷は高い板塀に囲われ、大きな黒い門があった。
その門の脇に人が一人通れるくらいの戸があって、目の高さに小さな四角い切り込みがあり、その切り込みは、戸の反対がわで開け閉めが出来る様になっていた。
泰時はある一定の決まった拍子で『とととん とんとん とととん とん』と戸を叩いた。
戸の奥から「誰だ」と声がして「工藤泰時だ」と応えると、切り込みの奥の小さな引戸が開いた。
泰時は切り込みの正面には立たずに横に立ち、縛られているザブが見えるようにすると「権左殿にお目通り願いたい」と言った。
「おいっ」と小声が戸の奥からすると暫くして門が開き、中から数人の男が出てきてザブの両脇から腕を取り、屋敷の中に入って行った。
泰時は、その後を付いて行った。
廊下を歩くと、襖の向こうで畳をバンバン叩く音がして、半だ丁だの怒号が飛び交っていた。
廊下の突き当たりの襖を開けると広間があり、洋風の洒落た椅子に大男が座っていた。
サブは「座れ」と言われ、大男の正面にあぐらをかいた。
「おめえが、サブか?」
大男は、しゃがれた声で聞いてきた。
「そうだよ。あんたが、権左か?」
ザブは聞き返した。
大男は「いかにも」と答えた。
権左は確かに大男だった。
しかし、ザブほどの背丈はなかった。
大男たる所以は、むしろでっぷりとした腹の事を指したのだろうと想像出来た。
権左は、ツルツルに禿げ上がり、ぶよぶよとした脂が首や脇にも付いていて、まぶたすら腫れぼったく垂れ下がり、大きな餅に筋を描いた様な顔をしていた。
残念ながら、ザブの仇では無い事は明らかだった。
「おめえ、なんで俺につきまとう?」
「俺よりデカイ男を探していた」
「ほう。で、それは俺だったのか?」
「俺の探している男は、お前じゃ無かった」
「そいつは残念だったな。だが、落し前はつけてもらうぜ」
権左は、ダブダブのアゴで合図した。
手下は刀を抜き振りかぶると、サブの首目掛けて刀を振り下ろした。
サブは、少し身体をズラして避けた。
刀は、サブの左腕を切断して脇に食い込んで止まった。
「サブ殿!」泰時は、自分が一芝居を打っている事を忘れて叫んだ。
しかし、サブは何事も無かった様に落ちた左腕を拾うと、横殴りに斬りつけた手下を左腕で打ちつけた。
手下は襖を突き破り、廊下まで吹き飛んだ。
サブは脇に食い込んだ刀を抜き取ると床に立て、縄を切った。
そして、左腕を元の位置の傷口に押し付けた。
傷口がブクブクと泡立ち、焼けた鉄板に肉を押し付けた様なジューという音と共に肉が焼けた様な匂いがした。
サブは左腕をはなした。
驚いた事に、左腕はくっ付いていた。
脇の血も止まった。
「俺が先の戦で恐れられたのは、デカいからでも強えからでもねえ……死なねえからだ!!!」
サブはUndeadでしたw