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角なし  作者: くまおやG
3/11

武芸者

「拙者、工藤泰時と申す!参る!」

 泰時という侍は、鋭い居合いで剣を横に薙いだ。

 サブは巨体に似合わない体捌きで一撃を跳んで避けると、転がりながら刀を拾い抜いた。

 泰時の二撃目は、サブの頭を割りにきた。

 サブは素早く刀を頭上に掲げ、それを受けた。

「もしやその刀は妖刀【角落し】。間違いない!おぬし、角無し鬼のサブだな!」

「よく知ってるじゃねーか?」サブはニヤリとしながらそう言った。

「先の戦で一番恐れられた男を、知らぬわけ無かろう!」

 その時だった、手下の一人がサヨに斬りかかった。

「危ない!」

 手下の振り下ろした刀は、サヨを庇った婆さんの肩に深々と食い込んでいた。

「てめえ!」

 サブは泰時を前蹴りで吹き飛ばすと、手下の背中を切った。いや、叩いた。

 ベキっと鈍い音がして、手下は二つ折りになった。

 角落しを中心にグニャリの後ろに折れ曲がり、後頭部が尻に付き、手はだらしなく垂れ下がった。

 サブが振り返り、手下どもを睨んだ。

「ひい!!」

 手下どもは怯え、勝手に逃げ始めた。

「鬼だ!鬼がでた!!」


「サブ殿」

 泰時は刀を鞘に収め土間に膝まづき、深々と頭を下げた。

「こんな積りでは御座らんかった。長い刀を持つ大男を切れと言われ、もしやサブ殿ではと思い……武芸者として、先の戦で最も恐れられた男と相見えたい一心で……拙者とて武士の端くれ、御母堂様に対する不始末ここで腹を切ってお詫び致す」

 泰時は着物を開き、腹を出した。

「よせやい」

 サブは泰時が抜こうとした、脇差しを手で抑えた。

「あんたが死んでも誰も喜ばねえ。それより誰に雇われた?そいつの処に案内して貰おうか……だが、その前にチョット手伝いな。」

 サブは、泰時に鍬を手渡した。

「婆さんの墓を掘るぞ」

 サブと泰時は、墓穴を掘った。

 丁寧にお婆さんを埋めると、泣きじゃくるサヨと三人で手を合わせた。

「婆さんの仇は俺が必ず討つから、サヨお前はここで待ってろ」

「イヤだ!アタイも行く!」

「婆さんの仇を討ったら必ずここに戻るから、俺を信じろ」

「……ううぅ……」サヨは、渋々うなずいた。

「サヨ殿、拙者も助太刀いたす。待っていて下され」

「サヨ、これを置いていく」

 サブは巾着と朱色の櫛をサヨに渡した。

「金と女房の形見だ。三日して帰って来なけりゃやるよ。両方大事なもんだから、帰って来るけどな」

 サブはそう言って、サヨの頭をポンポンと叩いた。

「じゃあ行くか」サブと泰時は歩き始めた。



「雇い主は、毒島権左だろ?」

 サブは、道すがら泰時に尋ねた。

「なんで、それを知っているで御座るか?」

 泰時は、少し驚いた様子だった。

「そもそも、俺は奴を追ってきた」

「仇なので御座るか?」

「それは、分からねえ。女房の仇は俺よりもデカい、先の戦も滅法強い大男がいるって噂を聞いて参った。ところが当の権左は、旗色悪くなると、とっとと逃げやがった。その後、この辺りに住み着いたって噂を聞いてな……」

「シッ」

 泰時が口の前に人差し指を立てた。

「ここで御座る」

 サブが案内されたのは、街外れに建つ屋敷で高い板塀にぐるりと囲われていた。

「ふーん」

 サブはしばらく塀を見ながら何かを思案している様子だったが、突然愛刀の角落しを無造作に塀の中に投げ込んだ。

「なにをしてるで御座るか!」

「大丈夫だよ。どうせ、誰も触れねえ。あれに触った奴は、気が狂れちまう。お前さんは俺を後ろ手に縛って、毒島の前まで連れて行ってくんな」

寝返りが早いとか、言いっこなしでお願いします。

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