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年老いて一人暮らし  作者: ほぼ熊
驚嘆
5/8

こっちは大丈夫なんだ ーどこから介護介入するかー

 祖父の生前、電話をかける度に「こっちは大丈夫なんだ、元気にしているか?」と何事も無いように気づかってくれた。私たちは特に疑いもしなかったが、祖父の心情が穏やかでなかったのは最近分かってきたことだ。


 人にもよるが、老いると怒りっぽくなる。認知症で説明するならば記憶力や理解力・実行力が落ちるのが「中核症状」。それに本人の性格や生活環境が影響して、徘徊や不安・うつ・暴言・暴力が起きるのを「周辺症状」という。わかりやすく言うと、イライラしたとき人に当たるのか、うつになるのか、落ち着かなくてフラフラしてしまうのかということだ。

 私の祖母の場合、最初は「暴言を吐く」「被害妄想」という形で現れていた。当時は「悪口が酷い」のだと思っていたが、その時既に認知症がかなり進行していたのではないだろうかと思う。祖母の暴言先が祖父一人だったのを考えるといたたまれない。「暴言くらい許してやれよ…」と気軽に考えている人は、理不尽な上司と同居していて毎日13時間筋違いな因縁をふっかけられ続けるとしたらと想像して欲しい。寝ているときでも起こされて、物を盗られたとユサユサされる。相手が50年以上も連れ添った伴侶であれば無下にもできない。しかし電話越しに伝える言葉は「こっちは大丈夫なんだ」なのである。


 祖母と祖父の生活には様々問題は起こっていたが人の手は借りなかった。祖母は主に認知機能の障害だけであったが、祖父も内蔵を患ったり、足を10cmも上げて歩けなくなったりしていた。体は元気だけれど認知症の祖母、頭ははっきりしているけれど体が動かない祖父。お互いに老老介護をしてなんとか生活していた状態である。そんな状況でも祖母は自宅にホームヘルパーさんをいれるのは嫌で、祖父がデイサービスを利用するのも嫌がっていた。(デイサービスとは訪問でお風呂にいれてくれたりするサービスである)そして祖母本人の認知症が進み、祖父が他界した今も介護サービスを嫌がっていて導入していない。


 私たちの選べる選択肢は少ない。祖母のような人間は死ぬまで介護サービスは使わないだろう。ならば私の家族で祖母を引き取ればいいのだろうが、父がそれを望まない。理由は祖母を引き取ると文字通り24時間祖母に振り回され、生活が回らなくなるということ。それは事実で、もし同居すれば祖母最優先の生活になるだろう。それは拒否したい。往復6万円かかる祖母の家にも頻繁には行けない。ならば結論としてはこうだ。

・嫌がる祖母をいさめて訪問介護サービスをいれる。

・嫌がる祖母を無視して入所施設に強制連行する。

・なにもできないで傍観。月一回程度世話しに訪問。

もしも祖母の認知症タイプが被害妄想、幻覚ではなく、体も元気でなければ他の選択肢もあるのかもしれない。もっと近場に住んでいれば、祖母が心許す家族親戚が多ければ、もしくは徘徊してしまうなら、選択は違う。しかし現状ではこの3択の、しかも3番目しか選べないでいる。

 

 まだお世話にならなくて平気だろう、まだ大丈夫だろうといった引き延ばしが今を作っていると父とも話している。認知症を重く患ってから本人と建設的な相談をするのはとても難しい。まだ平気と思っている60代70代の間に一度将来について話しておくことは貴重なことだろう。

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