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プロローグ

はじめまして、初投稿になります。

小説を書くこと自体が初めてになりますので、文章表現が稚拙だと感じられると思いますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

ちなみにPCで読まれる方は縦書きで読むことを推奨します。(これは私の文章の書き方による影響から)


また時間の都合上、定期的な更新は難しいですが、可能な限り急いで執筆および推敲をしていきたいと思います。


最後に、感想などのリアクションをいただけると嬉しいです。

皆様からの感想等をモチベーションにしたいとも感じていますので、宜しくお願い致します。

 ひび割れた窓ガラスが懸命に、スラムの夜風から耐えている。風はまるで大型の獣の息吹、あるいは(うめ)き声のようで、静謐(せいひつ)な夜の闇に不可視の波を響かせる容赦のない牙を、瀕死の窓が必至に(しの)ぐ。

 それでも隙間から()れ入った風は、それだけで充分に体を震えさせる。

 少年は小刻みに揺れる窓の様子を見ながら、擦り切れた毛布を頭からかぶり、寒さに耐える。

 しかし、少年の震えは止まらない。

 寒いからだけではない。

 明確な理由などない。

 少年は物心ついた時から多くの人間を殺してきた。でも、それが怖いのではない。

 人間を殺し、多くの敵を作ってきた。しかし、その復讐も今更怖がることではない。人を殺め、そして憎しみを買うまでのサイクルが日常である少年に恐怖は感じない。

 それでも少年は震えを抑えきれない。ガタガタと歯を叩きつけ、体を縮ませ、毛布をめいっぱい強く握りしめる。

 誰を恨むこともできずに、ただ自身の震えが発する音を聞きながら、なにもない時間を過ごしていた。

 名も知らぬ大男が部屋を訪ねてきたのは、そんな状態で数日を過ごしていた時だった。

 見たことのない顔だった。筋肉で盛り上がった身体の隆起が、ただ迷い込んだだけの餌ではないことを示している。

 昔の標的の身内だろうか。それとも、かつての飼い主が迎えに来てくれたのだろうか。もしかしたら名も知らぬ自分の親で、自分を迎えに来てくれたのかもしれない。見覚えなんてないくせに、心当たりが多すぎて、彼が誰なのかがわからない。

 大男は部屋を一通り見渡すと、「寒いな」と呟いた。

「あなたは誰ですか?」少年は呟きを無視して問いかける。「僕を殺しに来たのですか?」

 大男は何も答えず、ゆっくりと少年に近づくと、その頭をなでながら言った。「いや、俺はおまえさんをスカウトしに来たんだ。」

「スカウト?」少年にはわけがわからない。「僕の飼い主になってくれるんですか?」ただ、殺されるわけではないらしい。

「飼い主にはならないな。その代わり、おまえさんの親になってやる」顔の皺を歪ませるように笑いながら言う。

 強い風がまだ部屋の窓を叩き続けている。先程から声が聞き取り難い。

「おじさんは僕のお父さんなの?」少し声を大きくして少年が問う。

「ああ、そうだ」大男は自信満々に言ってから、自身の胸を力強く叩く。「今日から、俺がおまえの親父だ」

 大男は少年の腕をつかみ、立ちあがらせると、「行くぞ、ついてこい」と言って、一人で勝手に外へと出ていってしまった。

 少年には今の状況がわからない。だが、それはいつも通りのことだ。なにも不思議なことはない。逆らうつもりもない。

 外に出る前に、部屋の隅に置いてある、これまで愛用してきた二本のナイフを拾い上げる。

 それを腰に据えて、少年も部屋から出る。風は今でも質量のない牙を、至る所に突き立てて暴れていた。

 ただ、そのときには、少年の身体の震えは止まっていた。


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