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ルーラァ  作者: 水遊び
ガキってのは、楽しければいいのさ。(15.07.05改)
8/50

第8話 いい知らせと、悪い知らせ

「アン、僕のおひろめはいつするの?」

「もう済みましたよ」

「え? そうなんだ」

 知らないふりをして聞いてみたが、やはりあれはお披露目だったか。

 しかし、移動ベッドだったよな。歩くのは一つくらいだった気がするんだが……。

 まあ、魔法で家を焼くというのは分かる気がするな。

 炎が危険だと知っているから自重するが、知らなければこんな面白い遊びは無いからな。

「ブルーノ様がご出世なされて、そのお祝いの席で披露されたんですよ」

「ふーん」

 つまらなそうな顔をしたんで説明してくれたみたいだが、元々おしゃべりだし、いいとしよう。

「あの時は、王子様がおしのびで来られて、そりゃあ驚いたものです」

「ふーん」

 やはり王子だったか。ピエロ王子、笑わしてくれる奴だ。

「おうじさまはどこにいるの?」

「王子様はお城ですよ」

「おしろ?」

「はい、お庭からも見えましたでしょう?」

「どこ、どこ?」

 昨日、庭に出たのにちっとも知らなかった。というより見てなかったな。

 ダッシュで部屋をで、で、くそっ、ドアの取っ手が高い。

 こった飾りレバーにぶら下がるだけで、ドアを開けられない。

「アン、アン」

 後ろから手が伸び、ドアを開けて貰ったらダッシュだぜ。

 隙間ほど開いたらすり抜け、大理石を走り、階段の手前で滑って、転んだ。

「びえーん」

「ルーラァ様、あぶのうございます」

 言うのが遅すぎだろうが。言っても聞かないけど。

 痛みをおっぱいの感触で忘れる、この努力は大事だ、うん。


 玄関先ではレイダーが頭を下げている。執事の仕事をしてるんだな、感心感心。 おお、周囲の家は豪邸ばかりだな。思わず振り返ると、我が家もだ。ちょっといい気分。

「ここは、貴族の家が集まっている第二城門内でございますよ。大きい家ばかりでございますね」

「うん」

 そして、石造りだ。

 内装を見る限り木造に見えるが、大理石の廊下を支える強度を考えるとやはりというべきだろう。

 分かるのは、これを建てるには二年や三年じゃ無理だという事ぐらいだが、これだけの技術を持った奴らなら、どんな図面を引いても作ってしまうだろう。

 何を作る?

 やはり、城だな。

 ここの城をじっくり調べて、日本との違いを探すのも一興だ。

 第二城門内という事は、第一が内にあるんだろう。

 城壁主体の防備だとしても、舛形門などは日本独自の形だからここには無いはずだし。みてろよ、誰も見た事がない様なスゲー奴を作ってやる。

「お城はほら、あそこに」

「あん? おお、すげー」

 あるよ、見えるよ、お城だよ。

 やっぱりお城を見ると、外国って感じがするな。

 上の方しか見えないが、四角いビルに三本の丸い塔は物見台とみた。対角向こうにも有りそうだから四本だな。

 城というより宮殿という感じか、いいねえ。 

 将来はお城に務めよう。うん、決めた。



 すぐに部屋に戻されたのは不満だが、アンナが家系図を持ってきた。御先祖様の名前が沢山書いてある。

「ルーラァ様はここですよ」

 俺と弟の名前は当然下の隅っこだが、弟の名前はハンクというのか、いい名前じゃねえか。

 その上、父親のブルーノは二男坊――二男坊?

 ちょっと待て、家を継ぐのは普通長男だろう。長男の没年は書いてないから生きている。

 つまりなにか、ゆくゆくは家を出なけりゃならないとかいう事か?

 なんだか、微妙な地位にいるようだな。

「ハンメル様は男爵の称号をお持ちですよ」

 ハンメル? ああ、爺さんの事か。

 男爵ってのは爵位の中でも一番低いやつだと思うが、それでも継ぐなら長男だろうしな。

「おじいさん、いないの?」

「はい、ハンメル様はアイスラー領にいらっしゃいますよ」

「なんで?」

「アイスラー領は大陸の中央、魔物が徘徊する大山脈の中に有るのですよ」

「ふーん」

 つまり、魔物が怖くて森に住めるかってやつだな。

 しかし、それとこれとは違う気がするんだが。

「魔物を倒すと残す魔石は生活に欠かせない物となっておりますが、高価な魔石のほとんどがアイスラーで獲れたものなんですよ」

「ふーん」

 しかし、毎日魔物と戦うってのが、なんかすげーな。アイスラーか、行ってみたくなったぜ。

 ちょっと待てよ、生まれてこの方屋敷から出た事ないぞ。

 やっぱりあれか、感染症などで子供の死亡率が高いから大きくなるまでは隔離とか。

 そういやぁ、弟にもまだ会わせてもらえない。まったく、過保護が過ぎるぜ、貴族さんは。


 あれ? 何で指先が切れているんだ?

 触ると痛い程度だし、血もにじんだ程度だが、さっき窓枠なんかを触ったからだな。まったく、ガキの体ってのは軟弱なもんだな。

 まあ、こんなもんはなめときゃ……ちょいと後ろを向いて、小声で。

「治れ」

 おお、治った。

 さすが魔法、たいしたもんだ。


「ルーラァ様、裏の方には馬がおりますよ」

「えーっ? いくいく」

 アンは俺の好きな事を知っている、そんな気がする。

 おっぱいギューをしながら裏手に行くとこなんか、特に。

 おお、厩舎だ。生まれたばかりの仔馬を入れて三頭、栗毛か、なんて毛並みがきれいなんだ。

 サラサラのロングヘアーって感じだな、見とれちまうぜ。


 その背に乗って、いや、乗せてもらったわけだが、高くて見晴らしがいい。

下を見ると少々怖い。たてがみを持つ手に力が入る。

 しかし、いつかここに乗って、草原を疾走するのかと思うとわくわくするな。

「この子馬のお世話がルーラァ様のお仕事ですよ」

「やったー」

 とは言っても、毎朝ここに来て遊ぶだけだろう。

 餌をちょこっとやったりするくらいで、本当の世話など出来ないし、しないんだろうな。

 一頭の仔馬が成長し年老いていくまで付き合う事で、馬に親しみ、乗りこなすことが出来るということだろう。

 貴族だねー。

 しかし、名前くらいは決めよう。

「うーむ、コタロウ、コタロウはどうだ?」

 おっ、仔馬と目が合った。

 なっ、目をそらした。

 無視した、今、絶対無視した。

「コタロウ、そう決めたからな」

 近づくと親の陰に隠れやがる。

 くそー、いつかきっと手なずけて、大陸じゅうを乗りまくってやる。

 コタロウの由来。


 コータローにしたかったのですが、2次の関係が心配であきらめました。


 曲名『走れコータロー』 バンド名『ソルティー・シュガー』


 この曲は1970年発売の、知らない人以外はみんな知っているという名曲(迷曲)です。



 参照 走れコータローYouTube


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