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ルーラァ  作者: 水遊び
ガキってのは、楽しければいいのさ。(15.07.05改)
4/50

第4話 あるく

『這えば立て、立てばあゆめの、親心』とは、よく言ったもんだ。

 ハイハイが高速ハイハイに変わると、アンはしきりに俺を立たそうとするが、腰に力が入らない上に頭が重いときてる。フラフラというより、ガクガク、ドスンといった感じだ。

 それでもどうにかこうにか立ったら、カロリーネとブルーノが飛んできた。そんで、エライエライといったすぐ後に、あるけときたもんだ。

 まだ、一秒か二秒で尻餅をつく子供になんちゅう無茶ぶりだ。まだ無理だ、無理だと、「ぶーぶー」言っても聞きやしない。

 ステーンとひっくり返って頭を打った。

「びえーん」

「よしよし、ルーラァはいい子ですね」

 って、お前が泣かしとんじゃ。

 カロリーネのおっぱいギューはいいけど、たいがいにしとけよな。

 そういやあ、いつの間にか言葉がわかっとるな。

 まあ、だいたいそうだろうってのが正直なとこだが、ガキってのはそんなもんかもしれん。


 おっぱいにしがみついて、離れたくないと無言の訴えをしていると、ポン、ポン、ポロロン。何やら聞こえてきた。

「ほへ?」

 顔を上げると、ブルーノが何やら楽器の様な物を弾いている。膝の上に乗せられるほど小さいが、あれはハープだ。

「ぶー」

 体を起こし、そっちの方に手を伸ばす。

「ほほー、ルーラァはリラが好きなのか」

「勿論よ、ルーラァちゃんは天才なんですから、ねー」

「そうだな、ルーラァは天才だ。さすがはカロリーネの子だ」

「いいえ、あなたの血を引いているからですわ」

「なんの、カロリーネの方だよ」

「あなたよ」

「カロリーネだ」

「ぶー」

 分かった、分かったから、ギユーってしなくていいから触らせろ―。

「ぶー、ぶー」

 おーい、俺をサンドイッチにしたままチューするのは止めろー。

「ぶー、ぶー、ぶー」

 まったく、カロリーネはいいが、ブルーノは仕事しろ、仕事。


 やっとの事で触ったが……名前忘れた。

 リラだ、リラ。 リラって、どっかのお金じゃなかったか?

 まあいい、小さくとも不格好でもこれはハープだ。そして俺はチユ―リップの歌を弾ける。

 ドレミ、ドレミ、ふんふんふんふん、あれ?

 かえるの歌。

 ドレミファミレド、ふんふんふんふん、あれ?

 まあ、あ、あれだ、耳が覚えているぜ。 

 音楽はいいよな、楽団を作るかな。宮廷音楽とか聞いた事があるし。


 とはいっても、歩けるようになるとそんな事は忘れた。

 アンヨが出来る様になると、もうそれだけでうれしくなってしまう。目線が変わったせいか、世界が違って見えるぜ。

「ルーラァ様、こっちですよ」

 アンが手を広げて待っている。

「ぶー」

 意味不明の言葉を発し、よたよた歩いていって抱き付く。もう、それだけで楽しい。

 何しろデカいおっぱいだ。そのおっぱいに向けて突進しろと言われりゃ行くだろ。年は関係ない、それが男というものだ……うん。


 壁にかっこいい魔物がたくさん貼ってあった。目線の高さにあるので否でも見てしまう。

「ぶー」

 一番てっぺんにドラゴン発見。ヨタヨタと歩いて、両手を壁につけて覗き込むように見た。

「これはドラゴンですよ」

 アンは俺の体に触れない様に抱いている。

 倒れた時の用心なんだろうが、やっぱりドラゴンだ。蛇に翼じゃなくトカゲに翼の方だが、こっちもかっこいい。

「スースキ王国のシンボルマークがドラゴンです」

 シンボルマーク? 家紋みたいなもんかな。家紋は日本だけだと思っていたが……。

 考えてみれば万国旗も有るし、海賊の旗も外国だな。

 一番上だし、スースキって国なのかもしれん。そう言えば、昔ススキノではストリッ……いや、昔の話だ。


「ぶー」

 玄関ホールにいた虎発見。

「アイスラー家のシンボルマークは、サーベルタイガーですよ」

 おお、また出たシンボルマーク。

 つまりこういう事か?

 スースキ王国、アイスラー家の、ルーラァ。

 うん、間違いあるまい。かっこいい名前だ、多分。

「ドラゴンは千年前に、魔道師様が退治されたんですよ」

 魔道師様ってのが良く分からんが、ようはもういないって事か。 

 しかし、本当にもういないのかな?

 ドラゴンが架空の生き物ではないなら可能性はあるはずだ。かなう事なら、いちどは見てみたいものだ。


 魔物を倒して魔石を取る。で、部屋にあるのは光の魔石というのか。

 金色に輝き、底面も天井面も側面も五角形だな。良くは覚えていないが、正一二面体だったか。

「ルーラァ様、これは金箔という物で包んであるのです」

「ぶー」

 金箔? 金箔にしちゃ分厚いぞ。

 仏壇屋の大将が、金箔の厚みはミクロンだとか言っていたはずだ。よく分からんが、薄い事だけは間違いない。

 金が高くないのか、それとも加工技術の問題か、判断に迷うところだな。

「少しでも剥すと、ほら、電気が消えたでしょう」

「ぶー」

「ここにスイッチがあって、ほら、ついた」

「ぶー」

「ルーラァ様はお利口ですね」

「ぶー」

 歯が生えてきたらやたらと口の中がむずがゆく、つい「ぶー」となってしまう。

 二本しか生えていない前歯でかじってみたが、硬った。

 あれ? あれは温風ヒーターか? 暖かい風が吹いてくる。

 二つあるから熱と風かな? あれも金色ということは、魔石を金の板で囲うと使える、そういう事かもしれんな。

 まてよ、これがあれば暖炉はいらないのではないか?

 いやいや、ここでさえ暖炉があるくらいだし、やはり高いんだろう。


 しかし、こうしてみるとどうやら電気がないらしいな。

 これはかなりまずいぞ。

 工場はもとより、重機はおろか、掘削機も転圧機も電動工具さえ無い。

 土木建築の知識は有れど、全てが人力となるとかなりきつい。

 あっ、構造計算が出来ない。こりゃ、前途多難だな。

 だが、まあいい。

 もともとツルハシ一本でやって来たんだ。今出来る事をするまでだ。

「ルーラァ様、こっちですよ」

「ぶー」

 よたよた歩いていって抱き付く。

「ぶー」

 アンのおっぱいは最高だ―!

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