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ルーラァ  作者: 水遊び
ガキってのは、楽しければいいのさ。(15.07.05改)
11/50

第11話 コタロウ

 継続は力なりって本当だな。毎日の稽古のおかげで体のさばきが良くなってきた。

 さらに、成長期だからか、身長が伸び体力もついてきた。

 レイダーの攻撃をまともに受けても耐えられるようになると、受けたり流したりの変化が取れる様になる。

 まだまだ手加減されているが、強くなってきた実感はやる気を出す。

「レイダー、ちょっと試したい事があるんだ」

「何でございますか?」

「武器無しでやってみたいんだ」

「それは構いませんが」

 木刀とガントレットを外し対峙した。

 さてと、ケンカ空手がどこまで通用するかだな。

 まだまだ十分とは言えないが、レイダーにしてみれば初見だ。

「よし、いくぜ」

「はい」

 まずは正拳。

「えいっ」

 スッと引かれた。

 次は、踏み込んだのち、回し蹴りから後ろ回し蹴り。

「せい、やっ」

 後ろ回し蹴りがあと少しの所を通過したが、当らない。

「くそー」

 正拳による二段攻撃も、前蹴りさえ体を開いてかわされ、そのまま突っ込んで飛び蹴りをしたが、レイダーの体はそこには無かった。

「くそー」

 倒れたまま旋脚。

 レイダーのジャンプは後ろでは無く前。

 その気はないだろうが、顔面を踏まれそうで横に転がる。

 駄目だ、全く通用せん。

「これは何と言う技でしょう?」

「空手、武器のない時に襲われてもいい様にと思ったんだが、駄目だ、当らない」

「いえいえ、今のは十分脅威でした」

「はー、だといいんだけどな」

 自信があっただけにショックだが、やはり足さばきだ。

 レイダーは引き足がうまい。

 引く時はどうしても後ろ脚を引いてしまうが、これだと前足が残る。

 この前足を同時に蹴る事で、すばやく下がっている。

 更に、攻撃しようと思えばいつでも出来る様に引いている。

 円で引く感じ、分かってはいるんだがなー。



 コタロウとは仲良くなった。

 それも、餌をやったらすぐに、げんきんな奴だ。

「行くぞコタロウ」

 かけっこはかなわないが、止まれというと俺が追い付くのを待っている。言葉が通じるとまではいかないが、感じてくれているようだ。

 コタロウに乗る、というよりしがみついては振り落とされる。はたからどう見られようと、これが俺達流の遊びだ。それが証拠に、ちゃんと乗るまで待っていてくれる。

 時にはこっそりヒールのお世話にもなるが、地面に座り込むと鼻先を押し付けて起こそうとしてくれる。

 コタロウはかなり頭がいい馬とみた。

 これはあれか、馬は飼い主に似るというやつか? それとも、頭の足りない飼い主を助ける為か?

 うーん、似る方に一票。

 そんなある日、コタロウの背に鞍が置かれていた。

「何で鞍が置いてあるんだ?」

「お坊ちゃま、裸馬は危険です」

 馬の世話をしている人がそう答えた。

 もしかすると、俺に怪我でもされたらクビになるのかもしれんが、よけいなお世話だ。

 遊牧民の子供達は裸馬に乗って遊ぶんだ……たぶん。

「俺が怪我をした事があったか?」

「いいえ」

「何故だと思う?」

「分かりかねます」

「落ちる練習をしているからだ」

「練習、でございますか?」

「そうだ、戦場では何が起こるか分からない。万一落馬しても怪我をしないように練習しているんだ」

「はあ」

「邪魔をするなと言っているんだ」

「は、はい。申し訳ありませんでした」

 無茶苦茶な理屈で押し切った。

「ちょっと待て」

「は、はい」

 そそくさと鞍を外そうとするところを止めた。

「この鞍、鐙は無いのか?」

「あぶみ、でございますか?」

「ああ、足を乗せて体を安定させるものだが、知らんか?」

「申し訳ありません」

「そっか、ならいい。外してくれ」

「かしこまりました」

 鐙、無いのか。

 乗馬なんてお上品なもんはやった事がないが、素人考えでもかなり違うはずなんだが。

 競馬の様に高い位置では疲れそうだし、ここは西部劇風だろうな。

 しかし、どんな形をしているんだっけ?

 サンダルみたいに、先をひっかける感じしか思い出せんな。

 ギザギザの歯車みたいなもんがついていた気もするが、馬が怪我をするんじゃないか?

 う~ん、さっぱりわからん。

 それに、鐙が無い馬には乗れないなんて間抜けな事になっても困るな。

 ともかく、鞍が付いたらお試しだけはする事にしよう。

「三歳になったら付けてくれ」

「はい、お坊ちゃま」


 遊んで汚れたら風呂場で洗うが、デカくて気持ちがいい。

 サブの湯船に水が入り、魔石であっためる。

 それを、中央の大きい湯船に流れる仕組みか、水は川から引いているのかもしれん。

 銭湯ほどの広さの周りに多くの椅子が置いてある。

 何人で入るつもりかは知らんが、蛇口も鏡も無いから変な感じだ。

体はメイドが洗ってくれる。

 ここは、貴族が興奮してメイドを押し倒す場面だが、肝心な物が小指程度のままだ。

 近所に住む後家さんのお世話になったんが中学の時だったから、そろそろ大きくなり出してもいいはずなんだが。

 まあ、なにはともあれ、湯船につかって極楽、極楽。

「いい湯~だ~な、は、は、はん。いい湯だ~な~っと」

 気もちいいー。


 綺麗になったら、勿論ハンクに会いに行く。

「ハンク~」

「ばぶー」

 だきつき放題で、プヨプヨ。一緒にハイハイしながら、動物と魔物のお勉強だ。

 ハイハイする先で寝っ転がると、体をクニュクニュと這い上がってくる。その小さな手足が、くすぐったいやら痛いやらで笑っちまう。

 それに聞いたか?「ばぶー」だぞ。

 俺なんか「ぶー」だけだったのに、ハンクは天才かもしれん。

 おっ、今度は俺の顔の上を通るのか?

 よし頑張れ、と思ったら座り込んで顔を覗き込んできた。

 そして、俺の顔をペシペシしたかと思ったら、「いてててー」鼻の穴に指を入れてきた。

 さすがにこれは痛かったが、これは、ひょっとして、もしかして、あれか?

……穴があると指を入れたくなる……。

 ハンク、俺はいま確信した。

 お前は間違いなく俺の弟だ。

 そしてハンク、お前からの挑戦状、このルーラァ、兄として、男として、正々堂々受けて立つ。

 ほれさせた女の数かものにした数かは、お前が話せるようになってから決めよう。

 だが、しかーし。

 ハンク、これだけは覚えておけ。

 たとえかわいいお前でも、こればかりは負けてやるわけにはいかない。男と男の真剣勝負だからな、ははははー。

「ばぶー」

 何? 絨毯がどうかしたのか?

 魔物? そうか魔物、倒した魔物の数でも勝負を望むか。

 よかろう、受けて立つ。

 そして、大人に成ったら杯を酌み交わし、互いの健闘をたたえあおうぞ。

 うーむ、美味い酒が飲めそうだ。……酒?

 しまった、ここにはワインと馬乳酒しかなかった。

 米、米がいる。

「アン、アン?」

「はい、ルーラァ様、何でございます?」

「植物図鑑持って来て」

「はい、ただいま」

「これかな? いや違う。これかな? うーん」

 悩んでいたら、アンが横から声をかけてきた。

「これはライでございますね」

「ライ?」

「はい、高い小麦の代わりになるとか」

「それだ!」

 どこだったかは忘れたが、そんな話を聞いたことがある。

「現物を見たい、粉にする前のものだ」

「はい、すぐに手配いたします」

「ばぶー」

剣=権力の中世ヨーロッパに、剣を使わない空手はなかったそうです。

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