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一家全員、処刑確定!? 悪役令嬢の妹のはずでした   作者: うり北 うりこ@3/13『好きです。 騎士団長様』発売


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約束を果たすため①〜アリウムside〜


 ミルベラと共に背負うと約束をした。

 緊急で開いた議会では、皆が俺に視線を向けている。

 黒に近い茶色のテーブルがやけに冷たいのは、これから話す取り組みに賛同を得られないと分かっているからだろうか。


「──飢饉対策に向けて、各領地に協力を要請する。まずはラットゥース領で育てた麦と似た条件の土地での栽培、各領地で食糧備蓄を開始。並行して新たな農作物の試験的栽培に取り組んでいく」


 ざわりと空気が揺れ、皆が一様に渋い顔をする。

 視線に鋭さや冷たさが混じる者、落胆の表情を見せる者、一切感情を見せぬ者、これを気に取り入ろうとする者、反応は様々だ。


「殿下、飢饉の対策が必要なことは理解できますが、もっと段取りを組むべきではありませんか」

「そうですぞ。資金面もですが、急な備蓄は他国との関係に摩擦を生みかねませんぞ」

「そもそも、現時点で何も問題は起きておりません。備蓄の必要制はそこまで重要ではないかと。それよりも、鉱山の採掘に力を入れるべきではないでしょうか」


 皆が言っていることは理解できる。

 だが、ミルベラは既に動いているのだ。共に背負うからには、何が何でもこの議決を通す。

 たとえ、俺の評価が落ち、後継者問題が起きようとも。


「では、飢饉対策を後手に回し、何かあった場合、貴殿らが責任を取れるのか?」

「そういう話ではございません。国を動かしていく上での話をしているのです」

「そうだ。俺も国としての話をしている。蓄えて何もなければ、それはそれでいい。だが、万が一の時にしわ寄せが行くのは一般市民だ。国民を守ることが国としての義務ではないのかな?」


 にこりと笑いながら言えば、まだ何か言いだけな雰囲気で何人かは押し黙る。


「ならば、きちんとした手順をですな──」

「それをしているうちに、民が命を落とすようなことがあったらどうするつもりだ?」


 思いのほか、低い声が出る。

 この場で話をまとめるのは、やはり無理だった。

 これ以上続けたところで、反対意見を言われ続けるだけだろう。


「これは決定事項だ。国の事業として取り組むように」


 そう言い残し、引き留める声に足を止めることなく、俺は部屋を後にした。

 これでもう後戻りはできない。

 無意識に握りしめていた手のひらは、汗ばんでいる。


「こんな姿、ミルベラには見せられないな……」


 一歩足を踏し、父上の元へと歩き出せば、カルナ、キール、サイナスが俺の後ろに立つ。


「……なんだ、待っててくれたのか?」


 視線も向けずに聞けば、小さく笑う声がする。


「そんなこと言って、ホッとしたくせに」

「カルナの言うとおりです。相変わらず、素直じゃないですね」

「で、ここからどうする?」


 当たり前のようにこれからの話をされ、三人の方を向けば、何一ついつもと変わりない。


「俺といて、得などないかもしれないよ」


 むしろ、苦労が増えるだろう。


「何を今更なことを言ってるのです?」

「だな」

「むしろ大変なことばっかりだったよねぇ」


 カルナ、キール、サイナスは笑っている。

 議会の前、三人には飢饉対策について話していた。側近を辞しても、冷遇することはないとも。


「皆、馬鹿だな……」

「馬鹿なのは、アリウムの方だって」


 カルナが言えば、キールとサイナスも頷く。


「その呼び方、久々だ」

「なんだ、アリウムと呼ばれたかったのか」

「仕方ないですね。四人の時だけですよ、アリウム」


 三人の未来も、俺が失脚すれば閉じられるのか……。

 ぞわりと背中を冷たいものが走る。

 だが──。


「頼りにしてる」


 俺とミルベラだけで乗り越えられる壁ではない。

 信頼できる協力者は多いほうがいい。


「あ、そうそう。噂程度なんだけど、アリウムに伝えたいことがあってさ」


 カルナが思い出したように言い、声をひそめる。


「聖女と思わしき人物が現れたらしいよ。何でも今回の聖女は夢見による先見だって」


 その言葉に、心拍が上がる。

 ミルベラのこと……か。いや、本人も否定していた。

 何より、確証はないはず。


「分かっている情報を教えてくれ」

「うん。聖女じゃないかと囁かれているのは、ラディア・フィリリーム。フィリリーム男爵家のご令嬢だね。すごくリアルな夢を見るようになったと話してるらしい。父さんたちが動き出すのも時間の問題じゃないかな」

「……先に接触するか」

「それがいいと思う。アリウムとミルベラ嬢について聞いて回っているみたいだから」

「…………へぇ」


 俺とミルベラをね……。


「ラディア・フィリリーム嬢について、些細なことでもいい。調べておいてくれ。弱みもな」

「うん、任せといて。なければ、作ってくるね」

「……いや、相手は聖女だ。そこまでしなくていい。そもそも、弱みやつけ入る隙のない人間なんていないしな」


 俺の言葉にカルナが頷いたのを確認すると、キールに視線向ける。


「商会長と連絡を取ってくれるか?」

「手紙は昨日に送ってますので、早ければ明日にでも返事がきます」

「助かる。ありがとな」


 あと、やることは……。


「俺は何をする?」

「サイナスは待機だ。いざという時のために温存しておいてくれ」

「了解」


 まだ力ずくの段階じゃない。

 ミルベラが王都に戻るまでに、地盤を固め直さないとな。


「父上のところに行ってくる」


 飢饉事業に関しては、細かな報告が義務付けられている。

 どうせ父上にも手順を踏めと言われるのだろう。

 それがわかっているだけに、進む足がいつもより重かった。

 

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