表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『捨てられシスターと傷ついた獣の修繕日誌』 ~「修理が遅い」と追放されたけど、DIY知識チートで壊れた家も心も直して、幸せな家庭(ホーム)を築きます~  作者: エリモコピコット
第2章: 夏空の開拓と、小さな鍛冶師

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/58

第50話:見えない毒と視える目


 断熱リフォームのおかげで、だいぶ暖かくなった。


 でも、まだ足りない。


 暖炉から離れると寒いし、夜は毛布を何枚も重ねないと眠れない。


「もっと効率よく暖めたいな……」


 私は暖炉の前で、設計図を描いていた。


「エリス姉、なにしてるの?」


 モコが覗き込んでくる。


「ペチカを作ろうと思うんだけど、レンガが必要だからどうしようかなーって…」


「……レンガなら、ある」


 トトが裏庭を指差した。


 そこには、シートを被せられた四角い塊の山があった。


「鉄を打つたびに、余った熱でコツコツ焼いておいたやつ」


「さすがトトちゃん! 用意周到すぎる!」


 これだけあれば十分だ。


「ペチカって何?」


「うん。レンガでベッドを作って、その中に煙を通すの。そうすると、レンガがポカポカに暖まるんだよ」


(現代でいうと、床暖房みたいなものかも)


「へぇー! あったかいベッド!」


 モコの尻尾がブンブン回り始めた。


  † † †


 私たちはレンガの山を部屋の中に運び込み、組み立てを開始した。


 まず、部屋の隅にレンガを積んでいく。


 ベッド……というより、大きなソファみたいな形。


「この中にトンネルを作るよ。煙が通る道」


「……ん」


 トトが頷いて、レンガの隙間に粘土を塗り込んでいく。


 私は煙の通り道を設計した。


 カマドから出た熱い煙が、レンガの中をぐるぐると回ってから、煙突に抜けていく。


「これで、煙の熱がレンガに伝わって、蓄熱されるんだ」


「ちくねつ?」


「熱をためておくってこと。火が消えても、しばらくはポカポカだよ」


 モコが目を輝かせた。


  † † †


 数日かけて、ペチカが完成した。


 レンガを積み上げた、大きな暖かいソファ。


 水車動力のふいごがあるから、夜通し燃やしても誰も疲れない。


「よーし、火を入れてみよう」


 カマドに火を入れる。


 パチパチ、パチパチ。


 炎が燃え上がり、熱い煙がレンガの中を流れていく。


「……あったかい」


 トトがペチカに手を置いた。


 しばらくすると、レンガ全体がじんわりと暖まってきた。


「わぁ……!」


 みんなでペチカの上に座ってみる。


 下からじんわりと熱が伝わってくる。


「これ、天国……!」


 モコが幸せそうに目を細めた。


 ピコは……。


「……」


 ペチカの上で、完全に溶けていた。


 手足を投げ出して、ぐでーんと伸びている。


「ピコちゃん、気持ちよさそうだね」


「……ん……」


 返事すらまともに返ってこない。猫人族、暖かい場所で溶けすぎじゃない?


 ふふ。みんなで笑いながら、温かさを楽しんだ。


  † † †


 その夜。


 みんなでペチカの上に集まって、お茶を飲んでいた。


 外は寒いけど、ここだけは天国だ。


「エリス姉、これすごいね。あったかくてずっとここにいたい」


「えへへ、でしょ」


 私は得意げに笑った。


 ……でも。


「……ん?」


 なんだか、頭がぼんやりする。


(疲れたのかな……)


 最初はそう思った。でも、だんだん頭痛がしてきた。


「……エリス? 顔色悪いわよ」


 ピコが起き上がって、私を見た。


「う、うん……ちょっと頭が……」


 おかしい。なんだろう、この感じ。


 私は念のため、スキルを使ってみた。


構造把握アーキテクト・アイ


 目を閉じて、部屋の「構造」を視る。


 すると――。


「……!」


 見えた。


 ペチカのレンガの隅っこから、ドス黒い紫色のモヤが漏れ出している。


「なに、これ……」


 私は目を見開いた。


 紫色のモヤは、天井に向かってゆらゆらと立ち昇っている。


「エリス姉? どうしたの?」


「窓を開けて! 今すぐ!」


 私は叫んだ。


「え? えええ?」


 モコが慌てて窓を開けた。


 冷たい風が吹き込んでくる。


 私はスキルで見えている「紫色のモヤ」を追って、ペチカの裏側を調べた。


「……ここだ」


 レンガの継ぎ目に、小さなひび割れがあった。


 ここから、見えない毒が漏れていたんだ。


「モコ、粘土持ってきて!」


「う、うん!」


 モコが粘土を持ってきた。


 私はひび割れに粘土を塗り込んで、完全に塞いだ。


 もう一度、スキルで確認する。


 ……紫色のモヤは、もう出ていない。


「ふぅ……」


 私は息をついた。


  † † †


「エリス姉、さっきの何だったの?」


 モコが心配そうに聞いてきた。


「煙の中には、見えない毒があるの。ちゃんと煙突に流れないと、部屋の中に溜まっちゃうんだ」


「毒……!?」


「うん。吸いすぎると、眠ったまま起きられなくなっちゃう」


 モコとトトが顔を青くした。ピコも真剣な顔をしている。


「でも大丈夫。もう直したから」


 私は笑って、みんなの頭を撫でた。


「私のスキル、ちょっと進化したみたい。前は見えなかったものが、見えるようになったの」


 今回気づいたこと。


 『構造把握』で、目に見えない気体の流れや、温度の分布が視えるようになった。


 まるでサーモグラフィみたいに、暖かいところは赤く、冷たいところは青く。


(これなら、危険な場所も事前にわかる)


 私はペチカをもう一度確認した。


 今度こそ、問題なし。


「さ、せっかく直したんだから、改めて温まろうよ」


 私がそう言うと、みんなの顔がパッと明るくなった。


「うん!」


 モコが飛びつくようにペチカに戻る。


「……ん」


 トトもちょこんと座った。


「……仕方ないわね」


 ピコも、さっきまでの緊張が嘘みたいにペチカの上で伸び始めた。


 窓を閉めて、しばらくすると部屋がまた暖まってきた。


 下からじんわりと熱が伝わってくる。


「やっぱり天国……」


 モコが目を細めた。


 ふふ。さっきは怖い思いをしたけど、こうしてまた温まれるなら、作った甲斐があったな。



  † † †



 翌朝。


 私たちはペチカの上で目を覚ました。


 みんなで一緒になって寝ちゃっていたらしい。


 モコが私の腕にしがみついていて、トトは私の反対側で小さく丸まっている。


「……あったかい」


 トトが幸せそうに呟いた。垂れ耳がピクピク動いている。


「ピコちゃん、また溶けてる」


「……ん……」


 ピコは返事もせずに、ペチカの上でぐでーんとしている。黒い尻尾だけがゆらゆら揺れていた。


 昨夜はあんなことがあったけど、こうしてみんなで無事に朝を迎えられてる。


 それだけで、十分だ。


 外は寒いけど、ここだけは天国だ。


 私はみんなの寝顔を見ながら、穏やかな朝を迎えるのだった……。



と、投稿おくれちゃいました…!

ペチカ=カング=カン? とりあえず現代の床暖房みたいなものと思ってもらえれば!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ