浮足立つ心、地に足のついた生活。
起きたら背中に翼が生えていた皇太郎。慣れない体にはトラブルが付き物で……!
昼休み。いつもなら令凰と弁当を食べているが、今日はあいつが用事があるとかほざいて教室を出て行ったので絶賛ぼっちである。
全くどうしてくれるんだよ。クラスの人達は友達同士でグループができてるし、今更弁当一緒に食べようなんて言えないしなぁ。……いや、ここで逃げてどうする!このままイケメンれライオンおに頼ったままでいいのか!自立していくべきだろ!そう、今こそ心の中の陽キャを呼び覚まして、新たな一歩を踏み出して未来へ羽ばたくんだ!俺!
「あの……鬼虎くん?そんなに翼をはためかせると危ないよ……。」
「へっ?」
寺月さんに注意されて現実世界に意識が戻った。いつの間にか無意識の内に背中の翼を動かしていたらしい。クラス中の人の視線がこちらに集まっていた。
……恥ずかしい。死にそう。それじゃ俺死にますね。今までありがとうございました。
空が黄緑色になって2日。
今日も世界は
「ヤバい!鬼虎くんがショートして固まっちゃった……!」
「……はっ!」
「よかったー。再起動した……。」
「……腹切って詫びます。」
「希死観念が暴走しちゃってる!そんなことしなくていいから!」
「わかりました。本当にすみません。」
「そ、そんなに謝らなくていよーw。ってこんなことより今、暇……かな?」
「相当暇ですけども、何か用ですか?」
「よかった!それなら一緒に弁当食べない?」
「えっ俺と、ですか?、」
「そうだけど、嫌だったかな?」
「全然!俺なんかで良ければ……!」
そんな訳で俺は寺月さんと校舎裏で二人っきりで弁当を食べることになった。
―――――――――――――――
校舎裏。日陰になっており涼しく、人気の無い静かな場合。黄緑色の空と木々に包まれてとても心が落ち着く。
まぁ、もうこの空に慣れ始めている事が少し怖いけど……取り敢えずぼっち飯を回避出来て良かった。でもなんで寺月さんが俺と……?直接聞いてみるか。
「あの……、つかぬことをお聞きしますが、どうして寺月さんは俺なんかと一緒に弁当を?昨日初めて喋った仲なのに……」
「あぁその事なんだけどね、実は鬼虎くんに伝えたいことがあって、」
「伝えたいこと……?」
「うん……。」
……これもしかして期待していいやつなのでは!?
いや~もうこれ玲王くんよりも先に彼女できちゃいm
「実は……私、天内君のことが好きなの//」
omg
いやまぁそうだよな。俺なんかよりも玲王の方がいいよな。うん。俺さっきあんな事しちゃったし。
「変だったかな……?」
「いやいや、とても似合ってると思うよ!」
「そ、そんなことあるかなぁ//あるかも//」
……少しは謙遜して欲しいな。てか寺月さんってこういう人だったんだ。
「それで、なんでその事を俺に?」
「いや~鬼虎くんって天内くんといつも一緒にいるじゃん?だからもしかしたら天内のタイプとか知ってるかもって。」
「そのために俺に近づいたんですか!?」
「本当にごめんっ。でも頼れる人が鬼虎くんしかいなくて……」
「別にいいよ。それで、あいつのタイプかぁ。聞いたことないな。今度聞いてみようか?」
「ホントっ!お願いできる?」
「これくらいのことなら。」
「ありがとう!!代わりに今度鬼虎くんの願い事聞いてあげる!」
「それはどうも。」
一つ一つの動作が可愛いのが悔しい。はぁ。幸せもんだな、怜王。
キーンコーンカーンコーン
「大変!早く戻らないと!行こ、鬼虎くん。」
「うん。」
こうして色々あった昼休みは終わりを告げた。
―――――――――――――――
気が付けばもう放課後。みんなが続々と教室を出ていく。
「なぁ玲王。」
「ん?」
「お前って好きなタイプとかってあんのか?」
「どした?いきなり?」
「いや、お前ってそういうのに興味あるのか気になってな。」
「そりゃぁ一応はあるけど。そうだなぁ、頼りがいのある人とかかな。」
「頼りがい?」
「ああ。自分がピンチの時に助けてくれる的な感じかな。」
「お前がピンチになることなんてあるのか?」
「俺のことなんだと思ってるんだよ……」
「神様とか?」
「あのなぁ俺はただの人間だぞ。ピンチなることぐらいざらにあるだろ。」
「そんなもんか、」
「そんなもんだよ。んじゃ今日も用事あるから先帰るな。」
「わかった。バイバイ。」
「おう、バイバイな。」
そう言って教室を出て行った。
あいつ恋愛に興味あったんだ。
さて、こっちも帰る支度を済ませて帰るか。
机の中にしまってある教科書類をカバンに詰め教室を出た。
翼を持ったことで自由を手にした少年は帰り道について廊下を歩きながら考えていた。
どうしようかな。折角これがあるのだからどこか寄り道したいところだけど……もしかしたら家に帰られなくなるかもだし、真っ直ぐ帰宅するか。
そんな事を思っていた矢先、突然雨が降ってきた。
えー。晴れてんのになんで雨なんか降るんだよ。母さん1日晴れとか言ってたからカッパとか持って来てないぞ。
そんな愚痴を心の中で垂れながら玄関口で雨が止むのを待っていると後ろから声を掛けられた。
「あ、き、鬼虎君?」
「あ、金瓜さん。」
彼女の名前は金瓜やこ。クラスメイト。どこかミステリアスな雰囲気を纏い、背が低く……というか全体的に小さく髪型はボブで、寺月さんとは違った可愛さを持っておりこれまた隠れた人気を有している。普段ならこんな感じなのだが、今日はそれに加えて翼が生えている。彼女の翼はその身長とは合わず大きく黄色に輝いている。その姿はとても寛美で、彼女もまた天使を体現しているかの様。やっぱりこの世界最高だな。
「もしかして、傘とか持ってきてないの?」
「そうなんだよね……」
「よ、よかったら私の傘使う?」
「え!いいの?」
「うん。2本持ってるし。」
「ありがとう……!」
その姿も相まって金瓜さんが本物の天使に見える。いや、もうこれ本物だな。教会のステンドグラスに描かれてもなんの遜色もない。というか描くべきだな。
「あ、でもごめん……傘じゃ歩くことになるよね……」
「全然大丈夫だよ!」(飛ぶの全然慣れてないからむしろ歩きたい……)
「そ、そう?鬼虎君って優しいね……」
「そうかな?ありがと。さっ、金瓜さんも一緒に帰ろう?」
「……うん!」
そうして翼の生えた2人は歩いて帰った。 2人の上の空には虹が架かっていた。翼の生えた今なら虹の上を歩くことも出来る。そんな気がした。
家に帰ると相変わらず楓が出迎えてくれて冗談を言い合いながら幸せな時間を過ごした。今日みたいな日も案外悪くない。むしろこのままで良い。そんな思いを抱えてながら皇太郎は眠りについた。
今日も色々あったな。まさか“背中から翼が生える”なんて。そのおかげで金瓜さんと少し仲良くなれたし。にしても驚いたな。まさか寺月さんが玲王のこと好きだなんて。
玲王か……
そういえば、あいつとの朝の会話、昨日と一緒じゃんみたいな……やり取りあったけど……、もしこの翼が生える世界が平行世界なら、なんで……この世界のあいつが……別世界で起きたはずの、昨日の会話の……内容知ってんだ……?
ま、いっか。
zzz……
空が黄緑色になってから2日。
今日も世界は狂ってる。




