今日は空が霽れており、
目が覚めると空の色が黄緑色だった。
「んっ……あぁ?」
まだ寝ぼけているのかと思い窓に近づいて確認しようとした時、ふと視界が逆さになった。
ドスッ
「……ってぇ。」
そういや俺ベッドの上にいたんだよな。いきなりの世界の変化に自分の状況ですら忘れてしまっていた。痛覚があるということはこれは夢ではない。少し抱いていた淡い期待もこれで潰えた。
取り敢えず外の様子を確認してみる。空が唯々黄緑。めっちゃ黄緑。ありえんぐらい黄緑。目の前に広がる非現実的な状況に俺の語彙力は完全に消え失せていた。
しかしこんなにも混乱しているのは俺だけで外にいる人達は何も世界が変わってないかのように生活している。
訳が分からん。
一応SNSを開けてみるも、トレンドは「俳優が不祥事を起こした」や「偉大な歴史学者が亡くなった」とか空の事に関するワードは何一つとして入っていないどころか、誰一人として「空が緑なんだけど!」的なことをつぶやいておらず、なんなら「今日も空が綺麗」だの「ああ よき天気 心安らかなり」だの至って普通である。
一体どういうことなのか。寝ぼけた頭をフル回転して考えてみる。
……そうか、俺の目がおかしいんだ。きっと青色が黄緑色に見える的な色覚異常の一種にでもなったのだろう。学校帰りに眼科でも寄って帰ろう。そんなことを考えていた時、どたどたと階段を駆け上ってくる音が聞こえてきた。
ガチャ バン!
「ちょっとお兄~なに寝ぼけてんの~ お母さんが早よ朝ごはん食べろって怒ってるよぉ~」
入ってきたのは俺の妹の楓だった。
「あぁごめんな、楓。なんか兄ちゃん起きてから目がおかしくてな。それで少し休んでいたんだ。今日あたり眼科でも行ってみるよ。」
「そぉーなん?見た感じは普通だけど……」
「そうなのか、でも色の見え方が変でな。」
「色?」
「あぁ何でも青色が黄緑に見えてな……」
「なにそれ変なの~」
楓がフフッと笑う。
「楓は笑ってるけどこっちは違和感ありまくりで大変なんだ……ほら、空が黄緑色に見えるんだ。」
「え、何言ってんの~」
「ん?」
「空は元々黄緑じゃん。」
「お兄、眼科より頭の病院行ったほうがいいよ。てか、なんもないなら早く朝ごはん食べなよ~」
「あぁそうだな……」
空の色が黄緑色になってから1日。
今日も世界は狂ってる。