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 その後、チューダー公国はファッションと羽毛と魔法の都と呼ばれるようになった。


 公国では年に数回、国の内外からドレスメーカーの参加募り、ファッションショーなるものを開催していたが、年々参加するメーカーも増え、更にそれを見に集まる業者や観光客も増えていった。


 イベントを見に集まる客は、チューダーを訪れる際には、今や首都となった大公家を中心とした市街地で買い物をしてはお金をたくさん落としていってくれていた。

市街地は三国で一番お洒落なショップが軒を連ねる様な、時代の最先端を行く街になっていたからだ。


 湖の周辺に建てられた大小の豪奢なホテル群のある一帯は、大公の娘によりヤマナカ地方と名付けられ、北部特有の涼しい夏の期間は貴族も庶民も憧れの避暑リゾート地となり、シルフォレストの僻地扱いされた過去は今や昔となっている。


 公国ができて十数年後、初代大公が引退を決めるとその娘が跡を継ぎ、女大公が誕生した。

その隣には銀色の髪を一本に結び、新大公とお揃いの瞳を持つ長身の男性が寄り添っていた。


 引退した先代は娘婿と民の前でも平気で口喧嘩を始める様な有様で、一見仲が悪そうに見えるが、その実二人一緒にさまざまな魔道具を作り出し、その中でも傑作と言われるのが中に収めた収容物の時を止める箱、マジックボックスと呼ばれる物を作り出し、魔道具の進歩と革命の父とも言われた。

 その後も更に研究され進化を遂げたその箱は、馬車より大きな物量を収められる様になったり、袋状にも作られる様になり、後に女大公が立ち上げた運送業の遠隔への流通業務の大きな一助となった。


 大公夫妻は三人の子供たちを育て上げ、時々城下でお揃いのドレス姿で買い物を楽しみ、精霊族の手芸部と共に、凍える様な北部の冬も軽く暖かいコートで過ごせる様にしたり、遠い地の文化も取り入れたデザインで社交界に旋風を起こし続け、女性にも動きやすいパンツルックを提唱、普及させるなど、世にお洒落する楽しみを広げていった。


 先代大公と精霊でもあるその祖父は、大公夫妻の子供たちを大変厳しく育て、それ以上に大変愛情深く育てた。

可愛い子には旅をさせよとばかりに、両隣国へ留学もさせ、特にシルフォレスト国カーン領軍への武者修行はそれぞれ長期に渡ったが、領軍総司令官夫妻が温かく迎え入れ、総司令官が自ら剣を、奥方が体術と暗器の使い方を子供たちに指導した。


 やがて長命であった初代大公が亡くなって数年後、それぞれの才能に溢れた三きょうだいの中から長男が大公を引き継ぐと、先代大公となった夫妻は、この世で関わりあった全ての者たちにそれぞれ丁寧に挨拶を済ませてから、ある日どこぞへと消えてしまった。


 一番魔法に長けた長女は、父母はきっと精霊の国に行ったのだろうと言った。

それを隣で話を聞いていた祖父は、孫娘は海というものを見てみたいとも言っていたので、今頃夫と二人で海の幸で舌鼓でも打っているのかもしれないとも笑いながら言った。


 そして長女は、多分母はもう二度とここには戻らないであろうとも言った。

おそらく母は既に人智を超えた存在となっているが、人としての生を終えたとしたいのだろうと。

けれどもきっと母のことだから、家族と公国が心配になって時々コッソリとどこからか覗きに来てしまうでしょうねとも笑った。


 今日も公国の城の天辺には、金色に輝くガチョウが一本の枝を咥えて飛び立ち、それを守る様に輝く幾つもの星々の意匠の公国旗がはためいていた。

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