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夕暮れ

作者: 石田 幸

夕暮れ時あの頃を思い出して温かい気持ちになる優しいお話。

午後四時過ぎ。二月も終わりに近づいて日が長くなり、明るい西陽が照らす通りを歩く。

年の暮れに腰を痛めてから、朝の寒さがこたえるので、日課の朝の散歩を午後からに変えた。

昔ながらの小売店が並ぶ通りには夕方の買い物に出た主婦の姿が目立つ。

痛む腰をかばいながらゆっくりと歩いているとベビーカーを押す母親とすれちがった。

ベビーカーの中に寝ている赤ちゃんに目がいく。

丸いつぶらな瞳は黒々と濡れて思わず微笑んでしまう。と同時に、我が子が小さかった頃のことが思い浮かんできて過去の自分に引き戻される。

ちょうどこの子ぐらいの頃、夫が夜勤で我が子と二人きりの夜、おむつを替えてすっきりしたのか屈託なくにこにこと笑った顔が忘れられない。

「可愛かったなあ」と独りごちる。


いつの間にか時は流れて、そんな我が子も今年二十歳になった。

そうして自分は五十路に入り、一人夕暮れの道を歩いている。


朝日は生まれて正午に昇天し、やがて日は傾いて沈んでゆく。

人の人生のように。


ふっと短く息を吐き、ヤブツバキが咲く川沿いの道にさしかかる。

未だ柔らかな日が差し込むヤブツバキの茂みから鮮やかな鶯色のメジロがぴょんと飛び出してきて目を奪われた。

昼間の喧騒とは打って変わって静かな夕暮れ時。

それでも様々な出会いがあった。

「私の人生捨てたもんじゃないな」

なんだかこれから先、まだまだ面白くなりそうな予感がしてくすっと笑った私の目の先には大きな西陽がきらきらと輝いていた。


夕暮れ時にふと思い浮かんだ小編です。人生半ば過ぎてもまだまだ明るい未来に乾杯。

石田幸

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