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5 異界入り①

 一日目は天気予報通り晴天で、国産ジーンズ発祥の地だというデニムストリートを観光した。

 名物のデニム色のアイスを食べた写真を穂香がSNSにあげると、由依が行きたがっていた、刀剣博物館まで向かい、楽しんだ。

 現地に到着した時間が遅かった事もあって、博物館を出る頃にはあたりは暗くなっていた。

 六人は予定を切り上げ大人しく民宿に戻る事にした。それでもかなり楽しく、充実した初日だったと思う。

 大地の実家である民宿は、古い日本家屋をリノベーションしているようで、外観の古い様子とは異なり、中はしっかり最新設備の環境が整っていて、過ごしやすくなっている。


「ねぇ、美雨。浜辺で花火したかったんじゃない? 陽翔くんがさ、私らの部屋でゲームしようって言い出したから、できなくなったでしょ」


 夕食後、女子の部屋に集まりカードゲームでひとしきり盛り上がった。

 大地は夜の浜場で、美雨と二人きりになる事を望んでいたのか、初めは不機嫌な様子だったが、最終的には美雨の隣でゲームに熱中し、白熱した戦いが繰り広げられた。

 美雨としても、浜辺で大地と二人きりにならずにすんだので、ある意味助かった事になる。


「あ、ううん。花火は明日無人島でできるからいいよ。そっちの方が、他の人の迷惑にならないだろうし」

「ねぇ、私さぁ……無人島初めてなんだけど、美雨や穂香は行った事ある? やっぱり、大きい虫いっぱいいるよねぇ?」

「でも、由依ちゃん、グランピングじゃなくて、コテージの方に泊まれるから大丈夫じゃない?」


 

 カードゲームが終わり、男子が引き上げると、女子三人は布団の上で、ゴロゴロしながら夜ふかしをしていた。


「そういえば、明日の船はフェリーじゃないんだって。なんか松山くんの親戚の叔父さんが渡舟してくれるらしいよ」

「なんでよ? パンフには送迎があるって書いてるけど?」


 穂香の言葉に、由依はスマホをいじりながら、顔だけをこちらに向けて言った。美雨も、出発前にそれを確認していたので不思議そうに首を傾げる。


「なんかさ、お盆の時期になったら、漁師さんって船を出さないんだって」

「そう言えば、ご先祖様をお迎えするからとか、天候が変わりやすいとか聞いた事あるよ」

「美雨、物知りだね。私がチラッと聞いた話だと、このあたりじゃあお盆に『異界入り』をして、神様や魔物が海を渡ったり、存在しないはずの島が、見えたりするんだって」

「やだぁ、やめてよ。私、怖いの大嫌いなんだからね。馬鹿言ってないでもう早く寝よ。お肌が荒れちゃう」


 穂香が、美雨を怖がらせるように迫ると、由依はふざける二人を、たしなめるようにして叱り、三人はようやく明日のために、就寝した。



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