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4 夏休みの旅行②

 ――――八月十三日。

 

「あっつーー! 夏って感じだねぇ。日焼けどめばっちり塗ってて良かったぁ。美雨、そのワンピ可愛いね。やっぱり私が見立てただけある」

「うん、ありがとう穂香ちゃん。由依ちゃんもそのバッグ、可愛いね」

「でしょ? これ、思い切って買ったんだぁ。お気に入りだから、無人島には持っていかないけどね」


 穂香が眩しそうに太陽を見上げると、美雨はそっと日傘をさしてあげた。

 オフショルダーのトップにショートパンツ、キャップという出で立ちの穂香は、本当にモデルのように脚が長くて、スタイルがいい。

 由依も白のブラウスにフレアスカート、マニキュアもばっちりで、可愛く装いをしていたので、美雨は微笑ましい気分になった。

 旅行の一日目は、陽翔の友人である松山大地の実家である、民宿に泊めてもらう事になっていた。

 初日は観光し、次の日は無人島で貸し切りキャンプで、バーベキューする予定だ。


「穂香ちゃん、有名な観光地ピックアップしたから任せといてよ。デニムストリートとか好きでしょ? この映えるフルーツパフェのお店とか、由依ちゃんの好きそうな刀剣博物館は、樹くんのチョイスだよ。とりあえず俺ら、女子の行きたい所は全部行くつもりなんだ」

 

 現地に到着した瞬間に、陽翔はもう穂香と距離を詰めていた。洋裁が好きな穂香は楽しそうだし、由依は絶賛はまり中の育成イケメンゲームの由来がある博物館があると聞いて、目を輝かせてるので、美雨まで嬉しくなっていた。

 けれど、絶対この夏は恋人を作ろうという男子たちの意気込みが感じられて、美雨は内心複雑だった。

 他の二人はともかく、彼女は勢いで彼氏を作れそうにない。


「あ、あの……望月さん。望月さんは海とか鍾乳洞とか好きなんだよね。俺の地元でも、有名な所があってさ」

「松山くんひさしぶりだね。あ、うん、えと……、その鍾乳洞は遠いから、今日はみんなで浜辺で遊びたいかな。夜とか花火できたらいいね」


 松山大地が、なんとなく苦手なのは彼の視線がいつも無意識に胸にいくのもあるが、あの日、陽翔と放課後に下世話な話題で盛り上がってた相手が大地である。

 彼も根は悪い人ではないだろうと、美雨は思っているがこればかりは生理的に受け付けない。

 さすがに今でも、あんな失礼な事を思っていないだろうが、美雨はあの時の言葉がどうしても脳裏に浮かび、彼と距離を置いてしまう。


「ま、まぁ、あいつらの行きたい場所は固まってるし、浜で遊ぶ方がいいかな。花火かー、夏って感じだね。三日目はこっちで過ごすから、最終日にあの鍾乳洞に見に行く? ライトアップされていて、めちゃくちゃ綺麗なんだよ」

「他のみんながいいなら、最終日に行こうかな。あの、松山くん。ちょっと聞きたいんだけど、この辺りに鍾乳洞の中にある神社とかってある? 海の洞窟っていうか」

「俺、あんまり神社とか詳しくないから、わからないなぁ。親に聞いたら知ってるかもだけど。あっても、内陸の方じゃないかな。海の近くじゃ、そんなの聞かないし。望月さんってもしかして、神社巡りとか好き?」

「ううん。なんとなく気になって。学校でそういうイラストも描いたりもするから」


 変わってるねと言われる前に、美雨はとりつくろうようにして笑った。専門学校にいっている事は、彼も陽翔から聞いているようで、感心したように大地は頷く。


「望月さんすごいなぁ。俺は絵心全然ないから。でもソシャゲしてるから尊敬するよ」


 美雨は、大地の話を聞き流しながら、どうして彼にそんな事を聞いたのか、不思議に思っていた。

 まるで、子供みたいに都会から離れて、ここに来ればあの夢の中の王子様に、出会えるとでも思ったんだろうか。夢は記憶の整理で、自分の理想の具現化にしかすぎない。

 日常でなにか上手くいかないストレスが溜まると、無意識に夢の中へ逃避してるだけだと、彼女は否定する。


(――――でも、胸がざわざわするのはなんでだろう。呼ばれてるような気がする)



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