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38 婚姻①

 あの後、陽翔がどうなったのか。美雨は知る由もなかった。

 人間が集団で生きる限り、そこには掟が存在し、それを破った者は、その場所で生きていくことが難しくなる。小さなコミュニティで秩序を保ち、人間らしい生活を送るためには、彼らに受け入れられなければ、仕方のないことだ。

 美雨は幼なじみのことを、残念に思ったが、陽翔の性格からして、心を入れ替えない限りここで馴染んで生きていくには難しいだろうとも思った。優しい島民たちが住む小嶌でも、例外はないのだろう。彼女もまた、彼が犯そうとした罪を許してはいないし、記憶から消してしまいたい。

 美雨は、彼が島民たちによってきつくお灸をすえられて、本島に戻ったのだろうと思い込もうとした。最悪の結果を考えてしまうと、これから先ずっと後を引いてしまう。

 


「さぁさ、美雨様。ご仕度が整いました。今日はよう晴れて、綺麗なお月様が顔を出しとりますよ」

「本当に綺麗な満月。晴れて良かったな」


 物思いに耽っていると、八重が声をかけてきた。小嶌の夜空は、ネオンの光もなく、空気も澄んでいて、都会では見られない星屑の海が広がっていた。そして、大きな満月が一際(ひときわ)妖艶に輝き、地上を照らしている。

 今宵、美雨は悪樓と夫婦になる誓いを交わすのだ。


「美雨様、とってもお綺麗です。あ、満月じゃなくて……美雨様の方です。本当に白無垢が似合う、綺麗な花嫁さんでとてもお幸せそう」

「ええ、ええ。本当にお綺麗でございますねぇ、美雨様。穴渡神様も大変喜ばれましょう」

「ありがとうございます、妙子ちゃん、八重さん」


 二人の巫女に手伝って貰い、美雨は白無垢を着付けて貰った。髪に島の華を差して貰い綿帽子を被ると、あの夢と全く同じ姿の自分が鏡の前に、写っていた。

 悪樓を愛してしまった今では、夢と同じ姿をした自分を見ても、正夢になったという恐怖感はなく、心の奥がほんのりと嬉しく、温かくなるような、そんな気持ちに包まれていた。

 夢の中では、自分には似合わないと思っていた白無垢の衣装も、素敵に思えて美雨は嬉しくなる。


「さぁさ、美雨様。玄関で村長が待っております。儂ら真秀場村のもんは、今宵は村長以外は外に出られません。身を清めて御神酒を一盃飲み、朝まで眠ります」

「誰も……? それでは行って参ります」


 八重と妙子に連れられ、玄関外で待つ村長の元へいき、二人の巫女に頭を垂れる。

 本当なら両親にここで今まで育ててくれてありがとう、と声をかけるところだろうが、礼を言う相手はいない。それだけは少し淋しく思う美雨だったが、二人の巫女に温かく見送られながら階段を降り、船着き場へ向かった。



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