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25 神楽殿の幻③

 由依は美雨のことは嫌いではないし、良い子だとは思っているが、穂香が彼女を構いすぎるのが気に食わない。どうして、正反対の地味で大人しい美雨と、穂香が親友でいるのだろう。

 なんだか、美雨に自分が理想とする憧れの友だちを、独占されているような気がして、由依は内心、おもしろくなかった。

 それに『来訪祭』で出逢った、イケメンの双子を探し、友人たちから離れて神社を歩いていると、美雨が何かに惹きつけられるかのように森の中に入っていく姿を見た。

 心配になって、彼女の後をつけて行くと、一度は見失ってしまったものの、あの小嶌きっての金持ちで網元の、イケメンの悪樓と抱き合っているのを目撃する。

 二人は熱っぽく視線を交わして、まるで長い間想い合っている恋人同士のように抱き合う姿は、腹が立つほど似合っていた。

 

(――――なんなの、美雨。私が先に狙ってたのに。なんであの子ばっかり特別扱いなのよ? 私の方が可愛いでしょ)


 腹立たしくなって由依は、(きびす)を返すと、二人から離れて、不機嫌なまま、大地たちがいる場所まで引き返してきた。

 由依は昔から、人の物はなんでも良く思えてしまう性格で、他人のファッションを真似したり、過去には、密かに友だちの彼氏を奪って別れさせたりしていた。

 友だちの彼氏を共有したいと言う名の『浮気』をしていたこともある。

 親友で、憧れの存在である穂香が恋している陽翔に対しては、同族嫌悪なのか快く思っていない。

 けれど、この島で一番光り輝くスパダリの悪樓には、由依の興味を引いた。

 そのお気に入りの悪樓が、なぜか美雨に対して過剰なまでに、手厚い保護をしているのも、由依は気に入らなかった。

 あの宴も、なぜか美雨だけがあの行事に参加せず、大きなお屋敷で、贅沢に悪樓と過ごせたのだろう。嫁御寮なんて、謎のニックネームまでつけられてと内心毒づく。


「悪樓さんと? そっか、一緒に神楽殿の方まで、行ってるのかな」


 大地はそういうと、頬を掻く。樹はそれに賛同するように頷いた。


「どこかではぐれても、美雨ちゃんなら島の人が、神楽殿まで連れてきてくれそうだよね。とりあえず、見に行こう」

「ああ、この小嶌には森があるけど、遭難するような山もないようだしね。こんな離島の神楽なんて、なかなか見られない。僕はそういう日本の奇習や伝承が大好きでねぇ」


 穂香の言葉をフォローするように、樹がそう言うと、それに勝己が乗ってくる。彼らはその提案に従って、神楽殿の方へと向かう事にした。

 すでにそこには屋台を畳んだ島民たちも含めて、おそらく全員が集まっている。神楽殿では、厳かで神聖な巫女舞は終わっていて、もう次の演目に移ろうとしていた。

 桟敷は衝立で観客から隔離され、誰もが口にしなかったが、おそらくここに悪樓と美雨がいるのではないだろうかと、ぼんやりと予想していた。

 退屈そうにする陽翔と、由依を除いて他の三人は神秘的な神楽に魅入っている。


「へぇ、神楽って色々あるんだな。叔父さん、これってなんのやつ?」

「うーん。出雲(いずも)流神楽や伊勢(いせ)流神楽じゃないね。この神楽は、小嶌特有の里神楽じゃないかなぁ。それにしても美しい。龍なのか魚なのか分からないが、異種婚を題材にした演目みたいだ」

「イシュコン? 何それ」

「鶴の恩返しとか、雪女の民話みたいに、人間と超自然的な存在が結婚することだよ。神様に嫁ぐ話は、日本でもいろんな地域で伝承として、語り継がれているけれど『嫁入り』という名の生贄にされることが多かったようだ。まぁ、現代ではそんなことはないけどね。でも、神様に愛されるっていうことは、古今東西(ここんとうざい)長生きできないと言われているんだよ」

「神様に……愛されると……」


 大地の質問に、伝承や民話、日本の行事が好きな勝己が答えると、穂香はなにか胸に引っ掛かってざわざわとした。

 上手く言えないが、妙な胸騒ぎがする。


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