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22 十三夜の月の下で②

 月光と、大量の提灯のお陰なのかかろうじて穂香の白い肌が目視できるくらいだ。友人達から離れて、二人きりで話せる場所を探していた陽翔は、裏の参道を見つける。

 陽翔は、辛気臭い神楽なんてなんの興味もなかった。だから、穂香を誘い出し、二人で人気のない森の方へと向かったのだ。良い場所を見つけると、夜空を眺めて彼女と話しながらいちゃついていた。

 陽翔の経験からして、こういうロマンチックな雰囲気に、女は弱い。良い雰囲気になれば彼女は流されて良い思いが出来ると思っていた。ここで、二人が居なくなっても、友人たちは察するだろう。

 

(――――クソッ、なんだってあいつらあんな所でいちゃついてるんだ。美雨のやつ、昨日会ったばかりの男だろうが)

 

 その前に、と用を足しに行った先で、陽翔が見たのは二人の密会だった。

 お互い抱き合い、キスをしている。

 それを見た瞬間、陽翔は怒りがふつふつと込み上げてきた。万年自分に片思いをしていたはずの幼なじみが、他の男に寄り添いキスしている。まるで、裏切られたような気分だ。

 その場から二人が立ち去るまで陽翔は何もできず、立ち尽くしていた。

 陽翔はいちゃつく二人を見た瞬間に、怒りと、嫉妬で感情がごちゃ混ぜになっていた。だから、なかなか戻ってこない陽翔を心配して、こちらに向かってきた穂香を見た瞬間、衝動的に彼女を抱きしめ、キスする。


「陽翔くん」

「穂香ちゃんっ、好きだ」

「陽……翔くん」


 興奮と怒りに任せてそのまま穂香を抱いた。

 美雨とは付き合っていた訳でもない。

 幼なじみだからといっても、美雨が初恋の相手でもない。そういう風には見れないような地味で大人しくつまらない女だった。

 物静かで、一途な金魚のフンのような美雨を、今まで利用することはあっても、内心では疎ましく思っていた。そのはずだったのに。

 自分の手から離れて他の男の元へと飛び立とうとした瞬間、強烈に美雨の存在を意識するとは、思いもしなかっただろう。陽翔の歪んだ愛情(かんじょう)が、美雨への気持ちを自覚させる。


(分からせてやらねぇと。俺のこと好きなんだろ)


 穂香を抱きしめていた陽翔は、感情に任せて思わず小声でボソリと呟く。


「――――雨」

「え?」

「ううん、なんでもない。穂香ちゃん、そろそろ戻ろっか。このままここに居たら、また穂香ちゃんの事を抱きたくなるから。神楽も少しは見ないとな」


 陽翔のにこやかな微笑みに、穂香はほんのり頬を染める。しかし、耳元で美雨と呼ばれたような気がして、穂香は内心モヤモヤしていた。しかし陽翔は、何事もなかったかのように、穂香の腰を優しく抱いたので、おそらくあれは、空耳だろうと結論付けるしかなかった。


(だって……。陽翔くんは、大地くんと美雨が仲良くできるきっかけ作ろうって言ってたじゃない。美雨の事、本当になんとも思ってないよね?)


 ちらりと、陽翔の顔を見ても感情は全く読み取れない。この旅行に来てからずっとそうだ、と穂香は思い、唇を噛んだ。

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