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10 因習の村②

 村人たちに連れられた六人は、いくら田舎の島とはいえずいぶんと古めかしく、まるでタイムスリップしてきたかのような不思議な光景に驚いていた。

 日本家屋が立ち並び、山側に面して青々とした田畑が広がっていて、道の通りには古めかしい看板が立っている。

 道中で、珍しい木製の電柱を発見し、かろうじてこの島にも、電気は通っているらしいということに安堵する。


「すごいな、昭和レトロみたいだ。こんなところがまだ残ってるなんて。SNSで上げたいよね、由依ちゃん」

「樹くん、私も写メ撮ろうかなって思ったんだけど、海水に濡れて完全に壊れちゃったの。写真撮るなら私も一緒に撮りたいなぁ」


 あんなことがあったばかりなのに、先頭にいる二人は、恋人同士のように寄り添っている。

 島から無事に東京に帰れたら、このことについてSNSで語るつもりなのだろうか。

 美雨の身の安全が確認できて、安心したのだろうが、さきほどまであの謎のイケメンについて無邪気にはしゃぎしていたのに、樹とじゃれあう様子の結衣を見ると、穂香は少し苛立ちを感じた。

 大地も、別行動を強いられた不満や美雨を心配して落ち込んでいたが、妖艶な美女の着物の隙間から見える、艷やかな肌色に気を取られている。

 この村の若い世代の男女は端正な顔立ちをしているが、すぐに目移りをする女好きの大地に穂香は内心、悪態をついていた。

 勝己は、スマホは水没を免れたものの、何度も海上保安庁と連絡を試みるが、電波が繋がらないらしい。

 

「美雨、本当に大丈夫かなぁ。さっきの人なんだか妖しくない? ねえ、陽翔くん、心配じゃない? 美雨と幼なじみでしょ」

「ああ、だよね。やっぱ妖しいよ。あいつ男慣れしてないし、心配だな」 


 普段の様子とは異なり、陽翔はどこかあの浜辺に心を置いてきたかのように返事をした。

 陽翔が知る限り、ほとんど自分以外の異性との接点を、持たなかった大人しい美雨が、悪樓という男に抱きかかえられ、自分の目の前から連れ去られてしまった。

 その瞬間に、陽翔は何故か心配よりも男として悔しさを感じたのだ。


「あの、すみません。悪樓(あくる)さんってどういう方なんですか?」


 陽翔が、隣の腰の曲がった七福神の恵比寿さまのような顔をした老人に声をかけると、老人はにっこりと微笑んだ。


「悪樓様は、この小嶌の網元でなぁ。儂ら外界(そと)から来たマレビトたちに、土地を分け与え、真秀場(まほろば)村で不自由なく過ごせるようにして下さる慈悲深い方じゃ。ここは本当にまほろばじゃぞ」


 彼は大地主という立場のようで、村の人たちにとってはカリスマ性のある、人物のようだった。

 ようやく、六人が世話になる屋敷が見えてくると妖艶な美女と、村長と名乗る中年の男が立ち止まる。


「母屋と離れがありますので、どちらでもお好きな方をお使い下さい。お湯は私が沸かしておきますので。お疲れでしょうからごゆるりと、夜までお休み下さい」

「食事の方は、村のもん総出でご馳走を作らせて貰います。マレビトが外界(そと)から来た時は、宴会でお迎えするのが最初の村の習わしになっとりますので、ご参加願います」


 妖艶な美女と村長がそう言うと、彼らの後に続く村人たちが優しく微笑み頭を下げた。

 手厚い待遇と、奇妙な風習に六人はそれぞれ互いの顔を見合わせ頷くしかなかった。


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