Episode.6 ホントの想い
「…俺外の空気吸ってくるわ。」
「……」
その場には最悪な空気が流れている。
最悪だ。私のせいでオワタ怒っちゃって、それでしかも別れるって…ホントに最低だ…。
「ちょ、お前泣くなよ。ワイもごめん。元と言えばワイが打楽器の達人でオワタとお前が付き合ってるの知ってたのに、仲良くしちゃったから…」
「いやいや。総理はいいんだよ。仲良くするのは全然いいよ。それだけで嫉妬した私が悪いから…」
(それだけオワタのこと好きなんやな。そりゃワイ勝てっこないわな)
「…ワイ、ちょっとオワタのところ行ってくるわ。」
「オワタ?お前…」
「なんだよ。総理」
「めちゃくちゃ泣いてるやん。なんで泣いてるんや。やっぱあんな酷いこと言ったの後悔してるんか?」
「…そりゃそうだろ。俺だってあいつのこと大好きだし。ホント俺って最低だわ。いつも素直になれない自分が大っ嫌いだ。」
「まぁ、早く仲直りしていつものイチャイチャ見せてくれよな」
「ありがとな。お前、かのんから俺を引き離して俺を取らなくていいのか?好きなんだろ」
「…好きやで。大好きや。でも、好きな人には幸せになってほしいもんやから…」
「お前も大人になったな。」
(最初は引き離してワイのものにしようと思ったけど、やっぱりワイなんかはダメだ。オワタの隣は絶対あの子じゃないと…!)
~その頃~
「私が…全部悪いんだぁっぁ」
「あぁ泣かないでくださいかのんさん!」
そう言ってかさちは涙をハンカチで拭ってくれた。
「かのんさんは何も悪くないですよ。全部悪いのはアイツなんだから!オワタ!だから泣かないでください。でも泣いてるところも素敵ですね。」
「こんな時に口説こうとしないでよ。かさちのバカ!へへっ。ちょっと落ち着いたよ。ありがとう」
「よかったです!あの…1つかのんさんにお願いがあるんですけどいいですか?」
「ん?なに?いいよ。」
「あ、あのかのんさんが良ければ…その……ぼ、僕と付き合ってほしいです!」
「は?え、え?わ、私と?」
「お、おい弟よ。なにを考えてんだ?」
「…ふーん。お似合いじゃん。俺なんかよりいいんじゃねぇの?」
「オ、オワタ!?戻ってきてたの…?もしかしてその…かさちの告白聞いてた?」
「なんか聞いたら悪かったの?まぁ俺よりかさちくんの方がお似合いってことでじゃあな。」
「お、おい。オワタ仲直りするんじゃ…」
「で、かのんさん早く返事をお願いします!!」
「早く私も付き合いたいって言えよ。もう俺のことは気にすんな。俺たちもう終わりだTheEND」
「そうですよかのんさん!そんな彼女のこと貶すようなゴミクズ男なんかやめといた方がいいです!僕だったらあなたを絶対幸せにできます!」
困惑していた。私はまだオワタのことが好きなのか。それとももう寄り戻したくないって思っているのか。
自分の気持ちが分からない。そんなに曖昧な関係だったか?
「…じゃあな。かのん。」
オワタはそう震えた声で言った。目がうるうるしていた。
違う。曖昧な関係なんかじゃない。
出会ってまだろくに時間も経ってないけどオワタと過ごした毎日は、楽しくて幸せで笑顔で。
辛いことがあっても悲しいことがあってもオワタと話してるとそんな気持ち吹っ飛んで。まるで魔法みたい。
ちゃんと自分の気持ちに素直になるんだ。
やっぱり私は……
「待って!!オワタ!!」
「…なんだよ。」
「ごめん。かさち。君とは付き合えない」
「なんでですか?かのんさんはこのゴミクズ男を選ぶんですか?」
「…私、彼氏いるから。……世界で1番かっこよくて優しい彼氏。いるから!!」
「っ…」
そう言って私はオワタに抱きついた。
泣いててぐしゃぐしゃに顔を見られたくなかったから。
オワタを強く抱き締めた。
「お前、馬鹿なのか…?俺はお前に酷いこと言うような最低な男だぞ。かさちくんの言うようにゴミクズ男だぞ。俺なんかより…」
「うるさい!オワタはゴミクズなんかじゃないよ。元はと言えば私が最初に言い過ぎちゃったから、、。ごめんね。…だから、泣かないで。」
「泣いてねぇよ。お前だって泣いてんじゃねぇか。…俺もごめん。言いすぎたよ。」
「バレてたか。恥ずかしいから見ないでよ。」
「なんで隠すんだよ。弱いところだって見せてよ。大丈夫、俺がその泣きっ面笑顔にさせてやるから。」
「くさいこと言ってんじゃないよ。へへっ」
「ほら笑った。可愛い。」
「…ワイ達は邪魔かもな。先に帰らしてもらおうや。かさち。」
「…納得いかないよお兄ちゃん。」
「ワイだって我慢しとるんや。ずっと。」
「…お兄ちゃんが頑張ってるのは知ってるよ。今より実感したよ。…片思いってこんなに辛いんだね。」
「かさち。好きになるのはいいことや。でも好きな人が幸せになることが1番大事や。それを忘れるな。」
「…うん。」
「おーい。オワタ達。ワイ達ちょっと早く帰らないといけないから帰っとくで。」
「はーい。総理。今日はありがとな。かさちくんもバイバイ」
「2人ともバイバーイ。色々あったけど楽しかったよ」
「かのんさん。また逢える日まで!」
「はいはーい」
「2人だけだね。」
「…うん。今日はごめんね。オワタ」
「かのん。こっち向いて?」
「なに? ……んっ」
「…仲直りのキスだけど。」
「バ、バカァ!!」
「駄目だったか?」
「全然いいし。…その初キスだったから…ビックリしただけ」
「ふーん。ま、俺もファーストキスだよ。」
「…んっ 。急にキスして来ないでよ!馬鹿。」
「これがセカンドキス」
「うっさい!」
~駅~
「じゃあね。また会おうな」
「うん。絶対だよ。あと…大好き。」
「知ってる。俺も」
「俺も?」
「…大好き。じゃあな解散解散!」
今日はあっという間だったな。
どうなることやらって思ってたけど、仲直りできてよかった。
帰りの電車の窓から見える景色は、なんだかいつもより綺麗に見えた。