第8話 ドラゴンの街
俺とドラゴンは焚き火の前で一晩過ごして朝になった。
朝にはもう炎は消えていた。
荷物をしっかり持ってドラゴンに跨る。ドラゴンは羽を大きく広げ羽ばたいた。
怪我が治ったおかげか生き生きとしている気がした。
ドラゴンは高く高く舞い上がる。高層ビルを遥かに凌駕するような高さまで来ると前方の高い山脈も軽々と超えていくことができた。
「おい、あれ!」
山脈を越えると、集落が見えてきた。それに伴いドラゴンは高度を落とした。
「もしかしてあそこが目的地なのか?」
石造りで板葺き屋根の住宅がたくさん建っている。よく見るとたまに倒壊した家や穴の空いた屋根があった。
それに、ドラゴンが街中に溶け込むようにたくさんいた。
「ドラゴンの街?」
ドラゴンは街の入り口に着陸した。俺はドラゴンから降りて、街を覗いた。
街の中では、ドラゴンと人が会話するように共同で石を運んでいたり、ドラゴンに乗って木材を運んでいる人がいる。ドラゴンと人が仲良く暮らす街なのだろうか。
「お前の故郷なのか?」
そばにいたドラゴンはなんの警戒もなく街に進んで行った。俺もその横を歩く。
すると、1人の少女がドラゴンに駆け寄って抱きついた。
感動の再会のようだ。涙目の少女は俺の知らない言語でドラゴンに何かを伝えている。
少女と目が合った。見た目10歳くらいのピンク色の髪の少女は俺に何か言う。しかし聞き取れず言葉を返した。
「その言葉ワカラナイ。アイアムジャパニーズ……」
英語ではないのはわかっていたが、一応できる限りの英語を使った。しかし、伝わるはずもなく少女は不思議そうな目で俺を見た後、俺は手を掴まれた。
少女は俺を街の中に招き入れ、引っ張りながら俺を古い屋敷のような建物の中にまで案内した。
そこには老婆が1人いて、その老婆は座布団に座り、何か作業していた。
老婆は突然の来訪に驚いていたようだが、少女の言葉を聞いて何かを察したような顔をすると、老婆は横にあった引き出しから鍵のようなものを取り出した。
老婆は俺を手招きしたのでついていくと、屋敷を出てすぐそばの祠のようなところまで案内した。持ってきた鍵で錠前を解くと、中に入っていく。中は涼しげで、ツタや苔が生えていた。
緩やかな坂道を降りながら1番奥まで行くと、祭壇のようなものがあり、中央には複数のツノが水晶玉を囲う魔道具のようなものが置いてあった。
老婆は俺の手を軽く持って水晶玉に近づけた。触れと言っているのだろう。
俺は両の手のひらを水晶玉にくっつけた。
すると、水晶玉と俺の手のひらが発光し、そのまま俺を光が包み込んだ。
「どうじゃ。わしの言葉が伝わるか?」
老婆が俺に問いかける。俺の知らない言語で言葉を受け取ったのに脳でその言葉を理解した。
「すごい。何故こんなことが」
「聞きたいことが山ほどあるじゃろう。わしも同じじゃ。ゆっくり上で話をしよう」
俺が老婆と一緒に祠を出ると、ドラゴンと少女が待っていた。
「喋れるようになったの?」
そう聞かれ答えようとしたが少女が喋った訳ではなかった。少年の声が聞こえた。俺はキョロキョロあたりを見回す。
「僕だよ。ドラゴンの僕」
俺がドラゴンの顔を見ると、ドラゴンは微笑んだ。
「お前喋れたんか?!」
「儀式をしたのはお兄さんでしょ?」
俺はいまドラゴンと会話している。頭がこんがらがってきた。
「ほらお前も混乱させるんじゃない。お主はこっちにこい。全部説明してやる」
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名前:辻風 昇
職業:無職
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