第6話 ドラゴンと協力する新しい漁獲方がすごい!
ドラゴンは浅瀬の川に入ると、姿勢を低くして水を浴びた。
ドラゴンにそんな習性があったのか。
俺は記念にビデオカメラで撮影した。
「空を飛んだ時も動画撮っておけばよかったかな……。いや、怪我が治った時、また俺を乗せて飛んでもらおう」
このドラゴンとは仲良くなれる気がする。今度、がある気がしていた。
体の大きいドラゴンが浅瀬の川に入ったので水の流れに歪みが生じていた。そのせいで魚たちがドラゴンを飛び越え川を進もうと跳ねている。異様な光景だ。
ビデオカメラをスタンドに固定しておく。
俺は靴を脱ぎ、袖とズボンの裾を上げて川に入った。
とても冷たくて気持ちが良かった。
ドラゴンの後ろまで来ると俺はドラゴンを飛び越える魚をキャッチした。
新しい漁獲方法を編み出した。
俺はキャッチした魚を川沿いに投げた。
ぴちゃぴちゃと跳ねる魚。
俺は俺の正面に来た魚をキャッチする漁獲法を繰り返した。
「いいぞ! 大漁だ! うわ」
顔に魚が飛んできた。その反動で後ろに倒れ、服がびしょ濡れになった。
俺は滴る水を垂らしながら陸に上がった。
「ひえー疲れた」
代償は被ったが、食料をたくさん確保した。
ドラゴンも川から上がってくる。
「やったな! 大漁だぜ!」
俺はドラゴンに魚の一匹を掲げて見せた。ドラゴンはそれをパクッと丸呑みした。
「おい! 生で食うのかよ!」
俺はそんな勇気ない。お腹を壊してしまう。どうにかして焼きたい。
「ちょっと待っとけ」
俺は近くの林から木の枝と落ち葉を集めた。
「お待たせ。今から人類の知恵を教えてやる」
俺はドラゴンにそういうと、落ち葉を引いて、太い木に細い木を押しつけながら捻る動きを繰り返した。
一度もやったことないがこれで火がつくはずだ。
それを数分間やっていると煙が出てきた。
「お! 来るぞ来るぞ!」
煙がどんどん上がっている。
「いけるいける!」
俺は息を吹きかけた。
「あれ?」
手順はこれであっているはずなのに煙がなくなってしまった。
いい加減手の痛みも耐えられない。
「くそー!」
後少しだったのに。息を吹きかけるのが早かったか。
それを見ていたドラゴンが口から火を吹き、木に火をつけた。
「そんなのあり……?」
随分惨めな姿を見せたが、何はともあれ火がついた。これで魚が焼ける。
「そうだ。これも動画にするか」
俺はカメラをセットして録画を始めた。
「どうもみなさんこんにちは。ノボルチャンネルへようこそ。今日は先程釣った魚を食べていこうと思います! 種類は分かりませんが食べれるでしょう」
俺は拾ってきた枝を30センチほどの大きさの魚に突き刺した。
「焼いていきましょう。この火は、僕とこのドラゴンで一緒につけました」
俺は手に持った魚の突き刺さった二本の棒を火に近づけた。
「これを地面に刺して、っと。これで焼けますね」
俺は焚き火の周りに棒を刺した魚を並べて地面に突き刺していく。これで効率的に魚が焼ける。
「いい感じですね。これで細菌とか寄生虫の心配はなくなるのかな。多分食べれると思います」
焦げ目がいい感じについたところで、俺は焼くのをやめて、棒を火から離した。全部で10匹ほどの焼き魚ができた。
俺はドラゴンに一つ焼き魚を与えた。そして俺も焼き魚を手に持った。
「いただきまーす!」
俺とドラゴンは焼き魚に齧り付いた。
焼き加減は絶妙で、昨日からちゃんと食事をしてないこともあってか塩などの調味料もないのに最高の美味しさだった。
あっという間に一本食べ終えると、休みなく二本目を食べ始めた。
ドラゴンにももう一本渡した。
「とても美味しいです。歯ごたえのある身で、感動さえしてしまうほどです」
なぜだろう。今まで動画で食レポする時は、地味な言葉で変わり映えのないことばかり言っていたが、今回は違った。心の底から美味しいと思って言葉を綴った。前のようなただ動画のためにやっているというわけではなく、このどこかもわからないこの場所の死に際でこうやって動画を撮っているからこそ、動画としての言葉遣い、語彙が生まれてきた気がする。
はっきり言って今までの動画作りは底辺そのものだったかもしれない。
しかし、ここなら。ここなら俺は、YouTuberとしての才能が開花する気がする。
俺とドラゴンは魚を全部食べ切った。俺はもう満腹で地面に寝転がっている。
空は綺麗なオレンジ色の夕陽に染まり、夕暮れを知らせていた。
ドラゴンは焚き火の前で寝そべった。
「今日はここで一晩越すか」
ドラゴンも動く気はなさそうだ。
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名前:辻風 昇
職業:無職
チャンネル名:ノボルチャンネル
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コメント:105「底辺YouTuberが突然この動画出してんの現実味あって怖い」