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予言の少女

作者: 小野遠里

  その印を持つ者は世界を破滅から救う

           ー予言の書


 エルド山の山頂に四十過ぎくらいの醜い魔術師カイルと二十歳前の美しい娘ニクスがいて、高い塀に囲まれた要塞都市ミリダントを遥かに見ていた

「世界を滅ぼしてやる。手始めはあの街だ」

 とカイルが言い

「なんでよ? やめてよ」

 ニクスが答えた

 カイルはミリダントの街を睨んでいる

「お前があの街の唐変木と結婚したいなんて言いだすからだ」

「父親なら、娘の結婚を素直に祝いなさいよ」

「私は父親なんかじゃない。お前の婚約者だ」

「誰が婚約者よ。おとうさんには感謝してます。愛してるよ、おとうさん」

「お父さんじゃない!

 今日からはあなたと呼べ

 私が結婚を申し込んだら、お前はイエスと答えただろう

 よもや、忘れたとは言わせない」

「十年も前のことなんか、もう忘れたわよ。あたしまだ八つだったもの

 戦火の街、身寄りもなく、殺されかかってたあたしを救い出して、今まで何不自由なく育ててくれたことには感謝してます。いいお父さんだわ。でも、婚約なんか知らない」

 カイルの目が遠くを見るようにぼんやりとする

「あの日、追い詰められたお前を見て、なんて可愛いんだろう、大人になればさぞ美人になるだろうと思い、プロポーズしたんだ。お前ははっきりイエスと言ったぞ」

 ニクスは額の少し上あたりに掌をおいて

「兵隊の剣先がこの辺まできてたわ。おとうさんは魔法でその剣の動きを止めて、結婚するなら、助けてやろうと言ったわ。ノーって言ったら頭が二つになってたもの。誰が断れるものですか。そんな約束は無効だわ」

「婚約は神聖なものなのだ。破棄なんぞ許されん」

 ニクスが愛と美の神の星を見る

「この間、街のヴェンに結婚を申し込まれたの。若くてハンサムなの。あたし、ヴェンの家に嫁入りするつもり」

 カイルがせせら笑う

「不可能だ。お前が嫁入りする頃には、あの街は焼け野原の廃墟になってる。誰も生き残っていないだろう」

「なぜそんな酷いことを言えるの」

「お前を愛しているからだ。全世界を滅ぼして、私とお前だけの世界にしてやる。そうなれば、お前にもう選択の余地はないのだ、ははは」

 と取って付けたように笑った

「酷い人。大魔王みたいだわ。自分の事しか考えないのね。自分の邪な欲望の為なら世界を滅ぼしたって構わないと云うのね」

「そうだ。愛の為なのだ。この世には愛に勝るものなどないのだ。私は愛の為なら世界も滅ぼす。対して、お前ときたら、自分の我儘の為に世界が滅んでもなんとも思わないんだろ。なんて身勝手な女なんだ」

「な、なにが身勝手よ。なにが!」

「だってそうだろう?」

 ニクスが言葉に詰まる。確かに自分が犠牲になれば世界は救われるのだ。彼がこれほど力のある魔法使いでなければ別の選択もあっただろうが、彼が強力な魔法使いでなければ自分はあの時に死んでいただろう。それに優しく面倒見のいい男なのだ。父として見る分にはいい奴なのである

 欠点といえば、貧相で小柄でとんでもなく醜い顔くらいだ

「わかったわよ。今夜からはとうさんと寝る」

 カイルが嬉しげに頷く

「うむ。よかった。私も嬉しい。ただ、言い方がちと露骨な」

「だって、寝る以外の事は今までもやってるもの」

「そんな事はない、キスしたり、一緒に風呂に入ったり、夫婦になれば色々あるのだぞ」

 カイルが幸せそうに言った


 その夜、カイルのベッドに裸で横たわったニクス

 カイルに口づけされながら

「ひとつお願いがあるの」

「うん。なにかな?」

「ええ、あたしに魔法をかけて、とうさんの顔が若くてハンサムに見えるようにして欲しいんですけど」

「なんだと!」

 カイルが嫌そうに言う

「あっ、別にいいのよ。目を瞑っていれば済む事だから」

 ニクスが目を閉じる

「代わりに、性の魔法をかけてやろうか? 滅茶苦茶に感じて絶頂を極められるぞ」

「いい。その内に考えてみる。今日は普通にやって」

「そうか、しかし、あの頃は、胸もぺったんこだったし、毛も生えてなかった」

 と、カイルは昔を思い出しつつ、ニクスの身体を舐め回す

「おとうさん、やらしい」

「おとうさんはやめろって。あなたと呼べ。カイルでもいいが」

「なんかねえ。でもいいわ。好きにして。今夜から夫婦だからね。浮気したり、世界を滅ぼしたりしたら駄目だよ」

「勿論だ。今夜をどれほど待ったことか」

「子供だったあたしをそんな目で見ていたのね」

「いや・・・」

 言いながら、優しく愛撫する、顔に似合わない優しさなのだ

 ニクスは目を固く閉じたままだ、現実とは別のイメージを頭の中に浮かべている

「いくぞ」

「いいよ」

 ・・・・・・・・・

 ナニの先をニクスの唇に当てたまま動かない

「どうしたの?」

「いや、長年の思いがやっと叶うのかと思うと、あっさり突っ込むのもなんかなあ、と」

 ニクスは少し喘ぎながら

「もう! ばかばっかり」

「わかった。いくぞ」

「うん」

 カイルが腰に力を入れる

「あゝ、あゝ」

 ニクスが喘ぎつつ、イメージを構築して、感情を高める

 違う名を呼んでしまいそうなのを我慢しつつ、やがて絶頂に達した


 朝、カイルが目覚めると、パンを焼くいい匂いがしていた

 台所でニクスが歌いながら朝食の用意をしている

「おはよう、機嫌が良さそうだな」

「新妻だからね」

 カイルが唇を寄せるとニクスが目を閉じる

 軽いキス

「なぜ、女はキスしようとすると目を閉じるのかな?」

 それは見たくないものを見ない為よ、とは答えなかった

 テーブルに朝食を並べる

「横に座っても、いい?」

「勿論だとも」

 ニクスは、折角の新妻気分が削がれないように、なるべくカイルが目に入らないようにしている

「なあ、お前の乳房の横に、なにか、マークのようなものがあったなあ。見せてくれるか」

 朝食の後でカイルがきいた

「朝ぱらからやらしいわね」

 とニクスが笑う

「いや、学術的興味だ」

「まあいいわ。新婚だものね。全部脱ぐ?」

「上だけでいいよ」

「そう」

 とシャツを脱いで、ブラを外すと、乳房の横あたりに鴉の羽根をペケ字型に合わせたような印が見えた。皮膚の下で微かに黒光りしている

「なにかで見た記憶があるな」

「そうなの? あまり気にしてなかったけど」

「調べてみよう」

 と図書室から古びて大きな本を持って来てページを捲る

「あった。なんだこれは、凄いことを書いてあるぞ

 その印のある者は、世界を破滅から救うとある」

「うわっ、あたしって凄いんだ」

 ニクスが本の印と自分の印を見較べ乍ら言った

「お前、本当は何か凄い能力を秘めているのか?」

「まさか」

 とニクスは笑い

 思った

 あなたが悪い事にその馬鹿っ強い魔力を使わないようにしてるって、あなたに抱かれる事で世界を救ってるんだわ

 言わば、内助の功かな

 いいわ、諦めた、あなたを愛するように努力する


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