第九夜 じゃぁ、無理ですね 俺、料亭いったら食って呑みたいから
おっさん、安来へ
振り子電車に揺られて、安来到着
ここから、パーツ代やらボディ補強のお金を集めるために
おっさん達には妖怪になってもらいます
車両作るのにはお金がかかるんです
妖怪となって、25につぎ込むお金を工面していきます
火曜日の午後、有給なのに事務所に顔出して
電車のチケット受け取りに行くおっさん
課長に一緒に行きましょうと、話したら
「断る」と一言で終わった
ただ、社長が現れて「粗相の無いように」とだけ言って去っていった
既に粗相だらけなんだが
常務(若)を探したが、居ない どうやら本気で胃が痛いらしい
今回も一人で出張かよ
まぁ、裏があると言うか、裏しかない出張だからなぁ
今回はチケットを営業が手配してくれてるし、指定席だわ優遇されてるな
前泊後泊の2泊とはなぁ
しかし宿の案内がない
現地に突いたら営業に訊いてみよう
振り子電車に乗り、安来駅に降り立つおっさん
改札を出て、待っているはずの営業を探す
「おっさん、こっちこっち」と営業とは違う声
伊藤鉄鋼の社長自ら迎えに来ていた
「これは社長自らいたみいります、それでうちの営業はどこに」
「帰った」
「はぁ?」
「と言うか帰した、裏しかない出張に巻き込んだら悪いし」
「俺は良いんですか」
回答がない
「とりあえず、車に乗りなよ 宿まで乗せてく
いやぁ、おっさんが俺の顔立ててくれて有難かったよ
それで、誰が来るの」
「社長、それ聞いてないんですか
今日一緒に晩飯食うんですよ」
「それは聞いてる、俺の一番の料理屋を紹介して秘書さんからOK貰ってるし」
「誰の秘書って聞いてますか」
回答がない
「今日の相手は、絶対引けない相手なので、何があっても
社長は口は出さず見守ってて下さい」
「おっさん、誰なの」
「引いたらの呑まれる、妖怪ですよ」
黙り込む社長
「おっさんさぁ、ホントに23?」
ここでも訊かれる
「去年とガラッと変わったよね、先月会ってびっくりしたもん」
「男子三日会わずば、別人と思え ですよ」
と剣道の先生に習った、故事で答えるおっさん
結構なホテルの車寄せに社長の車が停まる
「社長、このホテルだと、俺出張旅費で足が出そうなんですが」
「三崎工業の秘書室が抑えて、そっち払だからと連絡があった
フロントでそう言えばいいらしい
三崎工業の偉い人が来るの? そもそもなんでおっさんなの?」
うわぁ、そんなトコも巻き込んで
これで、妖怪の正体が山崎土木の会長って知ったら
社長に急用が出来るな、黙っとこっと
社長と一緒にフロントに行きチェックイン
荷物を部屋に置きに行き、ロビーで社長と二人でタバコを吸う
「なんか飲み物注文してくるわ、コーヒーでいいだろ」と耐えきれない社長
「じゃ、1147の部屋番でお願いします」
「え、11階」
「ごつい部屋でしたよ」
そして、ハイヤーが迎えにくいる
エレベーターから降りてくるキレイなお姉さんと妖怪爺
「こんばんは、日曜日ぶりですね」
「こんなに早く、おっさんと一献できるとは怪我の功名じゃ」
「お姉さん、スケジュール調整大変だったんじゃ」
そっちの都合に合わせろって言ったのは貴方でしょ と言いたげなお姉さん
「なんとかしました」
「ほんと爺さんの我儘で」
ここでも責任は投げ出すおっさん
「まぁ、頑張ってくれたでの、こっちの社長の美味しいものは
別の部屋でゆっくり食べてもらう
儂らと一緒じゃ味気なかろうて」
「僕もそっちの部屋が良いんですけど」
と、ここで社長が入ってきて
「主賓と別の部屋っていかんでしょ」
「最高じゃわ、川崎の爺さんが褒めとったぞ
諦めて、爺と一緒に食え」
美人秘書を連れた、謎の爺さん
社長は混乱しっぱなし
「じゃ行きましょうか」とおっさん
社長がおっさんに名刺交換もしてないしと耳打ちをする
「名刺交換はしないほうが、今後のためと言うか
飯食うのに、名刺はいらんでしょ」
「そうか、社長に挨拶してなかったな。山崎の爺じゃ 世話になる」
「伊藤鉄鋼の社長をしております伊藤と申します」
挨拶しながら、???で一杯な社長
4人なのにハイヤーが2台
秘書のお姉さんと社長
妖怪爺とおっさんの組み合わせでハイヤーに乗り込む
社長今頃秘書のお姉さんと名刺交換してるんだろうなぁ
「どっちに転ぶかなぁ」
「なにがじゃ?」
「社長が秘書さんと名刺交換して、爺さんの正体を知ったら
俺みたいに肚を決めて爺さんか、秘書さんと飯を食うのかと」
「あの社長は最初から、秘書との部屋だぞ」
「え、それはずるい」
「今日はどうしても良平の件で、頼みがあっての
余人を挟まない話がしたくての
それにおっさんも月曜日には、良平の件だったら
出汁になりますと言っておったしな」
「はぁ、確かに言いました」
と、料理店と言うか料理旅館と呼んだほうが良い所に車が停まる
社長と秘書のお姉さんの案内で、爺さんとおっさんは部屋に入る
と、下座に座ろうとする爺さん
「ちょっと、それはいくらなんでも」
「良平の時は上座だったんじゃろ、頼みごとをするほうが下座じゃ」
ド正論で返され、諦めて上座に座るおっさん
料理が出始め、酒も銚子で出てくる
「最初の注ぎは若い方から、席は譲ったのでこれは受けて下さい」
「おっさんと話してると23だったか、とてもそうは見えん
女将も川崎の爺も同じ意見じゃ」
正解、中身は異世界の50代ですwww
「川崎の爺なんか、連れだして呑む予定が、呑まれて帰ったとか」
「なんか、俺のこと妖怪扱いしてません?」
「川崎の爺はそう言っとった」
「妖怪爺に妖怪と言われる23かぁ」
「その妖怪なところでな、まあ呑め」と銚子を差し出す
盃で受けながら「妖怪は止めて、人徳のある若造にまかりませんか」
「無理だな、良平に妖怪が付いた と川崎の爺と女将が吹いて回っておる」
「なんすかそれ」
「良平はここ5年ほどこういった席に出ておらん
昔は爺の集まりに来ておったがの
来なくなってな、皆で心配してはや5年だ
それが、突然 名刺を断る 肩書不要 なおっさんが現たから
料亭の予約を寄越せ、爺さんたちには今から電話で謝る
後日、謝罪の行脚もする だったからな
昔から上座にしか座らんかった良平が下座の隅で
ニコニコしてるとか妖怪に呑まれたとしか思えんと
女将が儂の所に電話しくる始末じゃ」
「じゃ、二年の約束は守って下さい
僕らの財力と車じゃ2年戦うのがやっとですから
その間は自由にさせてあげて下さい」
「財力的には良平が」
言い終わる前に「それはダメです、分をわきまえてますから」
「キッパリ言いおるのう」
「その約束で、良平さんの参加を皆で受け入れたのですから
約束は守らないと」
「金では釣れんと」
「金で動くようなやつを、ご希望で?」
「いらんわな」
「それで、下座に座ってまでの頼みごととは」
「一年、いや半年でも良い 良平に妖怪が付いてやってくれんか」
「妖怪ではなく23の若造が付いてますが」
「妖怪呼ばわりはダメか」
「流石に面と向かっては嫌ですね、影で言われる分には構いませんが」
「では、おっさん 頼む 半年でもおっさんが付いておれば
良平は劇的に変わる 会社も任せられる」
「そんな、大層なもんでもないですよ」
「もう一つ」
「ハイハイ、なんでも出来ることであれば」
「来週と再来週の週末に例の料亭で宴席がある
来週のはうちの会社や取引先の重鎮じゃ
そこに良平を送り込んで欲しい
で、おっさんが後ろで控えでいて欲しい
再来週のは、こないだの宴席のやり直しじゃ
こっちは良平と一緒に飲み食いしてくれればいい」
「来週のって、俺が行く意味が見えませんが」
「見えん者には見えんだろうが、見えるものには見える」
「また、妖怪扱いしてませんか?」
「川崎の爺がそう言ってしまったからな
話は終わりだ、綺麗どころを呼ぶから呑んで食え」
部屋の電話とり、話し始める爺さん
「ひとつ訊いときますが、控えってなんですか?」
「主人の後で、無言・無食で見守り
なにかあったら盾にも鉾にもなる それが控えじゃ」
それを聞いた瞬間、機嫌が悪くなりダダ漏れなおっさん
「じゃぁ、無理ですね 俺、料亭いったら食って呑みたいから」
ちょっと、考える爺さん
「それで、押し切れるのか」
「押し切ればいいんでしょ」
元々の憑依する前でも結構なレベルの力を持っていたが
胆力のみで乗り切ってきていたおっさん
ここに来ての爆発的な力の上昇を感じているので行くと決めた
爺さんの顔色が変わり
「判った、訂正する 条件は後に座ることのみ
それ以外はおっさんの判断に任す」
そうこうしている内に綺麗どころの芸者さんが現れる
「ささ、どうぞ」とか始まり機嫌が直り、盃を進める
翌日、ホテルに伊藤社長が迎えに来る
客先の社長が迎えに来なくてもとも思うが
「おはよう、おっさん おっさんって何者?」
「普通の23の若造ですよ」
「それはない、あの秘書さん山崎土木の会長秘書だった」
「今日の予定はどうします?」と話を変えるおっさん
「最近、おっさんの会社、おっさん銘柄は調子いいし、問題ないんだよな
だから、夕方まで、おっさんやることがない」
「え、夕方からなんかあるんですか、聞いてませんよ」
「俺だって、さっき聞いたんだよ
なんでも、三崎工業の秘書室の人が言うには
3人ほど面会希望者が居るから、夕食を案内して下さい と」
どう考えても爺の旧知 再来週には会えるんだから待ってろと
まぁ、夕方からなら出雲大社に行けそうだ
「社長、出雲大社に行きませんか
弊社の製品が調子の良いののお礼にお参りに」
「いいね、時間あるし、連れてくわ」
と、フロントのお姉さんが
「1147号室のおっさん様、お電話です」
と呼びに来る
顔覚えられたって、あのごつい部屋にこの若造だしな
「もしもし、おっさんですが」
「あーでたでた間に合った、儂ら3人が空港に居て今から飛ぶ所だ
昼には、そっちに着く」
「夕方からと聞きましたが」
「川崎の爺と会って、昨夜は山崎の爺と呑んだらしいと聞いてな
で、川崎の爺が呑まれたと聞いては待てん」
あーー爺さんてせっかちだな
「で、何処の空港に」
「米子空港 11時着だ」
「三人だけですか 旧知で残は居ませんよね」
「そうじゃ、5人の仲間でな おっさんもそうじゃろ」
「米子空港からの足はどうします」
「タクシーを借り切っておるから心配無用」
「とりあえず11時に米子空港の到着ロビーに居ますから
見つけて下さい 見つけれなければそれまでで」
「川崎の爺の言った通り反応だわ、期待して待っとれ」
と電話が切れる
「社長 11時に米子空港到着ロビーでお願いいします
向こうの3人が俺を見つれれば、そのまま接待
見つけれなければ、社長の奢りで二人で魚」
「いいのか、こっちから探さなくて」
「いいんですよ、会いたいじゃなくて
見たいって言ってるんですから、見つけれなければそれまでで
了解はとりました」
「三崎工業さん関係でそんな無茶な事は」
「大丈夫、見つけれられないのは3人が悪いといい切りますから」
「おっさん、やっぱ何者? 23の若造には見えんよ」
「じゃ、コーヒーでも飲んで、米子空港に行きましょう
コーヒー飲む時間ありますよね」
と軽く無視して米子空港に向け移動する、おっさんと伊藤社長
到着ロビーの片隅に壁に背中を預け立つおっさん
時間は10時50分 先程名古屋からの便は到着して
ロビーに人が溢れ出す
出雲大社行きを潰されて怒りのオーラが出でてるな
もう少しやってみよう と異世界感バリだしで
オーラをだしてる気分になるおっさん
「あー居た居た、あれだよ、間違いない」
「ちょっと儂、ちびるかも」
「川崎が呑まれたの解る」
とか言いながら、爺さんの三人組が寄ってくる
「ようこそ、妖怪爺さん三人組様 お目当てのおっさん御座います」
と、深々とお辞儀をして迎えるおっさん
「あかん、儂ちょっとトイレ」と一人離脱
「儂も」と二人目の離脱
もうちょっとオーラ出んかな とやってみる
「申し訳ない、儂もトイレに」これで三人とも離脱
やってみるもんだな、見える人には見えるんだ
「おい、川崎が呑まれたって、あいつは話は出来たんだよな」
「弓月と一条がトイレに行ってからが凄まじかった まさしく妖怪」
「剣崎 そんなにか」
「だから儂も逃げてきた」
「ひっどいですねぇ、ピチピチの若者を捕まえて妖怪とか」
とトイレに現れるおっさん オーラは小さくと意識している
オーラ全開で言うのとオーラ最小とで迷ったが最少を選択したおっさん
「ひぃ」
「ひぃ ってまるで妖怪に会ったみたいな」
「おっさんと名乗られたのに、自己紹介も出来ず申し訳ない
私が剣崎 こっちが弓月 こっちが一条 よろしく頼む」
「トイレが済まされたのなら出ましょう」
「そうだな、弓月・一条、大丈夫か」
「今ならなんとか」「儂もなんとか」
「じゃ、荷物をピックアップしてお昼食べに米子市内の美味しいお店に行きましょう」
何事もなかったかのように、アテンドするおっさん
そして店に入るも飲み物しか注文しない爺トリオ
「ここ魚が美味しいんんですよ、食べましょうよ」
「申し訳ない、飲み物で精一杯だ」と剣崎さんが答える
「じゃ、私は頂きますよ すいませーーん、これとこれお願いします」
と、飲み物すら喉を通らない二人を前にして、ガツガツ食うおっさん
「悪戯されたでしょう」と剣崎さん
え、そっちが敬語
と伊藤社長と顔を見合わせるおっさん
「やっぱおっさん何者」と言われ、それ何回目と返すおっさん
「おっさんと宴席したって、山崎も化け物だな」と弓月さん
「川崎が呑まれたって、耄碌したかと思ったが儂会話すら出来んかった」と一条さん
「山崎ンとこの婿も激怒中のおっさんの前で立ってたらしい」と変な情報を流す剣崎さん
「ええ婿貰っとるな」と残り二人
「えーーと、私、妖怪か何かでしょうか?」
「其の物だよ」と三爺がハモる
「で、どうされます? 私と同席では食事も出来ないのならここまでで解散ですか」
「いやいや、三崎工業さんの手前、そう言う訳には」
「でも、食事も出来ないんですよ、気の毒で 社長がアテンド 俺離脱 で」
「それも違うと思うが、そもそもおっさんに会いに来たんだし」
「そこ、根本から間違ってます 会いにじゃなくて見に来た もう見たでしょ」
と、伊藤社長とおっさんが話しても埒が明かないし
三爺は、時々固まって会話すら停まる
「じゃ、ちょっと外でタバコ吸ってきますから」と伊藤社長と連れ立って出ていくおっさん
一「どうする、本物だよ それも化け物級」
弓「どうもこうも」
剣「今くらいに抑えてもらえれば、食事くらいは」
一「抑えてもらえばって、あそこから更にか」
剣「トイレで言ったし、悪戯で儂ら三人がトイレ離脱だ」
一「儂は持たん」
タバコを吸いながらオーラを消すができないかやって見るおっさん
お、こんなもんか
オーラを消し、店内に戻るおっさん
席に着き「こんなもんで、どうでしょうか」
「おっさん ですよね」
「そうですよ 23才のピチピチの若造の」
「消せるんですか」と三爺がハモる
「今練習したら消せましたよ、これなら食事くらいは出来ますよね」
「そんな事が・・・」と三爺が呟くと
「こう言うのも」とオーラ中まで出してみる
完全に固まる三爺
再びオーラを消してみる
「自由自在ですか」と剣崎さん
「悪戯で、先程のような全開とかされないとお約束を頂きたい」と剣崎さん
「え、全開はしてませんけど」
「え」と固まる三爺
「まぁ、夕食までになんとかしますよ 伊藤社長の美味しい店で
三爺を接待 との業務命令ですから」と暗黒笑顔なおっさん
オーラを全て消し、ついでに気配も消し、にこやかに微笑んだはずが
「あかん、無理」「儂も」と一条さんと弓月さんが離脱を宣言
抑の所で、昼間空いているなら出雲大社に行きたかったおっさん
それを潰されて、機嫌が悪い
その機嫌の悪さを押し殺しての暗黒笑顔
「笑顔が怖いって言われてるぞ」と伊藤社長がおっさんに畳み掛ける
判ってるわと思いながら無視して
「剣崎さんはどうされます」
「儂と山崎は昔から同格 ここで引くわけには行きません
一献お願いしたい」
「じゃ、伊藤社長が弓月さんと一条さん 私と剣崎さんの組でいいですか
あとなんかあると伊藤社長に迷惑がかかるので三崎工業さんには
三爺の方から、連絡を入れて頂きたく」
と、いつもどおり、仕切りをやってる入社2年目の中身異世界の50代
「一度ホテルま行きましょうか、汗もかかれてるみたいだし」
と、ホテルまで行くことにしたおっさん
おっさんと別れて貸し切りのタクシーの中で三爺密談
「あんな化け物とは聞いてないぞ」
「気配まで消しての、笑顔なんか死ぬほど怖かったぞ」
「どうするんだよ再来週宴席があって来るんだろ」
散々な言われようのおっさん
どうも、異世界転移した時点で妖怪の素養を得て居たようです
練習したら出来たとレベルアップ中のおっさん
妖怪爺共との対決はおっさんの勝利確実です
今宵も夜が深くなったようで、また




