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第六夜 すっげえ、地味ですよ

おっさんの爆弾発言から一夜が明け練習会当日

山崎土木の駐車場に集まった6人

さてどうなることやら

料亭で朝食を って違和感が全開で仕事をしている4人

神田は、違和感すら仕事をしなくなり、黙々と食っている

ニッコニコな山崎さん

「いやぁ、楽しみだなぁ」の発言に


加藤が「すっげえ、地味ですよ」と返す

加藤は地方戦を追いかけてたし、マーシャルも経験者

佐々木・栗原は一種のJAF戦のマーシャルの経験者


おっさんは2種でマーシャル経験者

コース引きがいかに地味かも知っているし

走るのは結果確認であり、地味なインスペクションが勝敗を決める

との感覚を共有できているのだ


サーキットの予想タイムとイメトレのタイムの合致が

いかに難しいか、出来るようならば、合致するならば

タイムは詰めれる がおっさん達の共通認識なのだ


ダートラやジムカーナなどの一回限りのコースなら

なおさらインスペクションが大事になる


朝食を食い終わり、女将さん初め仲居さんに見送られ

ハイヤーに乗り込む6人

今度はおっさん・神田・山崎さんの組と

栗原・佐々木・加藤組に分かれて乗車


ドアが閉まると同時に、佐々木が

「いやぁ、昨夜は加藤のおかげでホント助かったわ」

「俺なんかしたか」と自覚のない加藤

「そこが加藤良い処」と栗原


またしても、助手席に速攻で座る山崎さん

神田は意識が朦朧としている

「地味ですよって、言われましたが、25で走るんですよね」

「走るまでが肝要です、タイムは答え合わせです

 加藤がコース引きなので半分は歩きですよ」とおっさん


「え、そんなに」

「そうです、山崎さんがお客さんなら、コース引いて

 走らせて、パチパチですが、イナゴも手伝ってくれるんですよね

 なら、キッチリといかないと」


「と言うことは、仲間として扱ってもらえると」

「もう、扱わないといけないかな」

「それは嬉しい話ですね」

「なら、キッチリ行かせてもらいます」


「おっさん、ちょっとは俺の会社人生を・・」と意識が朦朧としながら神田が言う

「諦めろ、昨夜のイナゴの話を聞いて、尚乗ってきたんだ 沼に沈んでもらう」

「沼ですか」

「そう沼です、果てしないセットとインスペの繰り返し」


山崎土木の本社、車寄せに降り立つ6人

駐車場に加藤のTE71とおっさんの25の2台で移動する

300m四方の駐車場に嘘偽りはなく、しかも休出の車は

本社前に並べるとかの、さすが一族経営の力技


「これで、見合いが決まりましたね」と山崎さん

4人は「はっ!!なに???」となる

神田は意識が飛んだ

「どういう事ですか?」とおっさん


「簡単な話ですよ、今日の駐車場を開けるのに

 爺さんの持ってくる見合いを受けるのが条件だったんです

 釣書は見てたんですが綺麗な女性ですが

 踏ん切りが付かなくて」


神田が座り込む

「それで、昨夜の料亭の女将さんが結婚云々と」佐々木が言うと

「どこかで決めないといけませんから」とあっさり言う山崎さん


「いや、こんな俺達の遊びに付き合って結婚決めるとか」とおっさん

「でも、インスペクションとやらで歩きが半分

 加藤さんのコース引きで、キッチリ沼に連れて行くと

 仰てましたよね、おっさん

 ねぇ、神田くんも聞きましたよね」


「ハイ、言いました 加藤、コース引き頼むぞ」

と、完全に開き直るおっさん つられてマーシャルの顔になる3人


加「とりあえず、スタートアンドゴールで良いよな」

佐「フラットだし、障害物ないしな」

お「ゴール後の直線は100mは要るな」

加「ゴール手前で360度入れるから50mで行ける」

フェンスから、歩測でスタートアンドゴールの位置を決めていく

クッソ地味な作業が始まる

昨夜のうちにコース図を用意していた加藤 流石だ


歩いて歩測して、パイロン置いて、また歩いて歩測してパイロン置いて

山崎さんも仲間なので、強制的に歩かされる

おっさん達が、ここでサイド引いてとか、フェイントで曲がれるとか

加藤のコースに注文を入れていく


コース引きに1時間掛かったが、まぁ良いコースだと加藤が言う

「山崎さん、コース頭に入ってますか」とおっさん

返答がない


加藤が、パイロンの位置とコースを書いた紙を再度見せる

その紙を渡して「トライするわ」と加藤が71のエンジンを掛ける

暖気後、パイロンの間を偶にサイドを引きながら廻る加藤

駆動系の暖気も終わり佐々木が誘導してスタートラインの手前に加藤の71が着く

「どっちでいく?」

「ジャストスタートで」

「OK じゃスタートラインに付けるわ」と佐々木が誘導

完全に置いていかれた山崎さん 顎が落ちてる


おっさんが、スタートラインのパイロンの横に立ち

ストップウオッチを握る

そして、五秒前からカウントダウン

全開で飛び出してく加藤

フェイントで車を振って、ノンスリで曲げながらの三角

180度はサイドでまわり、ゴール前の360度を熟し

1分23秒

予測タイムが1分15秒 8秒落ち

2本目 1分14秒 さすが加藤だ


お「おまえ、天才だな」

加「任しといて」

佐「任せた」

栗「ところでさ、山崎さんがあっちでしゃがみこんでるんだが」

お「神田は?」

栗「もっと向こうで倒れてる」

佐「どうする?」

お「どうするたってコースを覚えてもらわんことには

  走らせれないし、連れてこよう」


むりくりに、強制的に4人に連れられてのインスペクション

ここでフェイント入れて、ここでサイド引いて

ココは全開で、ココがフルブレーキでと丁寧に加藤が説明していくが


30分後、どうにも埒が明かない

「一度、隣に乗せて走ってみるか」と加藤が言う

「71は助手席もバケット?」

「そう、4点もサベルト」

「金持ちいぃ」


ということになり加藤の71の助手席に座る山崎さん

「抑えていけよ、2分のペース良い」とおっさん

「あかん、それだとタイミング取れん 1分30秒」と返される

で、佐々木の誘導でスタートラインに着け

おっさんのカウントダウンでスタートしていく加藤71


ゴール後、真っ青な顔をして71を降りる山崎さん

まぁ、初めて加藤の隣に乗って吐かないだけマシだなと

4人で言っていたら、吐いた

ちょっと、飲み物買ってくると加藤が言うが


おっさんが、25の後部座席から水筒を出す

「朝、女将さんに用意してもらったお茶がある」

「流石おっさん、この手の準備は抜かり無いな」


山崎さんに、たっぷり10分は掛けて、お茶を飲ませ落ち着かせる

4人共昨夜のYK45がなんたるか、料理が何たるか理解している

多少のタイムロスがあっても、まあ最悪、練習会が出来なくても

しょうがないかと諦める理性はある


「たった、1分30秒で吐くのですね」

「1分15秒ならもっと吐きますよ」と現実を冷酷に伝えるおっさん

「どうする? 佐々木が25で走ってみるか」とおっさん

「どうもこうも、昨夜のスポンサーがコノザマだと走りにくい

 つか、俺に振るなよおっさん」

「ばれたか」


「おっさんの25の隣で行ってみたいです」と山崎さん

「おれ? 加藤のほうが上手いんだけど」

「でも25のオーナーはおっさんでしょ」

「じゃちょっと暖気するわ」とコースを2周ほど廻り


佐々木の誘導でスタートラインに着く

隣には山崎さん

加藤のカウントダウンで全開でクラッチミート

一個目のパイロンからフェイント入れてノンスリで曲げていく

タイムより曲げる感覚を出した一本目

1分32秒

加藤のタイムの18秒落ち

「まぁまぁだよね」とおっさん 


「お前、振りすぎ、もっとますぐ走れ」と佐々木

「そうそう、ほぼ横向いて走ってたろ」と栗原

「ダート屋上がりだから仕方ないけどな」と加藤

とか話していたら

「山崎さんがまた吐いた」と佐々木

4人で「大丈夫ですかと」と昨夜のスポンサーを気遣う


「もう山崎さんは無理だろ、誰か25で走りたいなら

 暖気も済んでる今のうちにどうぞ」

「おっさんがそう言うなら俺と加藤はヤラせて貰うわ」

「タイムは計れんけど、いいよな」

「ああ、キャブセットと足を見るだけだし

 それとイナゴを載せた時の想定がしたい」と佐々木&加藤

「それなら俺も乗せてもらうわ」と栗原


30分ほど、3人が交代で2名乗車でコースを走る

一本走るごとに3人で感想戦

昨夜のイナゴ発言で、マジになってる3人


戻ってきた3人とおっさんの4人でどう行くかの話し合いが始まる

「おっさん、どうにも3速クロスは必要だわ」と佐々木

「足自体は良いと思う」と加藤

「ノンスリは、此の辺で良いんじゃないか」と栗原

「俺はタイムより横向ける人だしな」とおっさん


ゲロ吐きも収まった山崎さんに

「これが、俺らの世界ですが、来ますか?」とおっさんが問う


なにもかも爺さんの影響下で、やっと自分が見えると思った

ロードスターで走った自信もあった

25なんてボロ車に負けるわけがないと

料亭も用意して度肝を抜くつもりだったが、流され

走る場所も見合いと引き換えに準備した

が、コースも理解できず、助手席に乗っただけで吐いた

そして、若造に問われる「来ますか?」と

涙があふれる


「泣いてもしょうがないっすよ、来るか来ないかの二択です」とおっさんの追撃

「おい、そこまで追い込まんでも」と佐々木

「でもさ、朝のハイヤーででさ仲間になるならキッチリ行かせてもらいますって

 それに、この先イナゴを載せるんだし、もっとな車になる

 スポンサーで金だけ出してくれればいいとか、そんなん嫌やん」

「おっさんの言いたいことは解るが」

加藤と栗原は黙って見守っている

神田は倒れたままだ

きっと、おっさんの発言を聞いたら更に倒れ込むだろう


「ここで、止めるのが一番いいと思いますよ

 見合いをして結婚されて、山崎土木に戻られるのが

 人の道としては正しいかと

 俺ら、ダメ人間なんで、俺には人徳はありますが」

「おい、最後」

「そうは言ってもなぁ、おっさん口先だけで25にイナゴだろ」

「流石、佐々木 冷静じゃん」

「事実だけだ見るとな、昨夜の料亭だって、今日のコースだって

 おっさんのブリッジだし」

「それ並べられるとなぁ、でも人徳とは違う気がする」

「認めろ、俺の人徳と」


「認めますよ、おっさんの人徳と」と山崎さん

「ここまでキッパリと言われたのは生まれて初めてです

 現実を突きつけられて、はっきり選択を迫られる

 甘やかされて育ったんですね」

「そりゃ、山崎土木の御曹司にココまで言うのは俺くらいなもんで

 神田が倒れてますが、ヤツの評価はプラスとの約束だけは

 守ってもらいますよ」

「それは、間違いなく・・・ ゲホ」とまた吐いた

内蔵も脳も揺らさて、吐くは膝ガクだわ気の毒状態


佐々木が時計を見て「時間だ、パイロン回収」と号令を掛ける

約束の時間なのだ

佐々木達がパイロンの回収に向かう

おっさんも向かおうとするが、佐々木が

おっさんは責任取って山崎さんの相手をしておくように

と厳命していく

佐々木があの目の時は逆らわないほうが良いことは知っているおっさん


山崎さんにお茶を飲ませながら「どうすべぇ」と

これに懲りて、神田の評価だけはプラスにして貰って

降りて貰うのが、世間一般の常識だよなぁ 

と世間一般の常識の外に居るおっさんは考える


「ここで降りませんか」

「吐いただけで、ですか」

「それでも、山崎土木の御曹司でしょ、吐いたのは口外しませんから」

「それは信用しますが、既に昨夜の料亭の件であちこち

 降りるのにはそれなりの理由が居るんですよ」

「俺が我儘だって事で」

「それも無理です、女将さんと話しましたよね」

「あちゃぁ」


「女将さんから、おっさんの人となりが出回ってます

 で、ここで私が降りたら爺さんが大喜びで

 見合いの話をガンガン進めます、逆らえない」

「俺らに乗っかてれば、見合いはブッチできると

 でもいい娘なんでしょ」

「それは政略結婚ですから」


「でもね、加藤も今日はそこそこ

 俺も、キャブセットとノンスリ調整からの昨日の今日なんで

 本気じゃないんですよ

 これで、イナゴ載せてガチになったら、1年は峠です

 吐きまくりですよ

 そして、皆ガチなんで、加藤の71も佐々木のLBもマジで競ってきますから

 吐いてても誰も助けませんよ」


「キッチリ言いますね 朝の約束どおりだ

 おっさんは、やっぱり人徳がある

 それに仲間内でも競るんですか」

「その場に居れば解ります というかその場に居ないと解らない」

「ますます、降りれなくなりました」


パイロンを回収した佐々木達が神田も回収して

おっさん達の所へやってくる

「どや?」と栗原

「あかん、降りるように説得したんやが」

「それって、逆に煽ってへんやろな」と加藤

「それはあるな、おっさんと絡むとみように人が乗っかるしな」と佐々木

「頼むから、俺の会社人生を」

「そこは、御曹司に確約してもらってる」とおっさん


そこへ一台のセンチュリーが停まる

ドアが開けられ、降りてくる爺さん

倒れ込む神田

歯を食いしばって立ち上がる山崎さん


さて、此の後はどうなることやら

今宵も夜が更けたようで

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