9:上級ダンジョン(1)
翌日の朝
「おはよう」
「あっ、お兄さんいつもありがとうね」
「串焼き2本ね」
「毎度あり」
「悪いが今日から上級に行く事になったからオーク肉は持ってこれないんだよ」
「そうなの?教団の騎士様が納入してくれるから大丈夫よ」
「そうか、足りてるのかな?」
「ええ、肉は足りてるけど穀物や野菜は足りないわね」
「そうか、グレートウルフを倒さないと流通が戻らないからな」
「早く倒して欲しいわ」
「そうだな……」
いつもの串焼き屋で朝食を取ったので教会に向かう
「アルベルト殿お待たせした」
「ツヨシ殿おはよう。では行こうか」
上級ダンジョンへ着いたので召喚をする
『召喚グリフォン、エンジェル、バイコーン』
「ほう、バイコーンに騎乗出来るのはいいな」
アルベルトにはバイコーンを貸してあげる
「グリフォン頼むな」
『クルル』
「よしよし」
跨ると浮かび上がるがあまり翼を動かしていない
「翼で浮いてるんじゃないのか?」
『マスター、グリフォンは魔力でも浮いているので翼は補助する為に動かしています』
「そうなのか?」
『翼の角度や羽ばたきで空中の姿勢を制御しています』
『クルル』
「そうか」
「ツヨシ殿行こう」
しばらく進むとオークジェネラルが3匹いた
「さてどう戦うか…」
『マスター魔法を使っても?』
「いいぞ」
『ありがとうございます。ホーリージャベリン』
『ブモーー?!』
ホーリージャベリンに貫かれたジェネラルは悶絶している
『ライトニング。ホーリーレイン』
『『ブモォ〜』』
まとめて魔法で倒してしまうエンジェル
「凄いな上級の低層とはいえ魔法で一掃するなんて見たことが無いぞ」
「褒められたな」
『恐縮です』
『クルル…』
グリフォンも戦いたかったようで若干拗ねてる様子だ
『ごめんなさい次は譲りますから』
『クルル?』
『ええ、本当です』
『クルル!』
「会話出来るのか?」
『ニュアンスはわかります』
確かに分かりやすいな
次のジェネラルが見つかったのでグリフォンに指示を出す
「グリフォン頼む」
『クルルーー!』
グリフォンが翼を動かすと突風が吹いてジェネラルを切り刻む
『ブモー?!』
『クルル!』
更に追い討ちで突風が吹いてジェネラル達は倒れた
「グリフォンも強いな」
『クルル〜♪』
撫でてやると喜んでるのがわかる
「ツヨシ殿の召喚獣は強いな。次は私に任せてくれ」
「わかった」
アルベルトも戦いたいようだ
「いたな、バイコーン頼むぞ」
『ブルル!』
バイコーン駆ってジェネラルへ向かっていきすれ違いざまに1匹の首を跳ね飛ばす
「まだまだ!」
即座に切り返しまた1匹の首が落ちる
『ブヒー!』
「はっ!」
殴り掛かるジェネラルの腕を切り落とし胴へと一閃するとジェネラルは真っ二つになった
「流石だな」
「ふむ、バイコーンはいいな。馬とは突進力が違う」
アルベルト殿の騎乗技術の高さでバイコーンも動きが軽やかに見えた
「では、先に進もう。この調子なら6層までは今日中に着くだろう」
それからもエンジェル、グリフォン、アルベルトがジェネラルやウェアウルフを片付けていくので俺は地図を見ながらのんびりしていた
「そろそろ休憩しようか」
「そうだな」
3層の階段に来たので休憩を取る
「しかしバイコーンはいいな。疲れも知らないから多少無理をしてもしっかり応えてくれる」
「気に入ったようだな」
「ああ、ツヨシ殿の召喚獣で無ければ譲って欲しいくらいだよ」
「グレートウルフと戦うなら貸そう」
「それは有難い」
「上級ダンジョンでも余裕があるが特級はどうなんだ?」
「特級は別格だな。最低でもBランクだから常に気を抜けない」
「確かにエンジェルやグリフォンが3匹なんて恐ろしいな」
「ツヨシ殿の召喚獣は強化されてるのだろ?Aランク並に強いぞ」
「どうなんだろうな?どの程度強化されているのか分からないからな」
「見た感じではBランク上位の強さはあるな」
『マスターの強化で約1.4倍になってます』
「ほう、それさ凄い!いずれSランクの魔物を召喚したら国と戦えるな。ハッハッハ」
「アルベルト殿はSランクと戦った経験は?」
「あるぞ。特級ダンジョンの氾濫を抑えるために特級騎士6人で行ったがあれは激戦だった……。レッサードラゴンだったが攻略後は皆2ヶ月は調子が戻らなかったからな」
「レッサードラゴンがSランクなのか」
「ああ、ドラゴンはSSSランクだな」
「SSSランクなんているのか…」
「超級ダンジョンにいるな」
「超級?」
「ああ、この世界に1箇所だけある攻略不可能なダンジョンだ」
「それはダンジョンが拡大しないのか?」
「それがしないらしい。記録では4000年前から確認されているが拡大もしないし氾濫もしないから存在自体が謎とされている」
「氾濫したら人類は滅ぶな」
「間違いなくな。何故か内部の魔物の情報がエルフの国にあるらしいが最低がSランクで最高がランク測定不能らしい」
「測定不能……」
「どれだけ強いんだろうな」
「神か悪魔か」
「確かにそれほどの存在であってもおかしくは無いかもしれないな、もしくはダンジョンを作り出した存在がいるかもしれない」
可能性はあるだろうけど超級に行く事はあるんだろうか?
「さてもう少し……」
『うわ〜』
『助けてくれー!』
「何事だ?」
「場所はわかるか?」
『わかります』
「よし、いくぞ!」
急いで声のした場所に向かったが酷い状況だった
「大丈夫か?」
「た、助けてくれ!」
「あれはキラーマンティス!」
「ヤバそうなやつだな」
「Bランクの魔物だ。なんで上級にいるんだ?」
「とにかく倒そう」
『クルル!』
グリフォンの突風でキラーマンティスを吹き飛ばして冒険者達を救出する
「こっちだ!」
「仲間が怪我をしてるんだ」
「エンジェル!」
『はい、エクストラヒール』
「ツヨシ殿は彼らを守ってくれ」
「わかった」
『グリフォン送還、召喚ゴーレムナイト』
『ゴー』
「ゴーレムナイトアルベルト殿と一緒にキラーマンティスを倒せ!」
「はっ!」
アルベルトがバイコーンに乗ってキラーマンティスへ切りかかるが手の刃で受け止めれる
『ゴー』
ゴーレムナイトの重い攻撃ではキラーマンティスを吹き飛ばしてしまい有効打にならない
「めんどうだな」
「軽すぎて剣では効きが悪い」
「ならば」
『送還ゴーレムナイト、召喚デーモン』
「エンジェルとデーモンは魔法で倒してくれ」
『イエスマスター』
『おまかせを』
『ホーリージャベリン』
『ダークスラッシュ』
『キシャ〜?!』
魔法だとキラーマンティスもダメージを受ける
「いいぞ!ツヨシ殿私も守るからエンジェルとデーモンを前に!」
「了解した」
『ホーリーレイン』
『ダークネスレイン』
白と黒の雨に晒されたキラーマンティスは瀕死の状態まで追い込まれる
「いいぞトドメを刺せ」
『ホーリージャベリン』
『ダークスラッシュ』
『ギシャーー!』
ようやく倒れたが苦戦したな
「ふう……。やったな」
「ツヨシ殿お見事だ」
「助かったよ」
「ありがとう」
「死ぬかと思った」
「3人だけか?」
「仲間はキラーマンティスってやつにやられたよ…」
「そうか」
「しかし、何故上級にいるんだ?」
「俺たちは領主から上級ダンジョンで鉱石を取ってくるように頼まれたんだよ」
「鉱石を?」
「ああ、魔封石だ」
「魔封石だって!」
「なんだ魔封石って」
「ツヨシ殿は知らないか。魔物を封じて使役する為の物だが……まさかグレートウルフを使役するつもりか!」
「Aランクを使役出来るのか?」
「弱らせれば可能らしいが……。私兵を使い潰して弱らせるつもりかもしれん」
「弱らせれば……。だが彼らが渡さなければいいのでは?」
「いや、俺たち以外にも依頼はされてる」
「ではもう領主は封印石を持ってる可能性があるな」
「だがグレートウルフは召喚獣ではなかったはずだ」
「関係あるのか?」
「召喚獣として使役されてある魔物ほど封印しやすい。それにダンジョンの魔物の方が更に封印が楽になると言う」
「グレートウルフは召喚獣ではなく地上の魔物だから封印は失敗する可能性が高いな」
「それだけじゃない。封印に失敗した魔物は凶暴化するんだ、無理矢理封印されそうになったため怒り狂うと言われている」
「不味いじゃないか。森から出てくればこの街以外にも被害が出るぞ」
「すぐに神官長様に報告しよう。君たちは自力で戻ってくれ、このまま道なりに行けば階段がある」
「わかりました」
『召喚バイコーン×2』
「行こう」
地上へと戻った剛とアルベルトは急ぎ神殿へと向かった
『コンコン』
「神官長様アルベルトです」
『入ってください』
「失礼します」
「どうかしましたか?」
「はい、領主が封印石を用いてグレートウルフを使役しようとしている疑いがあります」
「封印石ですか……。それは確かですか?」
「上級ダンジョンで助けた冒険者から領主から封印石の採掘を依頼されたと聞きました」
「そうですか。では領主様に聞いてみましょう」
「お願いします。それから上級ダンジョンの低層でキラーマンティスと遭遇しました」
「キラーマンティスと言うと…」
「Bランクの魔物で上級ダンジョンには存在するはずがありません」
「何故現れたと?」
「それは……」
「推測でいいなら」
「構いません」
「領主はグレートウルフを封印したいとして私兵だけで弱らせる事が出来るでしゅうか?」
「難しいのでは?アルベルト殿はどう思います?」
「私も難しいと思います」
「であれば、仮にですがBランクの封印石を手に入れて使うと考えられませんか?キラーマンティスはBランクでも下位だったはず。特級冒険者なら封印は可能です。封印石を試すために上級ダンジョンに放ったとしたらキラーマンティスが居たのは説明が付きます」
「なるほど……。キラーマンティスは試しで本命は別に持っていると」
「はい、封印石採掘の依頼は複数出していると証言は取れていますからそれこそ上級じゃなくても中級ダンジョンで数を捕まえれば囮に使えます」
「確かに封印石はそれほど珍しくない物だ、封印自体は面倒でダンジョンで使うにしても確率の高い魔物はオークかゴブリンだと聞いた事がある」
「期間はそれほどないでしょうし冒険者が中級ダンジョンに潜らなくなっている今なら封印作業を見られる心配はないでしょう」
「教団騎士が潜っていますが?」
「それでも1〜3層でオーク肉を集めているだけですから領主なら調べれば瀬すぐに分かります」
「なるほど、4〜5層なら騎士も冒険者も近づかないわけだ」
「あくまで可能性の話ですがやるならそうですね」
「わかりました。教団騎士を4〜5層に派遣して怪しい人物が居ないか調べて貰いましょう」
「私も行きます」
「ですがツヨシ殿と上級ダンジョンに行くのでは?」
「ツヨシ殿なら1人で充分でしょう」
「問題ありません」
「わかりました。アルベルト殿に教団騎士の指揮をおまかせします」
「賜りました」
こうして領主の企みを暴くべく教団が動き出した