6:冒険者ギルドの没落(序章)
オーク肉を手に入れるため中級ダンジョン5層に篭っているがオークはなかなか強い
中層からは3体ずつの魔物が現れるが、2層下がる毎に1体増えて行くのでパーティのメンバーを増やすために募集や合併をするのが冒険者の基本らしい
5〜6層で3体
7〜8層で4体
9〜10層で5体
パーティは6人までなので数的優位を取りやすい5〜6層での活動が多い
下層からはまた数が変わるようだが冒険者の約7割は中層での稼ぎで生活をしている
各地のダンジョンで出現する魔物が違い、この街はオークから肉が取れるので稼ぎはそこそこだ
「グリズリーは1体を抑えろ!」
『グルル!』
オークは2m超えの巨体で硬い皮膚と分厚い脂肪で覆われているため耐久力が非常に高い
「パペットは顔に向けて矢を放て」
『………』
身体は脂肪は脂肪で守られているが顔を狙えば目を守るため腕を上げざるおえない
「コボルトは後ろからオークの首筋を狙え」
『ワン!』
コボルトは素早いのでオークの動きを制限すれば首筋を爪で切り裂けばる
『ブヒィー?!』
「よいしょ」
俺は召喚獣達が倒すまでオークの攻撃を避けていればいい
『ブモーー!』
動きは単調で腕を振るうか突進しかしないので適度に距離を取っていれば当たる事は無い
『ワン!』
『………』
コボルトとパペットがオークを倒した事で4体2になったので余裕が生まれる
「それじゃ攻撃しますか」
剣でオークの膝を狙って攻撃すると嫌がって距離を取ろうとするが、視線が下に向いた所をパペットの矢に目を射抜かれる
『ブモーーー?!』
『ワン!』
片目が潰された事でコボルトとパペットの集中攻撃に耐えられ無かったオークは煙と消える
残ったオークもあっさり倒して魔石や肉と皮が残る
「倒せるが肉が大きいからあんまり篭ってもいられないな」
グリズリーに持たせているが戦闘の度に降ろさないと行けないので大変だ
「冒険者が人数を揃えるのは荷物の分散もあるのかもな」
俺は必要な物を自分で持っているので戦闘は召喚獣に任せるようになってきた
「今日は一旦街に戻るか…」
串焼き屋にオーク肉を渡して武器屋に行くか
「こんにちは」
「お兄さんいらっしゃい」
「オーク肉を取ってきたよ」
「本当に?!助かるよ!」
「300キロくらいはあるかな」
「冒険者がダンジョンに潜れなくなってからオーク肉が少なくてね……。値上がりもしてるんだよ」
「確かに冒険者は見なかったな」
「ポーションも足りないし司祭の派遣は再開の目処が立たないから冒険者は安全な下級に行ってるらしいよ」
「中級でも怪我なんてしないと思うんだけどな?」
オーク攻撃は単調だから無理をしなければ問題無いだろう。ゴブリンの上位種も出るが5層までこれたなら対策は出来るはず
「あたしにはよく分からないんだけどね」
バッカス達もゴブリンに苦戦していたがあんなものだろうか?
「それじゃあ金貨2枚でいいかい?」
「ん?高すぎないか?」
「今は値段が上がってるからね…」
「金貨1枚でいいよ。そのかわり上手い串焼きを焼いてくれ」
「いいのかい?」
「明日からも持ってくるから大丈夫だ」
「それじゃあ甘えさせて貰うよ」
串焼き屋でオーク肉を売ったあと武器屋で皮を売る
「オークの皮は売れるか?」
「おう、オークの皮なら買い取るぞ」
「30枚あるな」
「ほう……。召喚師でそれだけ狩れるとはな」
「そこまで強くないと思うがな」
「6人パーティで1日10匹前後が普通らしいぞ」
「肉が重いからだろうな」
グリズリーに持たせてるから大丈夫だが1匹で10キロほどの肉に変わるのでかなり邪魔になる。探索に持って歩くのは大変なので安全地帯にパーティの印をつけて置いていくらしい
「オークはけっこう強いから冒険者は回復無しじゃキツイらしいぞ?」
「そうなのか?俺でもかわせるくらいの動きだぞ?」
「それは知らんよ。客に聞いただけだからな」
「そうか」
確かに司祭が居なくなっただけで中級に行けないと絡まれたからな
なんでそんなに回復に頼りきっていたんだろうか?
「それじゃあ、金貨3枚だな」
「ああ、それでいい」
「ありがとよ」
武器屋を後にしてカヤの店に顔を出す
「いらっしゃいませ。なにかお探しですか?」
「カヤさんは居るか?」
「もしかしてツヨシさんですか?」
「そうだが」
「わかりました。少々お待ち下さい」
従業員にカヤを呼んでもらうがなかなか来ない
「すみません。オーナーは来客中でして…」
「わかった日を改め……」
『後悔しますぞ!!』
『冒険者ギルドがしっかりしていれば起きなかった問題でしょう?』
『それはあの召喚師が……』
『教団が問題視したのは冒険者ギルドが職業による差別をしたからでしょう。ツヨシさんは被害者であって責任はありません。これは商業ギルドだけでは無く他のギルドも同じ見解です』
『ぐっ!我々は…』
『冒険者ギルドがダンジョンで素材を入手出来ないなら商業ギルドが独自に冒険者と契約しても構わないのでは?教団からは商業ギルドや薬師ギルドなら司祭の派遣を検討すると言ってました』
『なっ?!そんな事が許されるはずが無い!』
『今まで素材を独占してきたのはどちらです?我々は言い値で買うしか無かったのですよ?』
『それは冒険者の生活を守るためで……』
『でしたら商業ギルドが冒険者と契約しても同じですね。むしろ武器や道具を安く支援出来るので冒険者ギルドよりいい環境では?』
『ぐうっ?!』
なにやら冒険者ギルドの人間がやり込められているな
『い、1度持ち帰って検討させて頂く!』
『どうぞ』
荒い足音を立ててやってくる
「ツヨシさんこちらへ」
「ああ」
顔を合わせると面倒なので従業員の誘導で移動する
「冒険者ギルドにも困ったものね……。あら?お兄さん来てたのね」
「ああ、寄らせて貰ったよ」
「ちょうどいいわ。契約の事考えてくれた?」
従業員に魔石を渡しながら答える
「俺と契約したぐらいで変わるものかね?」
「お兄さんのお仲間が居るでしょ?」
「仲間?」
「ほら、若い4人組の上位職よ」
「ああ、アイツらか」
そういや名前も知らないんだよな…。噂ではあっさりと中級ダンジョン下層まで行ったらしい
「その子たちが冒険者ギルドを辞めて商業ギルドと契約してくれたのよ」
「なに?」
「お兄さんがうちと契約するかもって言ったらすぐだったわよ」
「勝手に名前を使うなよ」
「あらごめんなさい」
少しも悪いと思ってないな
「どうせ口八丁で契約させたから逃がさないつもりなんだろ?」
「うふふ」
「言っておくが彼らも教団の保護下にあるから騙したら商業ギルドも弾かれるぞ?」
「え?!」
「知らなかったのか…」
「どういう事?」
「詳しくは言えないがな」
「わ、わかったわ。すぐに契約を見直すように役員と話すわ」
冷や汗をかいてるがどんな契約をしたんだ?
「まあ、今の反応で契約は無しだな」
「ちょっと待ってよ!」
「素材は売りにくるからそれでよしとしとけ」
「ぐっ、わかったわ。お兄さんを敵に回したら危険だとわかったもの」
「じゃあ、魔石の代金を貰ったら帰るよ」
「お待たせしました金貨2枚と銀貨31枚です」
ちょうど計算が終わったので代金を貰う
「……やっぱりお兄さんと契約出来なかったのは痛いわね」
「これからの関係次第だな」
ダンジョンに入ってから数日で中級ダンジョンに行くのは普通では無い
この世界の常識では召喚師がソロで中級ダンジョンに行くなど無謀だ
「もうすぐ昼だがどうするかな……」
串焼きでもいいがガッツリ食べたい気分だ
「あ!召喚師のお兄さん!」
「ん?誰だ?」
「ちょっと来てよ!」
「お、おい」
若い女性に腕を掴まれて引っ張られて定食屋につれて行かれる
「一体なんだ?」
「串焼き屋にオーク肉を卸したでしょ?」
「そうだが?」
「うちにも卸して欲しいの!」
「オーク肉を?」
「お父さんが冒険者ギルドと揉めてから商業ギルドを通して買ってたんだけど手に入らなくなったの…」
「そうか…」
「おいミリア、無理を言うものじゃない」
「でもお父さん!」
「ツヨシさんだったか?気にしないでくれ」
「オーク肉が必要なのでは?」
「うちはオーク肉の角煮が有名だったんだけど作れなくなったの」
「角煮だと……。それは甘辛く煮たやつか?」
「ああ、豆から作る調味料と酒や他の調味料で煮込むぞ」
醤油か?!醤油なのか?!
「少し試してみたいんだが!」
「え?!構わないけどそんなに?」
「頼む!」
あまりの勢いに驚いているが構わない
「これだけど…」
「この黒い液体……。塩辛さ……醤油だな」
「ペル汁だけど…」
「ペル汁と言うのか」
「そうよ」
「ふむ、オヤジ。1時間で取ってくるから角煮を作ってくれないか?」
「オーク肉をか?」
「ああ、行ってくる」
返事も聞かずにダンジョンへと向かう。何を隠そう角煮は大好物なのだ
「おや?レベルが上がってるから召喚が上げれるな」
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神野 剛
召喚師Lv27
体力1700
魔力8400
スキル
召喚Lv5 剣術Lv5 魔力増強Lv4 体力強化4
召喚魔力軽減Lv4 召喚獣強化Lv4
固有スキル
女神の加護
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召喚Lv5
オーガ MP3600
バイコーン M4100
「一気に消費魔力が増えたが強そうだな」
『召喚オーガ、バイコーン、ウルフ』
オーガは筋肉ムキムキで2mを超えてるな。バイコーンは鞍が付いてるので騎乗出来るようだ
「ウルフは探索に必要だけどそろそろキツイかな?」
『く〜ん』
「よしよし」
可愛いからいいか!
「よし、騎乗してみるか……」
『ブルル』
「意外と安定感があるな」
首筋を撫でてやると嬉しそうに鳴いている
「馬体がデカいから視点は3m近いな」
剣じゃ届かなくなりそうだから槍を使うか
「よしオークを探してくれ」
『わふ!』
オークを探しているがバイコーンに乗っているため移動が早い。
『わふ!』
ウルフが見つけたのでまずはオーガの実力を見るとしよう
「オーガ、オークに攻撃だ」
『グガー!』
オークに突進したオーガは勢いそのまま殴り掛かる
『ブヒッ…』
「はっ?」
顔面を殴られたオークは首から上を吹き飛ばされる
『ガァァァ!』
そのまま残りのオークを殴りつけていくがオークの分厚い脂肪なんて役に立たない
『ブ、ブヒィー?!』
「おいおい…」
オークを掴んで振り回し壁に叩きつけるが床が揺れるほどの衝撃があるようだ
『ブヒッ』
結局オークはサンドバッグにされて終わった
「強すぎだろ…」
『グガッ』
誇らしげな顔をしているがやってる事はえげつない
「よ、よしよし頑張ったな」
バックをオーガに持たせて次のオークを探す
『わふ』
「居たか。次はバイコーンに乗って戦ってみるか」
「行くぞ、オーガは1匹な」
『ヒヒィン』 『ガア』
バイコーンの突撃に合わせて槍を構えるがオークに刺さらずに折れてしまう
「ダメか…」
『ブルル』
「ん?いけるか?」
バイコーンがなにやら主張しているので姿勢を低くして突進に備える
『ヒヒィーン!』
オークに突進したバイコーンは角でオークの心臓を突き刺して倒してしまう
「ぐっ、凄い衝撃だな」
これは慣れないと危ないかもしれない
『ガァァァ!』
あっさり1匹片付けたオーガは次のオークをボコっていた
「早いな」
『ガア?』
オークを蹴り飛ばしこちらに渡してくれる
「待ってくれてたのか」
『ガアガア』
「なら行くぞバイコーン」
『ブルル』
「突撃!」
バイコーンの突撃でオークをはね飛ばしたて倒す
「よしよし良くやったな」
『ブルル!』
「オーガも凄かったぞ」
『ガァァ!』
「肉も集まったし帰るか」
バイコーンに肉を括り付けて乗っていく
「な、なんだあれは?!」
「魔物?!」
「ママ凄い!見てよ大きなお馬さん!」
「危ないわよ!」
ヤバい街中にバイコーンは不味かったか?
「どいてくれ!」
「なんの騒ぎだ!」
衛兵が来たので止まって待つ
「なんだこいつは…」
「デカいな」
「どうもご苦労さま」
「ん?召喚師のツヨシだったか?」
「そうだ」
「こいつはなんだ?」
「俺の召喚獣のバイコーンだ」
「ば、バイコーンだと?!」
「凄い!」
「召喚師ってバイコーンなんて召喚出来るの?」
「ハズレじゃないじゃん」
「やっぱり冒険者ギルドはダメだな」
「とにかく問題は無いんだな?」
「ああ、召喚獣は命令には忠実だからな」
「そうか…」
「召喚師のおじちゃん!バイコーンに乗りたい!」
「こら危ないぞ!」
「坊や!」
「まあまあ、危険はないから大丈夫だ」
バイコーンから下りて男の子を乗せてやる
『ブルル』
「わ〜い!凄い高い!」
バイコーンがゆっくりと歩いてくれるので男の子はご機嫌だ
「ずるい!私も乗りたい!」
「僕も!」
「危なくないようだな」
「そうねよく見たら優しい目をしてるわ」
「このあと用事があるからあとで乗せてやろう」
「え〜」
「わかった!」
「それじゃ後でな」
「「はーい」」
子供達と別れて定食屋に向かうとオヤジとミリアが待っていた
「取ってきたぞ」
「ありがたい!」
「準備は出来てるけど明日までかかるわよ?」
「構わないぞ」
「すまんな、煮込みに時間が掛かるんだよ」
「わかっていたから明日の楽しみにするさ。量はあるから他の客にも出してやってくれ」
「了解した」
オーク肉も渡したので約束通り子供達をバイコーンで遊ばせてから宿へと戻った