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「着いたのか?」
辺りを見渡すが森の中にいるようだ
「う〜ん。定番な気もするが本当に森に送られると困るぞ」
土地勘の無い場所で人里離れた場所にいるのは命に関わる
「どっちに行けばいいのかも分からないぞ」
アリストは普段からスマホのナビを使っているため方向感覚は無いのだ
「定番だと道を見つけて襲われている人を助けるんだが、道がどの方向にあるのかも分からないぞ」
「きゃあああ!」
「女性の叫び声だ!」
アリストはテンプレキター!と思いながら声のする方へ走るが…
「ハァハァ…」
現代人のアリストが足場の悪い森を簡単に走れる訳も無く、すぐに息切れを起こし木に持たれかかる
「ハァハァ、これ…レベルが低いから…体力が無いのか?」
「きゃあああ!」
「ぐっ!とにかく急がねば」
疲れてはいるがテンプレのためと先を急ぐ
「きゃあああ!」
「ち、近いぞ、ハァハァ」
「きゃあああ!」
声のする場所に着いたアリストが見たものは…
「なんだこりゃ?」
何かの植物…いや、うねうねと動く食虫植物のような魔物だった
「きゃあああ!」
「うるせえ、こいつの声かよ」
よく見ると魔物は叫びながら子供を襲っているように見える
「子供が襲われてる!…いや、違うのか?」
頭に小さな角を付けた、紫色の肌したゴブリンが食虫植物と戦っていた
「ゴブリンか」
「きゃあああ!」
「ガア!」
アリストは木に隠れながら見ているが、とても割って入る気にはなれない
「ゴブリンて最弱だったよな?普通に強いんだが」
一般的な小説やゲームなどでは最弱扱いされているが、魔物であるためレベル1のアリストなど簡単に殺されるくらいには強いのだ
実際に神が言っていた異世界キター!男は着いてから3時間でゴブリンに遭遇して死んでいる
「こりゃ逃げた方がいいな」
アリストはその場を逃げ出した
「あんなのに襲われたら一溜りもないぞ。レベルを上げるにしても倒さないとダメだしな…」
罠で倒そうにも道具も無ければ知識も無い
「とりあえず移動しながら食える物を探すか」
アリストは森を進みながら木の実でもないかと探して見るが、見たことも無いので毒があるかの判断が出来ない
「参ったな…ん?あれは?」
歩いていると川を見つける
「川だ、これで水の心配をしなくて済むな」
一安心したアリストは川の水を飲み一息つく
「ふ〜。魚は……いるな。釣竿は無いから手掴みと行きたいが出来ないだろうな」
何かないかと探すが木の枝はあるが釣り糸なんて無い
「う〜ん。確か川にある石に石をぶつけると魚が気絶するとテレビで見たな」
手頃な石を見つけると川へと入り石を叩きつける
「おりゃ」
カンッ!という音がすると小魚が浮いてくる
「よっしゃ!小さいけどないよりはマシだ」
魚を取れて喜んでいたが肝心の火が起こせない事に気付く
「火なんてどうすればいいんだ?」
周りをみるが枝は曲がった物しか無い
木の棒を擦って火をつけるのは知っているがどう見ても出来るとは思えない
「参ったぞ…そういえば、アイテムボックスに支度金がどうとか言ってたな」
アイテムボックスを見ると金貨1枚となっていた
「金はあっても物は無し…か」
『山篭りセットを購入しますか?』
「あ?」
100円ライター
薪
干し肉1キロ
購入銀貨5枚
「おお!こんなのがあるのか!」
通販スキルが発動したようだ
「購入だ」
『アイテムボックスに転送します』
100円ライターと薪を出し、その辺にあった枯れ草に火をつける
「助かったが他には買えないのか?」
『初級冒険者装備を購入しますか?』
ナイフ
革の鎧
購入銀貨20枚
「買っておくか」
『アイテムボックスに転送します』
「これが革の鎧か」
革だが軽く叩いてみるとかなり硬い事がわかる
装備を身につけて動いてみる
「うん、動きが阻害されるほどでは無いな」
装備を手に入れた事で一安心したアリストは干し肉を齧りながら焚き火を見つめる
「これからどうするかな。人が居る場所を探したいけど手がかりが何も無いからな…おっと小魚はアイテムボックスに入れとくか」
『小魚3匹で銅貨1枚で売却出来ます』
「売れるのか。干し肉があるから売ってくれ」
『売却しました』
「めちゃくちゃ便利だな。もしかしてテントもあるのか?」
『テントを購入しますか?』
テント 銀貨20枚
魔物避けテント 銀貨80枚
「魔物避けが欲しいけど金が足りないか。ゴブリンは売れるのか?」
『1匹銀貨1枚です』
「それじゃあ…」
「ゲゲ!」
「テンプレは無いと思ったんだがな」
現れたゴブリンと対峙するが恐怖は無い
「なんで襲って来ないんだ?」
「ゲッ!」
どうやら火を怖がっているようだ
「火が怖いのか?」
ならばとゴブリンに警戒しながら薪の先に火を付けてゴブリンに向けて振り回す
「ゲ!?」
「おりゃ!」
火で怯んだゴブリンの首筋にナイフを刺す
「ゲ…ゲゲ…」
「うぇ、血が着いた」
クローンとして作られた時に精神も強化されているためゴブリンを殺しても吐いたりはしない
「アイテムボックスに入れてと…」
『ゴブリンを売却しますか?』
「頼む」
川で手を洗いながら通販スキルでゴブリンを売却する
「後4匹は厳しいな」
火を使わないと倒せなかったとわかっているので、ゴブリンを探して森を歩くなんて無理だ
「グルル…」
「?!」
考え事をしていたらいつの間にか狼が近くに居た
「狼とか無理だろ」
幸い火を怖がっているので襲ってはこない
「どっかいけ!」
薪に火を付けて振り回す
「おら!」
薪を投げつけると狼は逃げていった
「はあ…こりゃ気を抜けないぞ」
しばらく辺りを警戒していたが日が落ちてきて暗くなってきた
どうしようか迷っていたアリストだが、自分を中心に火をたいて魔物避けにする事にした
「寝てる間に火が消えたら死ぬなこれ」
疲れていたので地面に寝転び目を閉じる