9話 愛情の悪魔
ちょっと設定の矛盾点を修正してたのでこの時間です。もしかしたらどこかで修正があるかもしれません。
「増えたか。だが何人来ようと無駄な事」
「うーん? 呪詛だよな? あれ」
「呪詛? 悪魔!? そっか!」
いや気付いてなかったんですか。なんだったかなぁ……名前と特徴は軽く覚えてるんだけど……。
「お、あったあった」
師匠に借りた本を漁っていると悪魔に関する記述を発見。
人間の負の感情を好み、それを自らの魔力とし力を蓄える。人間に取り憑いて直接感情を喰らい、精神を破壊することもある…………
概要だけ読んだ結果、こいつらは
「寄生虫じゃねえか。もはや害でしかない」
「なんだそれ?」
「借り物」
さて、本はストレージに放り込んでっと。寄生虫を滅ぼすか。
「うーん、どうやって殺せばいいかなぁ」
「はい!」
「メイさんどうぞ」
「精神を破壊する!」
笑顔でえげつないこと言うなこいつ。はっちゃけすぎじゃない? でもその案採用。
「うーん……悪魔、寄生、要は中に住み着いてるわけで…………、そうだなぁ、とりあえず試すか」
取り出しますは麻痺毒
「!!」
「お? 反応したな?」
逃げられると思うなよ? 水の槍を大量生成。麻痺毒を仕込む。ロックオン! 撃て!
「く!」
「おー防ぐねー」
「何秒もつと思う?」
「5」
アヤカの予想が的中し、開始5秒で水の槍が悪魔が取り憑いた呪術師に直撃。呪術師はそのまま前のめりに倒れた。
「…………状態異常耐性が低いな。ちょろすぎないか?」
「お兄の麻痺毒ってレベル幾つ?」
状態異常にはレベルがあり、それが高いほど効果と効果時間が長くなる代わりに、製作コストと難易度が高い。
で、俺のやつのレベルだったか?
「まだⅦだな」
「なな!?」
「うっそだろオイ。うちの生産職でもⅤだぞ?」
「え? 師匠はⅨのやつ作ってたぞ」
「師匠?」
あ。そういえば師匠って裏切りの魔女でしたね。完全に忘れてたよ。
話してもいいものか…………。
「あ、あー、黙秘権は?」
「「「ない」」」
「分かった話す。その前にこいつの処理しないと」
何まで話すかを考えつつ悪魔に目を向ける。
完全に動けなくなってるな。悪魔は出てこないのか? 取り憑いたままか?
「出てこないのか?」
「ボク、自身、まで、ま、ひ……?」
「説明ありがとう。それじゃあいいもんやるよ」
ファイアクリエイト。こいつの周辺に火の玉を浮かせる。
続いて取り出しますは引火性の高い油。本当あの家なんでもあったなぁ。便利そうだからいろいろ貰ってきたけど。
「ふんふんふーん」
麻痺って倒れている悪魔の周りに油を流しまして……、火の玉を近づける。
「ちょ! や、やめ、て!」
「ほらほーら、出てこないと燃えちゃうぞー」
「出ら、れないと、言った、はず、」
「知らないなぁ。ほーら」
「や!」
やばいこれ楽しい。お前の命は俺が握っている的な。最高だな。
あ、また近づけるっと。
「うわぁ。俺もやりてえな」
「私もやってみたいかも」
「…………ファイアクリエイト」
「「ずるい(ぞ)!」」
お、アヤカも参加か。これでどっちかがミスったら燃えちゃうなぁ?
あと魔法使いじゃない2人は黙ってましょう。指をくわえて見ているがいい……!
「……ちょっと足りないよな? 盲目とかどうだ?」
「あり」
楽しそうだしやってみよっと。
盲目の状態異常ポーション……どうでもいいが素材は玉葱だった。なんでだよ。
さて盲目になった悪魔はどんな状態に……
「もう、やだぁ。悪い事、は、しな、いから、助けてぇ」
「なんかいたたまれなくなってきたな」
「やめる?」
「そうだな」
流石に相手が悪魔と言っても良心が痛む。
と言う事で2人とも火を消す。油は放置でいいか。そして状態異常回復ポーションを振りかける。
「お、出てきた」
「あ、あれ? まだ出てないのに……」
そこにいたのは1匹の狼、恐らく悪魔の本体だ。
◇◇◇◇◇◇
「あの、えっと、クゥゥン」
「悪魔って人型じゃないのか?」
とりあえず可愛い。狼と言っても仔犬の大きさだ。というわけで撫で回す。
悪魔ってこんな愛らしい姿してるのか? 普通にペットとして欲しいぐらいなんだが。
「えっと、悪魔に規定された形は無いんだ、です」
「敬語いらない」
それも可愛いとは思うけど、多分普通の口調が一番姿的にあってる。
「あ、じゃあそうさせてもらうね。悪魔は自分の肉体を持たないんだけど、誰にも取り憑いていない時肉体がないと動けないからなんらかの生き物の形を取るの」
精神的寄生虫という言葉が頭をよぎった。
なるほどなぁ、それで悪魔の目撃情報が少ないのか。動物の姿をとれて、呪詛を隠せるんならそりゃあ気付かないわけだ。
「お前の場合、それがこの狼か?」
「可愛いでしょ?」
「すっげえ可愛い」
という事でわしゃわしゃと撫でてやる。癒される……。
「ふわぁ、なんでこんなに撫でるの上手なの……」
「近所の友達が飼ってるんだ。割と高頻度で遊びに来るからな。撫で慣れてる」
「雌?」
「雄だけど?」
なぜそれを気にする? しかもリアルの話……て言っても分かんねえな。うん。
とりあえず羨ましそーにこっちを見てるメイとアヤカには悪いがまだ譲らん!
(あの狼、場所変わってくれないかな?)
(羨ましい)
「モテモテだな」
「そだなー。こいつ可愛いもんなぁ」
ていうかこんな可愛いのを殺さなきゃダメってマジ? 普通に気が引ける(殺さないとは言っていない)。
「そうじゃないんだが……そいつどうする?」
「うーん、なあ、なんでこいつに憑いてたんだ?」
「呪術使っていろいろしてたし面白そうだったから手伝ってたの」
うーん、真意の全てって言い方じゃないな。他にも理由がありそうだな。
「負の感情を集めてた魔法陣は?」
「あの人間の趣味だよ。ボク悪感情って苦いから嫌いなんだ」
いや何その日本人だけど米嫌いですみたいな(偏見)。じゃあ何が面白そうだったんだよ。
「悪魔って別に悪感情だけを食べるわけじゃないんだよ? 感情を食べるの。ただ好きな感情が負の感情よりってだけで」
なるほど……悪魔からしたら食事のための行為、すなわち調理であって、人間が動物を狩って料理するのとやっている事は変わらない。と。
人間からしたら許せないけど、動物に例えられると弱るなぁ。
「で? お前が好きなのは?」
「愛だよ! 愛こそが甘美で至高の感情だよ! 人間は人を愛する事をやめられないからね。意図的に何かをする必要もなくただただ人間の近くにいるだけで味わえる最高の感情だね!!」
おおう、すっごい目を輝かしてるなぁ。好きなものを語るオタク状態じゃないか。
俺みたい。
でも分かったぞ。こいつがこの人間に憑いてた目的。多分この男は誰かを、何かを愛していて、その感情を味わうためだな。
領主のところの人間なら他の人間と関わる機会も多いだろうしな。
「あ、でも恐怖の中で輝く愛って言うのもまた違った味いがあるのさ!」
「つまり恐怖を生むことも厭わないと」
「その通り! まあその愛を確かめたいと思える人がいればの話だけどね」
今回の場合それがこの男だったのかな? それとも他の人間に恐怖を与えるためか…………。
「郷が深いなぁ。なあ、俺の従魔にならないか?」
多分だけど悪いやつじゃないし、普通に好感が持てる。後可愛い(重要)。
それに悪魔を従えられる機会なんてそうそうないだろう。
完全に屈服しているこの機会に是非とも仲間にしたい。
「え!? つまり殺さないでくれるの!?」
「殺したら従魔にできないだろ」
「なる! なりますなります!」
『《愛情の悪魔》をテイムしました』
『スキル《テイム》を獲得しました』
『称号《悪魔を従えるもの》を獲得しました』
テイムスキルか。正直あんまり使わないだろうから放置……あ、これできないやつだ。
テイム:敵対、中立mobを友好mobにし、従えさせることができる。
このスキルのレベルが上がるごとに、従魔にステータスボーナスが付与される。
「うっわぁ」
「お兄、テイムスキル見たの?」
「明らかにスキルスロット削りに来てるだろ」
「だから魔法使いは基本的にテイムしないね」
「黙ってたのか……!」
まあ俺が同じ立場ならそうするだろうな。けどそれはそれとしてムカつく!
「えーっと、迷惑だった?」
「いや、どっちにしろテイムはしてたから問題ない。黙ってたこいつらにムカついてるだけ」
とりあえず一発殴らせろや!
と行きたいところだが、Lv130程度の俺では返り討ちに合うのがオチだ。という事でこの拳は一時保留にしておこう。
「さて、名前はどうしようか」
他のゲームと同じように、このゲームでもテイムモンスターに名前をつけられるらしい。
でもなぁ、名前なぁ。雌だろ? 狼だろ? 悪魔だろ? 好きなものは愛情……俺ってネームングセンスないからなぁ。
「メイ」
「ライルちゃん」
相変わらず早い。さすが可愛いものには目がない。俺はお前の部屋がぬいぐるみでいっぱいなのを知っている……!! まあ家族だしな。
「んじゃそれでいいか?」
「ライル! ボクは今日からライルだね!」
「おう、よろしくな。ライル」
尻尾を振って喜んでいるライル。
うーん、こう、なんて言うか……可愛いけど何かが足りない。
まあおいおい考えるか。
「よーし、当初の目的の領主に会いに行こう!」
「領主? あ、忘れてた」
「こいつだぞ」
え? ええ? これ? こいつ領主なの? じゃあ殺す? 殺しちゃう?
と言うかこいつらは領主のところ行ってたんだな
「ん、うん? お前達は…………」
「お、起きちゃったか。こんにちは領主様。早速なんだが、ちょっと頼みたいことがあってな。ここの衛兵とか騎士団とかぶっ殺したんだがお咎めなしのしてもらえないか?」
「うっわ、この兄ちょっと最低すぎません?」
「明らかに遊んでるな」
「戦闘?」
ちょっと外野うるさいぞ。どうせこの街はもう機能しないレベルまで騎士団系統潰したから問題ないだろ。
「あ、ティアナちゃんだ…………え? モンスタートレインで街落とすから気をつけてって……」
おいどうした? 今すんごい単語が聞こえたんだが? モントレで街落とし? やばいじゃん早く参加しなきゃ!(異常者)
「お前の要求は飲めない。領主として、王都にこの情報を届ける!」
「だよなぁ。頑張れよ〜」
じゃあ王様に直談判しに行けば済む話。正直騎士団から王都に伝令が行ってると思うしな。
と言うことで領主は麻痺させて放置とする。生かしておいても問題ないだろ。
「ライル、あの領主って呪術師としてどのくらいだ?」
ライルを抱き上げ、館から出ながらそう聞く。正直ライルが入ってた状態で俺のポーションで治る程度だろ? そんなに強くないんじゃないか?
「そうだね〜、多分だけど結構弱い分類じゃないかな?」
「やっぱりか。後もう一つ、お前取り憑いてたときとかなり性格違うよな?」
「「「いまさら?」」」
いやまあそうなんだけどさ。なんか聞く機会逃したと言うかそれ以外に聞くことがあったと言うか……まあ優先順位は高くなかった事だしな。
「あれはね、意識は殆どが領主の悪感情だったんだよ。悪魔は性質上取り憑いた人の悪感情を表に出しやすくしちゃうんだ」
「お前が途中出てきたのは?」
「領主の意識が恐怖に耐えきれなくなって気絶したからだね」
なるほど、つまりライルが取り憑いていた悪い面の領主が気絶しライルが表に。そしてさっきの領主はライルが出た事で悪感情を隠した状態だったと。
「面倒くさ!」
何だよ多重人格かよ。俺多重人格系って頭ややこしくなるから苦手なんだよなぁ。
「ま、いいか…………なあ、あの煙なんだと思う?」
館を出るとそこには至るところから上がっている黒い煙。うん、火災だね。
「始まってる」
「うちのクランメンバーの1人がやるって言ってたな」
「いい子だよ?」
待って、これをやらかす奴がいい子? おかしくない?
ここにいるメンバーも大概狂ってるけどモントレで街滅ぼす奴がまともか? んなわけないんだよなぁ。
とりあえずそのやらかした本人と合流したいかなぁ。