27話 イベントのゴタゴタに紛れて
あけましておめでとうございます。お久しぶりです。
えー、現在時刻は深夜3時。5時までは深夜なのでまだ深夜です。今最後の調合を行いながら近々始まる授業の予習を行っております。集合と命題の範囲なかなか曲者臭いな。理解はできるが扱えるかって言われると……野戸華にコツ聞くしかねえな。とまあ未だ終わらない調合のおかげで徹夜な気がしてる。最悪ゲーム内で寝て自動ログアウトにするかな。タイマーも起動しといて。
「キリュウ」
「嘘でしょ……?」
で、この時間までかかってる理由だが、師匠が本気で実験してるからですね。俺が調合で魔力使ってるのなんて知った事かと俺に魔力を要求する。作った魔力薬を使うから必要数増えるんだけど? はいはい魔力ですね。魔力貯められるアイテムが欲しい……師匠は持ってるけど使い捨てアイテムだから流石に使わせてくれないんだよね。あともう一つの原因が……
「ただいまー!」
「またボロボロになってさぁ……ほれ」
「ありがと」
ライルが家の裏の森に入って狩りをしているからだ。背中にバッグを背負っていて可愛い。
ライルは持たせた回復ポーションが尽きると戻ってくる。それも割と高頻度で。あそこはカスダメが蓄積しやすいクソモンスターばっかりだからな……リス、マジで許さねえ。あとはバッグの容量が多くないのが原因だな。耐久力が高い代わりに容量が少ないタイプだ。ライルが使うにはこっちの方が都合が良かった。
「どうだ? レベルは」
「今123」
「結構上がったな」
多分総ステータス値俺より大きいんじゃないかな。悪魔のステータス上昇かなりでかいし。という感じで俺が自分の対毒の熟練度の上昇のために毒薬を飲んだり師匠に魔力持っていかれたりライルの回復に使われたり、あとロイドさん(前にライルをテイムして帰ってきたときに会った軍事団長かなんかの人)が追加のポーションを要求してきたりとかで(大体ステラの所為っぽい)、ポーションを急遽補充しにきたりなど、色々嫌がらせのように要求され、この時間に。まあ4時には終わるでしょ。と思いたい
これ徹夜の流れじゃないかなぁ……。どっかで仮眠は取ろう。
「やっぱ徹夜……」
「仕方ない」
「終わった? お疲れ〜」
「ライル、抱き枕」
「寝るの?」
「うん」
結局5時半ですかそうですか。もう朝じゃんか。とりあえず1時間半だけ寝て朝飯食べますかね。
ライルを抱き枕にしてベッドに入る。タイマーをかけてさあ就寝だ。というところで。
「メール……アフロディーか?」
無視しよ。おやす……連打するなぁ!!!
「くっそ、通知オフどこだ……? あ、ミスった」
既読つけちゃった。あ、通知オフここかぁ。既読付けないとオフれないのね……
現実逃避はやめよう。要件はっと……思ったより大事?
コンコンと、ドアが鳴った。「起きてる」と声をかけると、師匠が入ってくる。ロイドさんも一緒だ。
「一大事」
「今丁度うちのトップからも連絡が来た。悪魔の軍が来てるんだって?」
「そう。行ってきて」
どうやら“何故か”“偶然”この付近で大量の魔物が悪魔化したらしい。まあ前に寄生虫みたいな奴らだって思ってたけども、魔物に入ったのかね?
「悪魔化とは?」
「偶に、魔物が悪魔に取り憑かれる」
「私が引き継ごう。悪魔が人の精神に取り憑くのは知っていると思うが、弱い悪魔は精神の弱い子供や、心が傷ついた者、そして、魔物に取り憑くのだ」
「ほー、一応予想通りだけど、弱い悪魔に意思はあるのか?」
「ない」
「魔物と似た本能しか持っていないケースが多い。だが、今回は意思があるかのようにこの街に向かっている。恐らくだが、何者か、それも強力な悪魔が率いていると考えられる」
「うへぇ」
俺防衛戦したくないんだけどなぁ……
と、師匠が何か言いたげだな。
「なに?」
「行ってきて」
「いや行くけどさ、防衛戦かぁ。手の内晒したくないなぁ」
「王城」
ええ……?? 王城に行くの? なんでこのタイミングで?
「手薄、かも」
「かもかよ」
確かに王城に引きこもってる悪魔がこっちに一体二体来てるかもだけどさ、とはいえだろ。
「手薄にする」
「する?」
「王城周辺で騒ぎ、起こして」
前に言ってた件か。結局あの後草原はある程度元に戻ったんだってな。とはいえ前みたいに腰ぐらいまである草原じゃなくくるぶし程度の高さの草しかないらしいけど。
でも周辺の騒ぎだけで出てくるか? 出てきてプレイヤー……あー、なるほど。この騒ぎなら、反逆軍側だけじゃなくて王国軍側も参加するのが自然か。という事は、王城に無断侵入した曲者を捕らえるプレイヤーの数(王城内にいる人に侵入者捕獲クエストが発生するらしい)は激減する可能性が高い。
「悪魔が防衛の最前線に着くまでのおおよその時間は?」
この手の突発イベントでも、流石に猶予はあるはずだ。具体的には朝8時ぐらいじゃないかなって。
「残り3時間ほどで衝突予定だ。小競り合いはもう始まっている。というか、お前の所属するクランが衝突を遅らせた。まさか悪魔化していない魔物を使うとは……」
心当たりあるなぁ、それやりそうな人と指示しそうな人。メイとアヤカも確実に噛んでるな。トリスさんは先陣切って暴れてるイメージ。
「寝たら出発って感じかな……。で? ロイドさん。まさかわざわざここに来たのに、報告だけな訳はないよね?」
「ああ。ポーションの備蓄はあるか?」
「「当然」」
師匠が実験で作ったポーションが大量にあるし、俺も結構な量作った。俺の予備兼納品用だから持っていっても問題ない。
問題があるとすればまた俺の時間が消える事だ。いつまでポーション作成地獄が続くんだよと言いたい。
自動作成機構が欲しいな。
「まあとりあえずとして、回復ポーションと魔力ポーションがこんなもんで、毒薬もこのぐらいなら出せる。あと一応引火性が高い失敗作ちゃん達もあるけど、いる?」
「それは失敗作なのか?」
「うーん、まあ一応」
元々作ろうとしてたやつ的には失敗かなぁ。取扱注意なので隔離された場所に保管することをお勧めする一品だな。
「あとは、気化性の高い毒薬とその麻痺バージョン、混乱バージョン。ライル協力の元作った悪魔特攻の感情暴走薬とか?」
ライル曰く、悪魔が感情を食べるのは、悪魔自身が自我を保つための行為なんだと。感情を食べない悪魔は弱っていくとのことで。つまりだ。悪魔の感情を乱す行為ってのは、そのまま悪魔の弱体化に繋がるのではと考えて作ったのがこれ。ちなみに素材に媚薬の素材が混ざってるけど効果は媚薬じゃないからセーフ。師匠とライルの許しもあったからね。
「うーん、とりあえずこんなものか?」
「あれは? 超高濃度解毒薬とかいうやつ」
「あれはちょっと違うんじゃないかなぁ」
「なんだそれ?」
「秘密だ」
やりすぎの産物である。あれはいいんだよあれは。
「にしても悪魔への特効薬まであるとはな……」
「効果はまだ分からないぞ。試したわけじゃないし」
実際フレーバーテキストにも悪魔についての効果は書かれていない。感情を暴走させる薬としかないからな。ライルから聞いた話が本当ならまあ効くでしょとは思ってるけど。
「ライルは城に凸っていいと思ってる?」
「知らなーい。危なそうなら逃げるよボクは」
「そうするかぁ。王女様は連れ出したいな」
でもどうやって連れて行こう? 箱入りっぽいから自分の足でってのは無理だから担いで? 片手塞がるのはなぁ。やっぱり粘液か。いやでも粘液の見た目どうにかならないか? これどう考えてもR-18なんだけど。R-18なんだけど!
「こんなもんアヤカに見せたらしばらく俺を見る目が冷たくなる。あの目怖いんだよ」
いやでも性能の代償として……代償と、許容範囲内だ! 多分!
王女様には我慢してもらおう。じゃあ、出発だ!
その前にちょっと仮眠っと