16話 裏手の森のトレントさん一家
「楽だな」
「キリュウの状態異常耐性が異常なだけ」
この森、まさかのデバフ特化型のモンスターが多い地帯だった。つまり俺の敵じゃない。
そして瓶が落ちるというのは効果があまり強くない毒(レベルⅢなので実際はそこそこ)や、回復薬が落ちたりするのだが、それを入れている瓶のことだった。
システムの悪用じゃないかな? まさか落としたポーションの中身を捨てて利用するとは……。
ちなみに今は大体レベル100前半ぐらいのモンスターが出現している。まだ森の外周部分で、これでも弱い方らしい。
強い方だと俺でも状態異常の無効化が不可能らしい。怖いわ〜。
「じゃあ、ここでひたすら殺す」
「スローターね。了解」
「これも修行」
修行……スローター……うーん心当たりあるなぁ……。とりあえず狩りだ狩り。
この森、木の3分の1近くがトレントだ。そしてそのトレントが死ぬとトレントの種を撒きしばらくしたらまたトレントが生まれる。台所の黒い悪魔みたいだなおい。
そしてトレントと共存関係を築いているのが、足の長いクモだ。見た目はモロアシダカグモだな。トレントに巣をはり、安全圏からトレントの援護をする。お前仮にもGキラーの異名を持つクモがモデルならトレント狩りしろ! とはいえこのクモは毒攻撃主体、トレントは多少の物理攻撃はあるが、クモの巣が足枷ならぬ枝枷になっているのもあるのか基本的に麻痺粉や、眠り粉を主体として戦ってくる。まあクモがいたら枝を下手に動かせないし葉っぱも飛ばしにくいもんな。ありがとうクモ! やっぱりお前はGキラーだ!
「というか地味に投擲リスがうざい」
トレントの上にいるのはクモだけではない。石やら木の実やらを大量に投げつけてくるリスもいるのだ。これが死ぬほどうざい。知っての通り耐久が紙以下の俺だ。仮にもレベル100越えのリスの投擲なんて食らった日には良くて致命傷一歩手前、悪くて即死だ。
今のところは対応し切れているが……。
「おいい!? アリ!? アリはないでしょ!!」
そしてトレントの中からシロアリっぽい小さなアリが続々と……なんでお前まで共存してるんだよ!
燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして燃やして…………キリがねえ!! トレント10数匹に大量のモブセットとか対応しきれるかこん畜生!!!
「ウォータークリエイト!!」
水に毒を混ぜ、霧状にして散布。おら死ねぇ!!
「つ、つか、れた……」
「お疲れ様」
40分近くずっと気を張っていた。なんであいつら霧の中でも正確にこっちの位置把握すんだよ、お陰でずっと回避してたじゃねえか!
師匠は別のところで狩っていた。疲れが見えねえなこの人。
「にしても一気に木が減ったな。ここの森なんでこんなにアホみたいなモンスターいるんだよ……」
みんなトレントと共存しすぎなんだよ。トレント一体一体が城みたいな感じだった…………。
と、師匠がこの森について話してくれるらしい。
「ここは元々は木がまばらに生えてるだけの平原だった。けど、ここに竜が住み着いた」
「その時街は?」
「大混乱」
「まあでしょうね」
「私は竜を退治するために派遣された。実績もあったから」
竜殺しの実績かぁ。やっててもおかしくはないよな。うん。でも実際この人の本気はやばいと思う。なんなら国滅ぼせるよね?
「でもここの竜は始原竜と呼ばれる、太古から存在した竜。私じゃ太刀打ちできない」
「じゃあ街が滅びるのが道理だろ?」
「竜はただここの魔力溜まりに住みたかっただけ」
魔力溜まり? まあ名前の通りだろうな。魔力が溢れ出してるところとかそんな感じだろ。
「で? それと街を襲わない事の関係性は?」
「竜は魔力溜まりの魔力を抑える。人は魔力溜まりによって悪影響を受ける事がある」
「共存関係を築けるわけか」
「そう。だから私はここに結界を張って、入る人を限定する事を竜と契約した」
「で? 入れるのは反逆軍か?」
「ちゃんと信頼がある人だけ」
「竜は窮屈だとは思わないのかね」
「普段は眠ってる」
何というか……竜って引きこもりなの? こんな森の中の食事という名の魔力に困らない場所で食っちゃ寝生活……自堕落だなぁ。
「で? 結局何が原因でトレントやらなんやらが大量に出てるんだ?」
「魔力溜まりの魔力を竜が結界内に纏めたせい。この結界は私と竜で張ってるから私のせいでもある」
ふーん、始原竜と言われていても吸収できる魔力に限界があるから吸収しきれない魔力を結界で漏れ出ないようにしているって事か。多分だけど。
「師匠は何本? 俺2500だけど……このカバン便利だな」
「結構貴重。私は3300ぐらい」
師匠に出る前に持たされた鞄はショルダー式の物で、外部ストレージと呼ぶべき物だ。このゲーム、スタックできる数が瓶で10個、つまり俺の場合各種毒を100本ずつほど持ち歩いているので麻痺、毒、混乱で30枠それに対応した解毒ポーション10本ずつで3枠、後は複合4種を50本で20、猛毒50本、MP、HPの回復各50本。ストレージ枠が100なので内68枠を締めているわけだ。
改めてなんだこいつ。残りは装備と少量のドロップアイテム。基本的にプレイヤーからアイテムドロップはしないのでレベル上げ対象をプレイヤーにした所がないでもない。
で、話を戻すがこの鞄はいわゆるチートアイテムに近いもの。ストレージインストレージができるのだ。
「あと200かぁ……どうする?」
「さっき使った薬の余り」
「ギリ足りねえ」
俺がさっき霧を出す時に使った魔力を回復したMPポーションと、それに混ぜ込んだ毒薬、後はかかりが悪かったやつに対して使った追加ポーションで、100本普通に使った。だって敵が多いんだもん。仕方ないんだ。また作り直し。でも瓶が…………悪循環だなぁ。でももう疲れたから今日はいいや。日付越えてるし。
「帰って寝るかぁ」
「ん」
道中まだ生き残っていたトレント達を師匠が蹂躙し、規定数に達して無事に帰宅した。薬を薄めるのは明日だな。にしても殆どトレントの森とか絶対もう嫌だ。主にリスてめえ許さん。
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