15話 ライルの実力
これは昨日更新予定だった分です。遅れて申し訳ないです。今日もう1話更新します。
「【反射結界】」
庭に出ると、ライルが周りに結界を張った。
「何それ?」
「結界に向かって攻撃」
師匠に言われた通り、火を撃ってみる。
「うおっ!」
すると、結界に当たり、消えたと思った魔法が俺のほうに返ってきた。
いやな結界だな、おい。
「なるほどなぁ」
「空間魔法の一つだよ」
「下手に回避できないようにか」
確かにこれなら俺も回避はしにくい。後ろに目があるわけじゃないから、跳ね返ってくる魔法まで面倒は見れないしな。
「でもこれはダメだろ」
ライルもやらかしたな。これじゃあ俺に有利なフィールドができただけだぞ?
「これで終わりじゃないよ。【因果応報】」
魔法名だけで効果がわかった……というかなんで日本語なんだよさっきから。
「これで僕に当たった攻撃はそのままキリュウのダメージにもなる」
反射効果か……呪魔法か? まあ俺の周りに呪詛っぽいものが纏わりついてるしそうなんだろう。
あとは何をするんだ?
「【魔力纏】」
「準備完了?」
「その余裕を後悔させてあげる!」
「じゃあまず雷な」
「効かない!」
「次闇な」
「光!」
「光を被せる」
「闇!」
うーん、なんというか後出しジャンケン感。
雷は魔力纏で纏った風により防がれ、闇は光で相殺、というか消されて、残った光に光を被せても闇で消される。
「雷」
「無駄!」
「風」
「むだ! あれ?」
「おー、効いた」
「え? なんで!?」
「お前俺の得意な戦法忘れてたな。毒だよ」
「あ! あー!! でも仕込んでる気配はなかったよ!」
「バーカ。俺が職業選んでる時に遊びに行ったのが仇になったな。あの時魔法に毒を仕込めるようになったんだよ」
まあ風に毒属性が仕込めるとは思ってなかったけどな。流石に水、良くて土だけだと思ってた。
これに関しては因果応報も効果をなさない。何故ならこの程度の麻痺ならレジストできるからな。
「ま、ちょっと周りを見せてやろう」
「え? えー!!!」
そう言ってライルの体を抱き上げ、後ろを見せてやる。
ライルの背後には、大量の水魔法が浮かんでいた。ちゃんと全てに麻痺毒を仕込んである。
「俺に勝つには百年早いな」
「むぅ、近接戦闘なら……」
「魔法抜きでやるか?」
「また今度で」
「はいはい」
拗ねてるな。うん。でも短絡的に決闘を挑んだのはお前だぞ。まあ俺も同じことされたら挑むけど。
「実戦経験が足りない」
「ライルか?」
「そう」
まあそうだな。俺のステと戦法を読んだ結界とデバフはいいんだが、そのあとがおざなりだった。そもそも防いで終わりっていうのがまあ弱い。ただ俺は人に物を教えるのが死ぬほど苦手だ。何故できないのかがわからないタイプではなく、俺自身が努力の積み重ねで天才どもに縋り付くタイプなので、その努力をすれば良いと考えてしまうからだ。
つまり殆どコツを教えない。というより、教えられてしまうとそれしかできなくなるから教えない。
「まあ教えてもいいんだけどな……しばらく師匠のところで修行な」
「え!?」
「お前のレベル上げとかはまた今度。とりあえずお前は戦い方を覚えろ。攻め方知らないんだろ? お前」
「うー」
実際問題、こいつは低レベル、つまり殆ど戦闘を経験していないわけだ。まあこんな偏屈な悪魔だったらそりゃあ感情には困らない。そのせいで、特に人間に害を与えたり、人間の悪の面と対峙することがなかった。その結果、知識だけはあるが、その実対して強くない悪魔になってしまった。
ま、俺がフィフシュアに行ったらまた戻ってくるからさ。そこまでは師匠に頼んでおこう。
「いいよ」
「ありがとう。じゃ、俺は毒薬の補充するから後お願い」
「じゃあ実戦訓練を始める」
「はい!」
さあて、混乱とか使いまくったポーションを作りまくるか。
4時間後。現在夜中の11時だ。
「うわぁ、いっぱいだね」
「ちょっと興が乗り過ぎた。反省はしているが後悔はしていない」
途中からストレージに入り切らなくなった毒薬と回復薬が庭に箱入りで運び込まれていた。
「品質は均一、レベルはⅦ……薄めればいい」
ん? 師匠が識別をして何かを判断してるが…………
「これ、反逆軍が買い取る」
なるほど、確かに補給物資としてこれほど一気に供給もできないだろう。
実際俺が修行していた3週間は作った薬は最初は大して使い物にならなかったし、作ったやつも基本途中で使ったり、俺のストレージに収まるレベルだった。
だが今回、一切実験は無し、ただただ効率のみを追い求めた結果……在庫処分まで検討されるレベルでできた。
錬金術による統合が、複数の素材を混ぜる場合に効果を発揮してかなり時間短縮になったのが大きいだろう。
まあそんなことはさておき反逆軍による買い取り。かなりありがたい打診だ。
「レベルⅦだとかなりの過剰じゃないのか?」
レベルⅥの毒で、状態異常に厚く降っているティアナの耐性を貫通。確かまだ作れるレベルもⅤだかなんだかとメイも言っていたはず。
今プレイヤーはこのレベルに対応できない筈だ。まあ例外はいるだろうが。
それに強力なのはいいが、過ぎたるは及ばざるが如しというように、過剰な戦力は慢心を生むし、裏切りがあった場合に対応も出来なくなる。
「薄める」
「じゃ、その作業をやりますか」
「あ、瓶がない…………」
瓶がない? 買い出し行けば…………薄めるって倍率どのくらいだ?
「ちな倍率は?」
「4倍」
「足りねえじゃねえか」
ざっと2000本はあるんだぞ。あと6000本必要ってマジかよ!!
「瓶の製作はできる」
「うん」
「けど材料がない」
瓶、ガラス、ガラスの材料ってホウ砂とかだよな? あんまり詳しいことは知らないんだけど。ホウ砂は確かその辺の砂場にも含まれてるはず。けどそういう問題でもないだろ?
「というわけで瓶を取りに行く」
「うん。うん?」
今瓶を取りに行くって言わなかった? 買いに行くじゃないの?
「森」
「森に瓶の素材があるのか?」
「違う。瓶を落とすモンスターがいる」
「…………なる、ほど? よく分からんけど分かった。じゃあ行くか」
「よろしく」
「師匠も来てくれよな」
「面倒」
「俺1人だとしばらく出てこないぞ」
「チッ」
今舌打ちしたぞこいつ。でも実際高レベル帯のフィールドだったら実入りがかなりいと思うから籠る自信がある。
ということでストッパーとして師匠が欲しいわけです。自分の欲を抑える自信ない。
「ライルはしばらく1人で修行な」
「うん!」
ありゃ、一緒に行くとかいいだしそうと思ってたけどそうでもないのか?
まあ力不足を自覚しているとしたらいいことだな。さあて、瓶を回収しに行きますか!
ライルちゃんは例えるならば素振りだけで強くなった気になった子供みたいな感じ。あと作者も忘れてたけどライルはメスです。繰り返します、ライルはメスです。
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