14話 師匠の依頼
投稿が遅れたのには海よりも深ーいわけがありまして……
まあサマーキャンプと古戦場に行ったのとキリュウがプロットを盛大に破壊したからですね。
遅れて申し訳ありません!!
「キリュウ」
「なに?」
「依頼」
『クエスト【王国軍密偵の暗殺】が発生しました。受理しますか?』
「受けるぞ」
家事が終わり、風呂にも入ってひと段落。FSOにログインしてポーション作りと新たに習得した魔法の修行をしていると師匠に依頼をされた。
反乱軍最初の仕事か。まあ面倒な依頼なのはクエストタイトルだけでわかる。そして俺向きだろうな。
「依頼内容は反乱軍内にいる危険因子、王国側の密偵の暗殺。できるなら捕縛」
「了解。密偵に目星は?」
「これがリスト」
「20人……しかも密偵の人数も把握できていないのか……」
とりあえず目を通しつつ、聞き忘れていたことを聞くとするか。
「そういえばなんで王国側と対立してるんだ?」
「国王が色欲の悪魔に堕とされた。その力が王城を汚染している」
んー……色欲の悪魔ってのは想像がつくアスモデウス、七つの大罪の一つを司る悪魔って所だろう。実際は旧約聖書関連のなにかのはずだがそこまでは覚えてない。
「その力ってのは、色欲の悪魔自身の寵愛で堕落の蜜を舐めさせるって事でいいのか?」
「あってるけど少し違う」
ふむ、大罪を名乗るぐらいだ、自分の姿を絶世の美女にし、相手の好みの性格で接して堕とす。もしくはそれ以上のことで国の中枢を汚染していると思ったが……。
「色欲の悪魔の能力は、人が望んでいる人格、姿を持った人間が自分の望むように動いてくれる幻覚を見せる。色欲の悪魔自身はただ高みの見物をするだけ」
「…………その幻覚を通じて国王の意思を操作したりは?」
「可能」
「それで国の中枢を汚染したんだよな?」
「そう」
「なんで師匠は惑わされなかったんだ?」
この師匠が弱いとは言わない。見ている限り強い側の人間だと思う。ただ、多分心の弱点を突かれるとすぐに壊れてしまう。俺のような危うさもあるように感じた。
そして、それはもしかしたらだが過去愛した人間に何かあったのではないかと思う。だって、とある棚の中に大量のアルバムが入っていたのだから。
だが師匠の答えは違った。
「私が愛した人はもういないから」
「そうか」
ああ、俺の勘違いか。もう過去にケリをつけてるんだ。流石だな…………俺は一切付けていないのに……。きっとアルバムは過去の未練じゃないんだ。過去の思い出だったんだ。
何わかった風な口聞いてるんだお前は、他人の気持ちなんててんでわからないくせにわかった気になってさ。
「でも、まさか弟子を取るなんて思ってなかった」
「は?」
「私は弟子を取る気はなかったの」
「いや聞きたいのはそこじゃない。なんで?」
「もう少し後でね」
ふふっ、と師匠は笑って文句をつけたい俺を黙らせる。でも、それはとても自然な笑みで、いつも無表情な師匠にもこんな面があったのだと思った。そして、
「師匠、笑ったら可愛いな」
心の底からそう思えるような魅力がそこにあった。
「普段は可愛くない?」
「どっちかというと怖い人」
「失礼」
「悪い」
だがそんな雰囲気は消し去りすぐいつもの調子に戻す。
「さあて、じゃあ質問。この資料用意したの誰?」
なんだこの報告書は。でっち上げ感半端じゃないぞ。これを作った人間を怪しむレベルだ。
「ん? 私。合格」
「うっそだろおい!」
自分ででっち上げの資料作って弟子を試すとか何を考えてるんだ!?
『クエスト【王国軍密偵の暗殺】をクリアしました』
うそぉ。これでクリアなの? クエスト名から詐欺じゃねえか遊びすぎだぞ運営!!
「本命」
「ええ……了解」
いまいち釈然としない……まあ依頼があるんならいい、てかさっきのクエスト報酬ないの? あ、前提クエならいいのか。……いいのか?
「実際間者はすぐに捕まえてる」
「さいで」
「で、こっち」
「王国の王女殿下の救出?」
「そう」
すっげえ依頼だな。仮にも反乱軍の新参者に任せる依頼じゃないぞ。
「これは極秘任務」
「また試してるわけじゃないんだな?」
「これは真面目な依頼。王女様は色欲の悪魔の支配下にない」
「なぜ?」
色欲の悪魔がもし本当に人の理想を魅せるのであれば、抗える人間はほとんどいないはずだ。
「王女様の理想は救いの手を伸ばしてくれる人。悪魔にそれは不可能」
「そもそも王城という空間に嫌気を感じていた王女って事か……? で? 俺に任せる理由は?」
まあ悪魔に惑わされていないならなんでもいい。だが俺に任せる理由は?
「キリュウは私の弟子」
「極秘任務を任せるのにピッタリだと?」
「そう」
そんな理由? 実力云々でもないのか?
「ちなみに王城ってのはどこにある? 俺はまだサードリンまでしか行ってないが」
「フィフシュア」
「2個先か?」
うーん、王城には悪魔がいるわけで、その悪魔は多分そこでゴロゴロして……というか寝てるライルより強い奴らばっかりだろう。ライルは、自分は悪魔だからステータスが高い的なことを言っていた。なんならレベル300台とかのやつもウヨウヨいる可能性が高い。敵の本拠地となってる場所だしな。
それ相応の準備を整えていかないといけないな…………。
「しばらくかかりそうだ」
「構わない。猶予は一月」
「ま、それだけあればいけるか」
とりあえず、新しく覚えた闇と光、雷の熟練度上げをするかな。
「うわむっず」
雷を生み出した瞬間、制御が乱れ一瞬で四散した。昔の俺こんなに難しい事やってたの? すげえな(自画自賛)。
「雷は制御が難しい」
「まあ火とかは一瞬の制御のブレなら許容してくれてたもんなぁ」
火や水など、今まで俺が使ってきたものは難易度が低かったようだ。
雷は、空気の中でも進みやすい方向がありそこに向かって動くと聞いたことがある。それと同じように、要はこの魔法自体がひたすらに隙間を通ろうとしているのだろう。一瞬でも自由にさせればすぐさまそこから逃げ出し、一瞬で四散する。
昔の俺がすごいというより、昔の俺が簡単なものをやってただけなのだ。
「一箇所に抑え込もうとするよりもひたすらに動かし続ける方がいいか?」
部屋の中を縦横無尽に動かす。一応物には当てないように……
「ひゃう!?」
あ、ライルの近くを通ったタイミングでライルが起きた。あ、電気ね。すっげえ気持ち悪い感触だったんだろう。すごい恨めしそうな顔で俺を見てる。
で、また近くを通してみる。
「ちょっと!?」
「ほらほら避けろよ〜」
「ふんっ!」
「対応がはええよ……」
一瞬で風を纏って雷の軌道を逸らしやがった……。
「ちょっと外出て」
「え?」
「いいから。ボクが成敗してあげる」
ええー、いやまあ遊んだ俺が悪いんだけどね?
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