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Freedom Survive Online〜回避特化近接魔法使いの軌跡〜  作者: 海溝
1章 全ての始まり
13/34

13話 リアルでの出会い

気付いたら1週間経ってました。申し訳ないです

「うーん……野菜炒めでいいかな?」


 冷蔵庫の中のものを思い出しながらそう一人呟く。

 いまは近所のスーパーで買い物をしている。微妙に野菜が減っている……朝から来ればよかった…………。


「静香、何が良いかな?」


 ん? あれ、この女子見覚えあるぞ?


「あ」

「ん? あ、」


 そうだ。受験の時、緊張のしすぎで消しゴム忘れたおっちょこちょいだ。

 俺の後ろの席に座っていたからよく覚えてる。


「奇遇だな。この近くなのか?」

「久しぶり。第二中学の方なんだけどこっちの方が近いの」


 こいつ空気読むの得意というより話の補完が上手いな。野戸華タイプの知り合いでもいるのか?

 そして第二中学とは、校区的には隣の学校だ。昔は第一から第五まであったらしいが、今では合併とか色々あったらしく、第二と第四中学しか残っていない。


「あ、この間はありがとうございました。おかげで無事合格できました」


 と、頭を下げてくる。多分受験の時に消しゴムを貸した件だろう。


「よかったな。それにあの時も言ったけど、ああいう時はお互い様だ。あんまり気にするな」


「確か……風切君だったよね?」


 ん? ああ、そういえばまともに自己紹介したことなかったな。


「よく覚えてるな……ああ、風切優希、第四中学出身だ改めてよろしく」

「私は舞浜朱莉。第二中学の出身だよ。答えにくかったら答えなくて良いんだけど、おつかい?」


 答えにくいって思ってるということは察してるのか? それとも同じ立場(・・・・)なのか?


「いんや、義務だよ。母親がいないからな」


 俺が中1の時に事故で死んだ。今は色々あって俺が家事をする状態に落ち着いている。入学したら学校からバイト許可貰わないとな。


「そっか、私とおんなじだ」

「そうか」


 それ以上は踏み込まない。踏み込んで欲しくないし、踏み込んだらそのままずるずる引っ張るのも分かっているから。


「買う物は決まったから行くわ。また学校でな」

「うん。あ、そうだ。兄弟っている?」


 何だいきなり? まあ特に問題があるわけでもないが。まあそのまま買い物を続ける。


「妹が1人」

「仲良いの?」

「まあそれなりにな。苦労はしたけど」


 母親が死んで塞ぎ込んだ時期があったのだ。それを今の状態に持っていくのにかなり苦労した。


「…………」


 いや黙らないでもらえません? 何かを悩んでいるのは分かるんだけど放置される身にもなって欲しい。あ、トマト安いじゃん。


「……………………相談したいの。私の妹について」

「…………………………」


 わざわざ踏み込まなかったのに、あちらから踏み込まれた。何で、と思わないでもない。相談できる人間がいないわけではないと思う。舞浜は、多分人に好かれるタイプだ。だからきっと、親が死んだ時に下らない慰め(・・・・・・)を、多分俺よりも多く受けたのだろう。

 だから同じ境遇の俺を頼った。悪く言えば、傷を舐め合おうとしている。


「別に構わない。けど先に言っておくが俺は傷の舐め合いをする気はない」

「それでいいの。私もそれをしたいとは思わないから」

「でも頼るのか?」

「…………妹がね、部屋から出られないの。この1年頑張ったんだけど、どうにもできなくて…………」

「分かった」


 その話を聞いて、俺は1にも2にもなく了承した。俺にもその経験があったから、その努力が目に見えて実らない経験があるから、多分これも傷の舐め合いだ。俺が手伝う時点でそれはもう自分の傷を癒したいだけなのだろう。それでも構わないと思った。それで1人、いや、2人の少女が救われる可能性があるのならそれを助けたいと。


「いいの?」

「ああ、俺もその経験があるからな。その苦痛は知ってるつもりだ」

「私は静香の為に努力する事を苦痛だとは思ってない!」

「でもその努力が目に見えた結果を生まないのを見るのは苦痛だ」

「…………静香だって努力してるはずだもん」


 一気に子供みたいになったな。自覚はしているのか…………いや、俺の突きつけすぎだな、こういう時にいう台詞はこうじゃないって分かってるはずなのに、何度も同じミスを重ねてしまう。これじゃあただただ相手を傷つけるだけじゃないか。


「悪い。ちょっと言いすぎた」


 それに買い物を進めながら言うようなことでもない。


「まあなんにせよアドバイスぐらいなら出来るかもしれない。連絡先教えてくれるか?」


 携帯を取り出しつつそう言う。にしても買い物が進まない……。あ、豚肉。


「はい、ふるふるでいい?」

「面倒、QRで」


 複数人でやるならそれもありだが、2人だけならQRの方が早いだろ。


「分かった。よろしくね」

「よろしく」


 後に俺はこの関係を、舞浜妹を素直にさせる同盟と、心の中で呼ぶ事になる。



 ◇◇◇◇◇



「ただいま〜」


 あの後は、学校についての取り留めのない会話をして買い物を終わらせ、舞浜とは別れた。どうでもいいが、あっちも今日安いものを見て野菜炒めに決めたらしい。


「おかえり、お兄」

「おかえり」


 リビングに入ると、舞と父親に迎えられた。舞がこの時間にログアウトしてるのは珍しいな。何かあったのか?


「ねえ、これお兄?」


 舞が携帯でFSOの掲示板を見せてくる。


「サードリンで思考入力を使って転移をしたステラのプレイヤー? ああ、俺だな」

「頭のおかしい事をした自覚は?」

「ない」


 即答した。みんな思考入力でスキルとか魔法使ってるだろ? それと同じじゃないか。転移門だってシステムなんだから効果発動方法は魔法とかと同じはずだろ?


「…………もしかしてショートカットキーの存在知らないの?」

「え、なにそれ?」


 ショートカット? もしかしなくても魔法とかを発声以外で入力できたりするの?


 とりあえず立って話すのもなんだし座るのを促し、俺は料理の準備に入る。


「……もしかして今までの魔法全部思考入力なの?」

「思考入力して形状指定、それの維持と進路設定ってプロセスを連打してる。慣れるのには時間かかった」


 まあその辺の判定は熟練度が上がるごとに緩くなっていくから今はそこまでじゃない。


「キモっ」

「いや誰でもできるから」

「一体何年かかるの……」

「3週間」

「きもぉい」


 何度も言わなくていいだろ……傷つかないわけじゃないんだから。


「で? ショートカットキーってのは魔法をある特定の動きで発動するようにするシステムっていう認識で合ってるのか?」

「そうだよ。魔法熟練度30で解放されるんだよ」


 それいいのか? 魔法熟練度30とか初日で達成できるぞ? 80とかならわかるけど……


「多分簡単すぎるとか訳のわからない事を考えてると思うから言うけど、熟練度30は中級者だからね?」

「はぁ? 初心者だろ。30程度でクリエイト系は使いこなせない」

「クリエイト系は戦闘では上級者でも使わないよ。最前線でも誰も使ってないし」

「なんで? あれクールタイムないんだから使わない手がないだろ」


 熟練度を上げることで習得可能な形の指定が必要ないタイプの魔法、アローやウォール系はクールタイムがある程度指定されている。しかし、クリエイト系にはそれがない。何故か? 知らん。


「クールタイムがないのはあれは熟練度上げ専用の魔法だからだよ。要は練習用だね」


 え? え? ええぇ? いや嘘だろ。あれって魔力量の指定までできるから究極の魔法だって師匠も言ってたぞ。あの人王国最高峰の魔女だったらしいし。


「あのね、団長もあれでも結構クリエイト以外の魔法使ってるんだよ?」


 アフロディーまで? あの鳥とか俺まだ解放されて……ないよね? 実は見落としてない? 割と魔法説明ぶっ飛ばしてたからその心配がないわけでもない……。


「ちなみにあの鳥は団長がが作ったやつだよ」

「ならいいや」


 あれ? なんでこいつ俺の考えてること分かったの? 怖いよ……。


「漏れ出てたよ?」


 口に出してました? 後漏れ出てたって表現なんか汚く聞こえるからやめよ? いやマジで。


「あ、手伝う」


 俺が野菜を切ろうとしたタイミングで手伝いを申し出てくれた。


「そりゃありがたい。そっち切ってくれ」

「はーい」


「んで? 思考入力の話だったか?」

「ショートカットの話だね。クリエイト系もキーを登録できるはずだよ」

「へえ、じゃあいつも以上に出せる訳だ。今60弱までしか出せないからな」

「え?」

「おい、よそ見するな危ないだろ」

「いやちょっとまって?」

「何?」


 なに? また変なこと言ったの? 俺そんなに変? まあ変なんだろうけどさ。


 舞は包丁を置いてこっちを見る。


「同時に展開しておける数が60って事でいいの?」

「ああ。同時発動は無理だけどな」

「き、………………相変わらずのVR適性だね」


 おい、今ちょっときもいってまた言おうとしただろ。そんな苦渋の判断みたいに言葉捻り出さなくていいから。もうきもいでいいから。


「VR適性っていうかな……まあそれでいいか」

「まあリアルチート勢だしね。お兄は」


 リアルチート、それはリアルで突出した能力を持つ人間の中でも、VRゲームというリアルと同じ感覚で動かせる場で、そのリアル能力をそのまま持ってこれる人間のことを指す。

 例えば武道を修めている人間が、VRでも技を使えたり、別に戦闘に関係ない分野、例えば料理人がゲーム内スキルなしでバフ効果の付く料理を作れたりなど、要はゲームシステムに関係なく、スキルを使ったような動きができる人間の事を指す。


「そんな大層なものでもない。ただ、リアルの体の動かし方ってのを知ってるだけさ。それに思考入力は理論上誰でもできる」

「それをリアルチートって呼ぶんだよ」


 体の動かし方なんてみんな無意識のうちに知っているものだ。ただそれを意識した瞬間に急激にぎこちなくなる。

 歩こうと思ったら、体が勝手に動く。逆に意識して右足を出して、なーんてやってたら歩き方がぎこちなくなるのと同じだ。


「終わり! 後はお邪魔になるから退散するねー」

「おう、ありがとな」

「いえいえー」


 そんな申し訳なさそうな顔しながら明るく振る舞わなくていいのに…………。ちょっと手伝ってくれるだけでもありがたいし嬉しいんだからさ。


「はぁ」


 ついため息をついてしまった。疲れてるのか? いやでも結構ゲームエンジョイできてるしなぁ。疲れとは無縁のはずだけど…………。まさかゲーム疲れか!?


 …………意味わかんねえ事考えるのやめよ。今は目の前のことに集中……もうすぐ完成か。思ったより集中力に欠けてる。


「おーい、もうできるから手洗ってこーい」

「はーい!」

「ん」


 その後は特筆すべき事はなく、ただ家族の食卓と呼ばれるものがあっただけだった。席が一つ空いている、と付いているが……。

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